「sabishigariya」 -2ページ目

第13話~フリースロー~

「ハァハァ、すいませんキャプテン。」


「いやっナイスディフェンスやった。絶対勝つから見とけよ」


「はいっ」



「先輩!僕、ラスト出してもらえませんかっ」とオレは言った。


この脚で、試合に出ても大丈夫かという懸念は、もちろんあったんやけど、それより今はチームの


力になりたかった。



「アカンっ!今はお前とちゃう。」


「西本!!いくぞ!!」


「はい!」



西本先輩が、再びコートに立つことになった。


「こんな悔しい思いすんのは、初めてやー!」とオレは、ひたすら歯をくいしばる。




相手ボール、スローインから始まる。


うちのチームは、全員※ディナイして、相手にパスを通さないようにしている。※相手にかぶさり、パスコースを

完全にシャットアウトするディフェンス。



※5秒ぎりぎりで、相手がパスを受けドリブルをつき始める。※スローインは5秒以内に行わなければならない。



中々ボールがとれない。しかし、相手の※オフェンスの時間も縮まってはいる。


残り20秒を切った。


ここで、今日最高のプレーが飛び出す。


「ぱしっ」



西本先輩が3Qの汚名返上と言わんばかりの、スティール。


そのまま、レイアップに持ち込もうとした時、



「ドンっ」



「ピーーーー!!ファール!白4番(相手チームキャプテン)」


ファールをもらい、フリースロー2本を獲得した。


残り17秒ー



1投目ー







「ぱさっ」




                   86-82


2投目ー










「ガンっ!」



外れた。




「リバウンド!!!」



「長田!」



「ぱしっ」



ボールを取ったのは、相手チームやった。



「キープ!キープ!」と相手ベンチから聞こえてくる。


このままボールをキープされたら、うちの負けになる。



「ピーーーーーーーー!ファール!青7番」


西本先輩がファールをした。



相手チームからのスローインー


「ディナイ!ディナイ!」


またしても5秒ぎりぎりで相手にボールが渡る。


ガード陣の、西本先輩とキャプテンが2人がかりでボールを取りに行くが、速いパス回しで、時間


だけが過ぎていく。



「ピーーーーー!ファール!!青4番」


「チームファールが※5回になりましたので、フリースローです。」※1Qにファールを5回犯すとシュート体勢で

なくても、フリースローが与えられる。



残り11秒 86-82


このフリースローが決まれば、ほぼ勝ちは絶望的や。





1投目ー




シューターは、1年生やった。


彼はポーカーフェイス。表情に出さないが、緊張していたんやろか。





「がんっ!」





1投目は外れた。




2投目ー





第12話~退場

「落ちたー!」


ボールは、誰もいないところへと落ちた。


両チームがボール目がけて走る。




ボールを取ったのは、また高田やった。

ボールめがけて、すべりこみ抱え込むようにボールを取った。


「キャプテンっ!」


ボールがもう一度キャプテンへ渡り、キャプテンは再びスリーポイントを打った。







「ぱさっ」


入った。


「ビー!!タイムアウト!!」

相手チームが最後のタイムアウトをとった。


残り1分25秒


8点差まで点差をつめた。


「高田!!!ナイスガッツや!!ここまで来たんは、お前がルーズボールとってくれたおかげや!」


「一桁まで来ました!絶対勝てますよ!」


「よしっシュートは前があいてたら、構わず打とう。ほんで、ディフェンスは前から最後いくぞ」


「はいっ」


「おっしゃっ勝とうぜ」


完全にうちの流れやった。


オレはテーピングを巻き終えて、立ち上がった。


「あれっ痛み感じへんな。試合出来るんとちゃうか。出たいなぁ」と思ったと同時に、口に出していた。


「キャプテンっ、テーピングで今は足痛ないです。もしものことがあったら、いつでもスタンバイできてますから。」


「わかった。」



相手ベンチー


「お前ら何しんとじゃ!!ルーズボール、リバウンドもっと必死にとりにいかんかい!一番大事なことやろが!」


怒声が体育館に響きわたる。


「おいっ冷静に考えて、こっちが1ゴールとったらもうほとんど負けの可能性はなくなるんや。」


「スクリーン使って、できるだけ時間使って、1ゴールまず決めにいくで」


「はいっ!」



相手ボールで始まった。


「前からやぞ!プレッシャーかけろ!!」



さすがは、強豪校。落ちつきを取り戻したか、プレッシャーをもろともせずに、ボールを運ぶ。


作戦通り、スクリーンを使い時間をかけて攻めてくる。


それにしびれを切らした高田が、積極的にボールを奪いにいく。


「ピーーーー!!ファール!!15番!3回目!」


※24秒がリセットになった。※ファールをすると、攻撃時間が残り何秒であろうと、24秒にリセットされる。


またもや、ゆっくりとした攻め。


残り1分をきった。


「ピーーーー!!ファール!!15番!!4回目」


残り1分なら、ファール4回でも別にこわくない。


相手からのスローインで始まると同時に高田は、再びプレッシャーをかけにいく。


「もし※退場なっても、西本先輩と上村君がおるし大丈夫や」


時間ぎりぎりで相手がシュートを打った。


「がんっ」


外れた。


「速攻やー!!」


5人全員が走る。


ボールが高田に渡り、キャプテンに渡った。


と、同時にキャプテンがスリーポイントを打った。



「ぱさっ」


入った。


「集中切らすな!!前からディフェンス!!!」



「ピーーー!!ファール!!!15番!!!5回目のファールにより退場となります。」


残り37秒 86-81 5点差


15番 高田退場

第11話~気持ち~

「おぉぉぉっ」


全員が同時にこたえてた。


「こんな先輩らが気持ち入ってる試合なんて見たことないで」と、オレはぼそっと一人言を


もらしながらも、コートに立っていたかった気持ちでいっぱいやった。



「高田っもっと当たれ!!!!!」立川先輩が檄をとばす。


ディフェンスは、うまくはない高田やったけど、必死に相手にプレッシャーを与えていた。



「ピーーーーー!!!ファール!!15番(高田)」


「えぇぞ、えぇぞっ!ナイスディフェンスや!」


積極的にボールを捕りにいったこともあり、ファール。



相手からのスローイン。


「ピーーーーーーー!!!ファーール!!!15番!トータル2!」



ベンチから見ていてもわかるくらい、高田は、いつになく真剣やった。


苦手なディフェンスやけど、「相手に噛みついてもとったるどー!」と言うてるような


ディフェンスやった。


「あれは、オレもマネせなアカンな。」




バスケットボールは、ハビットスポーツ言われとる。毎日の積み重ねが試合の、ここぞという時に


生きる。


また、バスケットボールは、メンタルスポーツとも言われとる。特にディフェンスにおいては、


技術云々よりも、気合が大事やゆー話や。



高田のディフェンスは、まさにそのえぇお手本やった。




「ルーズ(ルーズボール)!!!!」


高田のディフェンスが功を奏し、相手がミスを犯し、ボールがこぼれた。


高田が、ダイビングしてそれを捕る。


前を見た時には、すでに立川先輩とキャプテンが高田を見ながら走っとった。


「かせっ!!」


パスを出しづらい体勢から、高田はボーリングのように地を這うパスを前方へと送った。


パスを取った立川先輩から、キャプテンへとパスが渡り、2点が入る。



「ディフェンスっ前からいくぞ!」と、キャプテンが言った。


残り時間1分43秒、11点差


誰一人諦めているやつはおらんかった。



「ピーーーーーー!!!!ファール!!4番(キャプテン)」



バスケットボールっちゅーもんは流れてのが、かなりあるスポーツやと思う。


今の流れは完璧にうちのチームやった。


流れを引き寄せたんは、全員のがんばりや。


長田さんの執念のリバウンド、高田のルーズボール、立川さんの勝ちへの想い・・・



流れっちゅーもんは、チームの気持ちが一つに向いた時に、来るもんなんやなぁ。



「とった!!!」高田が叫んだ。



立川先輩、キャプテンが全力で、走る。



しかし、相手も警戒していたのか、今回は戻りが早く速攻は出せなかった。



キャプテンにボールが渡りコントロールする。


「一本!ここ一本絶対とるで!」


速いパスを回し相手をかく乱する・・・が、相手ももちろん必死。そう簡単には、ノーマークでシュートは


打たしてもらえない。



「いけっ!」長田さんが、キャプテンにスクリーンをかけた。



キャプテンがスリーポイントラインまで走り、ノーマークで高田からパスを受けた。


※シュートクロックは、5秒を表示していた。※バスケットボールは攻撃の場合24秒以内にシュートをリングに

当てなければ相手ボールになるため、24秒をカウントするための時計がある。



「打てっ!」長田さんが、言った。





「がんっ」