『成瀬は天下を取りにいく』の成瀬のような感じで口調が印象的な「池田」さんは、「第5話 婚活運営者」に出てきた。彼女の今後の行く末や行動が気になる。
175P「い、池、池田と申します。どうぞ、そうぞ、よろしくお願いつかまつります」明らかに挙動不審だ、財布から身分証明書を取り出そうとして中身を全部床にぶちまけ、おいおい大丈夫かと心配になる。
WEBライターの猪名川健人は、安っぽいホームページで雑居ビルの中の小さな事務所で、婚活事業を営んでいるドリーム・ハピネス・プランニングの紹介記事を書く羽目に至った。
最初に会社主宰の婚活パーティに参加して怪しいコミュニティに誘われそうになったり、シニア婚活パーティのスタッフをすることになったり、琵琶湖のクルーズ船ミシガンに乗車する婚活バスツアーを経験しそこでカップル成立しなかったり……。という感じのストーリーとともに話が進んでいった。
この猪名川を中心に描かれていて、他の婚活参加者とのやりとりや婚活主宰者側の婚活マエストロ鏡原奈緒子との心の通い合いがあったりと、婚活パーティーを巡る前向きな大人たちの出会いを描いた物語を十二分に楽しめることができた。
157P
「そのうち、自分の臭覚がアンテナになってることに気付いたんですね。どうやらほかの人が感じない匂いを私だけが感じるみたいで、言ってみたらイヌの臭覚がすごいっていうのと同じ話です」
159P
「はい。私は皆さんが書いてくれたカードを見て、神の視点で誰が誰を好きなのかわかるんです。私にとっては答え合わせですね。」
<目次>
第一話 婚活初心者
第二話 婚活傍観者
第三話 婚活旅行者
第四話 婚活探求舎
第五話 婚活運営者
第六話 婚活主催者
宮島未奈さん
1983年静岡県生まれ。京都大学文学部卒業。2018年「二位の君」で第196回「コバルト短編小説新人賞」を受賞(宮島ムー名義)。21年「ありがとう西武大津店」で第20回「女による女のためのR‐18文学賞」大賞、読者賞、友近賞をトリプル受賞。23年、同作を含む連作短編集『成瀬は天下を取りにいく』でデビュー。第11回「静岡書店大賞」小説部門大賞、第39回「坪田譲治文学賞」、第21回「本屋大賞」など15冠を獲得し話題となる









