養老孟司さんのような人生の大先輩からぼくら後輩たちに対して、人生経験を踏まえた苦言をたくさん呈してほしい。ぼくらは僕らのためにちゃんと聞く耳を持っていたい。
養老さんの知恵とか信念、価値観、性格などのなかに、心に刺さることがありました。アドバイスのような中には、いわゆる名言とか格言のような含蓄がある素晴らしい言葉がいっぱいあります。
148P 本気で自給を考えなくてはならない
現在の状況、つまり大量消費を前提にするのではなく、大切なのは、人が生きていくうえで最低限どのくらい必要かを考えていく視点をベースにこれからのことを考えることでしょう。どのくらいの生活環境があれば人は幸せに暮らせるかという問題と直結します。
179P 早期リタイアに憧れたことがない
好きなことは、仕事の合間の貴重な時間にやるからこそ楽しみが増すし、深くなる。楽しみを増すため、深みを持たせるためにこそ働いているのではないでしょうか。
184P とらわれない、偏らない、こだわらない
人生相談に対する私の答はほとんど次の三つです。とらわれない、偏らない、こだわらない。悩みを抱えている多くの人は、一つの見方にとらわれています。だからとらわれない、偏らない、こだわらない姿勢を持ってはいかがですか、と言うのです。
それ以外には、相談者の感情をどれだけ処理するかの問題になります。相談という行為そのものがはけ口になる。悩みを言語化して、他人に伝える。その時点である程度過程を整理して、問題点を抽出しなければいけない。それ自体が感情の処理になるのです。
<目次>
まえがき
第1章 子どもの壁(子どもを上手に放っておきたい、子ども時代は大人になるための準備期間ではない、子どもを大人扱いするのは大人の身勝手)
第2章 青年の壁(解剖学を選んだのは「確実」だったから、煩わしいことにかかわるのは大切、貧乏は貴重な経験)
第3章 世界の壁、日本の壁(世界は一つにはなれない、歴史は急によみがえる、日常生活は生きる基本である)
第4章 政治の壁(あいまいなのは悪いことではない、自給自足を基本に考える、数字に惑わされてはいけない)
第5章 人生の壁(怒りっぽい人が見ていないこと、人生とは学習の場)
あとがき
養老孟司さん
1937(昭和12)年、神奈川県鎌倉市生まれ。解剖学者。東京大学医学部卒。東京大学名誉教授。89年『からだの見方』でサントリー学芸賞受賞









