朝活読書愛好家 シモマッキ―の読書感想文的なブログ~Dialogue~ -138ページ目

朝活読書愛好家 シモマッキ―の読書感想文的なブログ~Dialogue~

読書とは――著者や主人公、偉人、歴史、そして自分自身との、非日常の中で交わす対話。
出会えた著者を応援し、
本の楽しさ・面白さ・大切さを伝えていきたい。
一冊とのご縁が、人生を照らす光になる。
そんな奇跡を信じて、ページをめくり続けています。

例えば、松方コレクションなど。

写真やインターネットで見るだけでなく、自分の目でその場所に足を運んで観て五感で確認しないと、本物でしか発しないパワーがこころで感じとれずに、魂に響かないものだとぼくは信じている。

 

松方幸次郎が絵画を買い集めた理由。

欧米に負けない美術館を日本に創って、本物の名画を展示して、日本の画家たち、ひいては青少年の教育に役立てたいから。

 

まるで、実業家の松方幸次郎とともに、ワクワク、ドキドキ、東奔西走しながら西欧で名画のコレクション収集しているかのように。

まるで、美術研究者の田代雄一とともに、クロード・モネの家に訪問して彼らといっしょに吸い込まれるようにして睡蓮を見て感激しているかのように。

まるで、嘱託社員の日置釭三郎とともに、戦時下のフランスにおいて収集した松方コレクションを身命を賭して神に祈りながら奇跡的に守り抜いたときのように。

 

ぼくはこの物語のそれぞれの場面の中に気持ちまでも入り込んでしまった。

ともに足を運んで汗をかいて冒険をしているような素敵な気分を味わったのだ。

 

「タブロー」美術系関連の書き手としては、原田マハさん以上の人はいないのではないかと思うくらいすごくよい作品だった。

原田さんのおすすめ本が、「楽園のカンヴァス」や「暗幕のゲルニカ」などのほかに、またひとつつけ加わったのは間違いない事実だと思った。

 

巻末に「この物語は史実に基づくフィクション」とあり。

また「主な参考文献」の数が半端じゃないくらいに多くて協力団体も数十以上。

事前に十分な研究や調査の上に描かれたものだとわかって更にこころが満足した。

 

 

1962年東京都生まれ。フリーのキュレーター、カルチャーライター。「楽園のカンヴァス」で山本周五郎賞受賞。

橋本 治さんの遺作。

赤の他人には、人の不幸を聞いて楽しむような傾向があるようだ。

例えば、高いところから低いところに凋落していく姿を見ながらほそく笑むように。

でもそうではなく、ぼくは他山の石として生きていきたいと。

 

貫一の人生は、波乱万丈。

まるで観覧車のようだった。

彼の両親が亡くなったあと、貫一の父の親友の隆三が引き取ることとなった。

その家のひとり娘が皆麗しい美也。

いつしか隆三の家業を継ぐことで彼女の許婚者となった。

しかし、美也は、「大人になりたかった」

IT業界社長の富山唯継と結婚してしまったが……。

貫一は、その日暮らしのネットカフェから、老夫婦が営む町工場で働き、居酒屋チェーンの仕事を転々としながらも、ついには起業して「わらじメンチカツ」を出す飲食店のイケメン社長となる。

 

362P

「富山が言ったけれど、あんたは金で買われた女でしょ!三十以上も年上のジーさんに買われて、旦那が役立たずになったら養老院に入れて、毎晩男を換えて遊び歩いてるんでしょ!」

赤樫満枝―自分の父親の借金を帳消しにすることを約束にして、高利の闇金融の赤樫権三郎と結婚した女。

自分が歩いてきた道の上では決して会えない女性だ。

貫一と美也との間を人でつないでいた、この満枝の存在感がどす黒く赤く鮮やかに彩られたすばらしい小説に変えていた。

 

貫一は、最後に黄金夜界を目にしながら落ちていった。

実体験でないと分からない景色だと思うくらいに綺麗な表現だった。

370P

大都会の夜を輝かせる高層ビルの窓の光りが、流れる滝のように落ちて行く。落ちて行くのは貫一だが、貫一の目には夜の明かりが滝のように見えた。溶けていくように落ちて行く光の窓は、溶けて行く無数の黄金の延板のようにも見えた。

(中略)

自分を癒してくれるものがなにもない世界で、生きて行きたくなかったのだと、やっと気づいた―というよりも、そう思うことを自分に許した。そうしたら自然に、「さよなら」という言葉と涙が生まれた。癒してくれるもののないことを宥す涙が。

 

 <目次>

摩天楼

許婚者

富山唯継

熱海の黄昏

別離

変貌

黒い会社

脱出

時の階段

知らない人達

四年後

赤樫満枝

女二人

思いのもつれ

仮面舞踏会

再会

空の鳥籠

黄金夜界

 

1948〜2019年。東京生まれ。東京大学文学部国文科卒。「宗教なんかこわくない!」で新潮学芸賞、「「三島由紀夫」とはなにものだったのか」で小林秀雄賞を受賞。