【第4回再放送】が終わって市販された、
特別機動捜査隊 スペシャルセレクション<デジタルリマスター版> [DVD]
の作品から抽出しました。
市販品なので、
(あらすじ)などストーリーの本質にかかわるところは伏せ、
スタッフやキャスト、また(備考)・(ネタバレしない範囲での一般的感想)のみ
にとどめます。
将来、東映chなどで、一般的視聴されるようになったら書き加えていく予定です。
※ 特別機動捜査隊 まえがき
捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。
また、1963年公開の、映画版・特別機動捜査隊全2作とは趣が異なることに注意。
なお、オープニングやエンディングで配役名表記がされない作品については、従来の「発声のみの役名については平仮名表記」の原則だと平仮名だらけの文面となります。そこで役名・地名等は、検証本その他を引用、あるいは当方での当て字により、以下表記します。
配役名表記が有るため、従来の「発声のみの役名については平仮名表記」「オープニング・エンディングの表記と、劇中発声・表記が異なるときは、後者を優先」する原則に戻り、以下本文を表記します。例外は、その都度(備考)で示します。
☆・・・#134 黒い花
特別機動捜査隊(第134回)黒い花
(収録DVD)・・・VoL5、disc1、2021年9月8日発売
(本放送)・・・1964年5月20日
(脚本)・・・大和久守正、高岡恵悟
(監督)・・・大岡紀
(協力)・・・警視庁
(協賛)・・・無し
(助監督)・・・天野利彦
(劇中ナレーター)・・・島宇志夫
(捜査担当・オープニング表記)・・・立石班
西本捜一係長(鈴木志郎)、鑑察医(仲原新二)、鑑識課員(上田侑嗣)、
橘部長刑事(南川直)、荒牧刑事(岩上瑛)、桃井刑事(轟謙二)、
岩井田刑事(滝川潤)、立石主任(波島進)
(出演者・オープニングまたはエンディング表記)
・・・劇中優先のため配役名表記を省略
黒岩三代子、永井柳太郎、磯村千花子、三原有美子、朝戸正明、溝井哲夫、
森山周一郎、岸井あや子、落合義雄、滝雅男、松峯由美子、倉田地三、友野多介、
川上健太郎、杉本くにお、宮本正勝、轟ひろ志、渡辺淳二、平山成仁、丸山記美恵、
藤原敬三、高宮敬二
(あらすじ・予告篇から)
・・・ ※当時のナレーションをそのまま聞き写しています。
・・・・・・・・・・(銃を構える女の場面)
女「あんたを待っていたのは、熱海へ行くためじゃないわ。あんたを殺すためよ!」
・・・・・・・・・・(ナレーションに戻る)
殺人現場に残されていた、○○○○!
そして、浮かび上がる容疑者・・・。
それは、黒く咲いたひとつのあだ花でもあった。
女が裸になるとき、それは消そうとして消えない烙印でもあった。
現代と、そして十年前の姿が、大きく交錯して、
ひとつの事件の背後に潜む、女の半生を追及する。
一歩一歩、背伸びをして階段を上(ノボ)る・・・、
そこに待っていたのは、黒い花か? 黒い落ち葉か・・・?
※ストーリーの本質に触れる部分はボカします。
※VoL5、disc1、2021年9月8日発売 では、予告篇はdiscの末尾に映像特典として、まとめて収録されている。
(備考)・・・
・オープニング表記について、今までのゲストは出演者名のみの表記だったが、当作から配役名も併記されるようになった。
・当作に登場する寺島町は、本放送当時、墨田区に「寺島町1-8丁目」と広範囲に存在した町名。しかし、1964年から1965年11月30日にかけて、墨田区堤通、向島、墨田、東向島、八広、押上と町名変更され、寺島町の名称は消滅した。当作は、寺島町が存続したころの実地映像でもあり、歴史的価値は高い。
・その寺島町5、6、7丁目一帯は、さらに以前の名称の戦前から、いわゆる「玉の井」と呼ばれ、永井荷風の「墨東奇譚」に詳しい。その点からも、#296 九年目の女【スペシャルセレクション】 との時代背景を考えながら観賞すると興味深い。
・また、「鐘ヶ淵」という名称は俗称で、現在の墨田区東向島周辺の道路を呼んだらしく、それは東武スカイツリーライン・鐘ヶ淵駅にも反映されているという(東京今昔物語・川向うの島だった鐘ヶ淵・2010.12.26の記事に詳しい)。
・鑑識医の出演場面が見当たらない。
・君子を演じる三原有美子は、東映京都テレビプロの時代劇作品で著名だったものの、1973年の昼メロ・ライオン奥様劇場・裁きの家に出演以来、その行方がわからなかった。しかし、最近のテレビドラマデータベースの誘惑 の項目で、土屋源次プロデューサー夫人であることが加筆されている。
・その土屋源次プロデューサーは、ネット検察をしてみると、NMC、大映映像、宝映企画、IMAGICAディーシー21、IMAGICAイメージワークスのプロデューサーとして、数々の作品制作に携わってきたようである。
→(追加)R4.5.3
三原有美子、土屋源次ご夫妻については、コメント欄で「高校教師さん」が新たな情報を書き加えていただきました。参照していたければ幸いです。
・劇中では、青葉荘の窓下と立石主任から発声されるが、映像では青葉莊の敷地外の道であることが描写されている。矛盾ではあるが、以下本文では下線を引きそのまま表記する。
・以下本文の立石主任と西本捜一係長との会話では、立石主任が犯人は犯行後に窓から逃げたと報告すると、西本捜一係長がドアから逃げた背広男との関連を質問する場面が有る。しかし、これに対する立石主任の回答が「コンニャク問答」みたいであり、どうも上手く文章にならないため、この箇所は省略した。
(視聴録)・・・開始約分半まで
(ネタバレしない範囲での一般的感想)
主な関連人物をまとめますと以下のとおりです。
(演者は・・・の次に、判明出来る俳優名を表記)。
〇川村産業・波岡秋彦・・・・・・・・・朝戸正明
〇同・波岡の上司
〇同・波岡の同僚
〇同・波岡の恋人・石井君子・・・・・・三原有美子
〇君子の兄・石井・・・・・・・・・・・溝井哲夫
〇山師・穂高伊吉・・・・・・・・・・・永井柳太郎
〇穂高の情婦・松本祈世子(キヨコ) ・・・黒岩三代子
〇祈世子の母・・・・・・・・・・・・・磯村千花子
〇祈世子の義父・・・・・・・・・・・・滝雅男
〇サングラス男・鬼丸・・・・・・・・・高宮敬二
〇大宝タクシー運転手・佐伯 ・・・・・・森山周一郎
〇同・佐伯の同僚
〇第7コーポラス・管理人 ・・・・・・・倉田地三
〇青葉荘住人・長島和子 ・・・・・・・・松峯由美子
〇同・和子の子(女)
○庭園の老実業家
〇ホテル・支配人
〇同・フロント(2人)
〇吉村質店・店主
〇旅館清藤・女将・・・・・・・・・・・・岸井あや子
〇同・仲居(?)
〇同・休憩客(?)
〇特捜隊・鑑識課員(上田の同僚)
立石班の聞きこみは、5月16日の午後9時30分、荒牧・岩井田が、ホテル住まいで身支度をしていた松本祈世子を訪れ、波岡秋彦の死を告げたことから始まった。
事件の発端は、その日、青葉莊2階に住む長島夫人の和子が幼い子と帰宅するとき、波岡の住む205号室から飛び出してきた背広男と鉢合せ。背広男の右手は血まみれですぐに立ち去るも、不審に思った和子が205号室を覗くと、血だらけの波岡を発見、通報したものだった。
捜査の結果、死因は刺殺、死亡推定時刻は午後8時前後、現場には花が置かれていたほか、窓下に靴跡が発見されていた。特捜隊本部では、立石主任が、「靴跡=犯人が犯行後に窓から逃げた証拠」と西本捜一係長に報告。さらに、和子の目撃証言から、怪しい人物が2人浮かんだことにも触れる。その証言とは、
○午後5時30分ごろ、黒服女性が波岡の住む205号室を訪ねていったこと。
○同時刻、アパート前に停車中の大宝タクシー運転手が、黒服女性を尾行したこと。
であった。さらに現場の机の引き出しから、浪岡宛ての手紙を複数発見。最新の差出人が松本祈世子であることから、荒牧・岩井田に聞きこみをさせていることも併せて報告した(註・冒頭場面)。
その祈世子は、殺人への関与を否定。波岡を訪ねたこと、午後8時にはホテルに帰って来たことは認めたが(註・岩井田がフロントに確認)、波岡との関係や訪問理由は口を閉ざしていた。
「荒牧・岩井田の両刑事は、執拗に尋問を試みたが、松本祈世子は何も答えなかった。委託殺人の嫌疑もあるとみた両刑事は、参考人として本庁に同行を求めた」
(ナレーションから、訂正無しで抜粋)
そして、取調室では、立石主任も加わり、様々な角度から追及するが、祈世子は黙秘権を行使しつつ「私ではありません」という言葉に終始していた。
「そのころ、橘・桃井両刑事は、被害者の勤務状態および交友関係を調べるため、波岡の勤め先でもある川村産業を訪れたが、大した聞きこみは得られなかった」
(ナレーションから、訂正無しで抜粋)
そして橘は、立石主任に報告のため、一旦、特捜隊本部に戻ることになる。
「一方、桃井刑事は長島和子証言をもとに、大宝タクシーへ赴いていた」
(ナレーションから、訂正無しで抜粋)
そこで、青葉莊での運転手は佐伯だと判明。佐伯は、午後4時ごろ、都内で黒服女性を乗車させたが、それは祈世子であり、店舗経営していた3年前に関係があったこと、祈世子とは楽しい時期を過ごせたこと、店を一軒潰しても惜しくない女性だったとも語る。そして、死亡推定時刻とされる午後8時のアリバイについては、日の出食堂で夕食中であったと締めくくった。
桃井から電話連絡を受けた立石主任は、橘・荒牧・岩井田を前に、佐伯を容疑者リストから外す。そして、祈世子を「男を手玉にとり、渡り歩くタイプ」のやり手女性と判断、これからの捜査指針にするとともに、深夜近いこともあり、捜査を翌朝に持ち越すことにする・・・。
上記本文では、荒牧・岩井田のホテル訪問を「冒頭」と書きましたが、実は開始約8分過ぎのことで、それ以前の序盤は、いつものごとく「立石班の知らない場面描写」があります。それは、上記本文での祈世子の裏の顔というか、なにやらキナ臭い出来事が描かれています。この点、ストーリーの興趣にも関わるので、
○山師・穂高伊吉
○サングラス男・鬼丸
○背広男=石井
○老実業家
○波岡秋彦
○長島和子
○和子の子(女)
が登場したことにとどめておきます。
そして、上記本文のあとには、石井が帰宅する場面となり、奥から女性の声が聞こえます。この女性が、果たして誰であるのか、事件と関係があるのか、波岡とも関係があるのか・・・。実際には、すぐ明らかになるのですが、これを「起承転結」でいうと「承」の前半位の出来事として、ストーリーは展開していきます。
以前の#300 螳螂(カマキリ)のような女【スペシャルセレクション】 (以下、参考作と略)を思い出すような作品で、当作は黒岩三代子を前面に出した作品です。立石主任のいう、「男を手玉にとり、渡り歩くタイプ」のやり手女性=祈世子の本当の姿は何かということをテーマに人間ドラマをつくり、波岡殺人事件という刑事ドラマ的要素でこれを支えるという構成であります。脚本を大和久守正、高岡恵悟と2人置いたのも、従前の脚本に加筆したのではなく、双方が人間ドラマ、刑事ドラマのバランスをとりながら執筆したようにも見受けられます。
そう考えるのは、その後に第2の事件も発生するのですが、開始約31分前後には、犯人らしき人物が浮かび、以降は「祈世子の過去」の追及に移り、それがストーリーの核であることが明らかになるからです。
これは人間ドラマの追及でもあり、犯行動機の遠因を描き出す構成になっています。そこでの主役は祈世子であり、立石班は、その周辺にある「路傍の石」のような扱いであります。これを考えると、刑事ドラマの粗ともいえる、「第2で事件で、いつのまにか現場から消えた祈世子」など些細に見えるレベルであり、全体的にも面白い作品です。
かつて、参考作の感想で、「男を食いものにする女」としての作品として
(1) #632 赤い魔女 (脚本・大里洋子、鹿谷裕一、監督・北村秀敏、高倉班)
(2) #633 サソリ座の女 (脚本・佐々木武観、監督・鈴木敏郎、高倉班)
(3) #795 愛の終着駅 (脚本・小川記正、監督・中村経美、三船班)
を挙げたことがあります。しかし、参考作は、黒岩三代子の「魅力(?)」もあり絶対悪の存在に見せることなく、むしろ「強い女」を表現することに成功。
さらに当作では、参考作より以前の作品ではありますが、祈世子の過去の追及に時間を割いたことも有り、「祈世子の過去の追及=真相の追及」の流れを作り出し、これが「事件動機の遠因追及」まで至ったことは見どころがありました。上記3作品にも過去の追及はあるにはありますが、文章的表現が目立ち、当作のように目を見張るまでには至らないのが、当作との大きな違いといえます。
そして、ラストは結束信二脚本作品を観ているような、「この先に未来が見えない」形で締めているところなど、白黒作品ながら余韻が残る出来でもあります。
当作の成功は、参考作でも評価した黒岩三代子の存在感にあるといっても良いでしょう。参考作はカラー作品でしたが、白黒作品である当作の方が黒岩三代子に深さを感じるのも不思議です。何というか、一挙手一投足に存在を主張しているようで、「魔性」とまではいきませんが、「目を離せない」空気を醸し出している女性です。これは、特捜隊御贔屓女優の藤本三重子とは違った個性でもあります。
調べてみると、当作本放送の1964年は、
・恐るべき女子学生 思春期全期 (日本シネマ)
・痴情の家 (国映)
と映画出演が有るようで、本業は歌手でありながら、演技の素養は身に着けていたのかもしれません。ただ、黒岩三代子資料が少ないのか、一部のHPに「元日活ポルノ女優」とありますが、日活の路線変更は1971年のことで時期的に有り得ません。
ですので、本業のジャス歌手の合間に、テレビ・映画に出演しており、そのうち結婚され一線から退いたというのが正しいのでしょう。スペシャルセレクションシリーズでは、参考作、当作の次に#157 女の歩道【スペシャルセレクション】 (VoL5.disc2)が収録されています。 黒岩三代子の特捜隊出演回は12作、うち現存回は4作に過ぎないのですが、そのうち3作をスペシャルセレクションシリーズで観賞できることは、望外の喜びでもあります。
現在、動画では2008年ころの黒岩三代子を観ることが出来ますが、自分としては、ジャズよりシャンソンかなあというイメージは、未だに変わりません。。。