※ 特別機動捜査隊 まえがき

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また、1963年公開の、映画版・特別機動捜査隊全2作とは趣が異なることに注意。

 

☆・・・#792  情念の女

 

 

 

(本放送)・・・1977年1月26日

(再放送)・・・2020年7月16日

(脚本)・・・小川記正

(監督)・・・伊賀山正光

協力)・・・無し

(協賛)・・・無し

(捜査担当・オープニング表記)・・・日高班

田中係長(山田禅二)、鑑識員(田川勝雄)、鑑識員(西郷隆)、

関根部長刑事(伊沢一郎)、御木本刑事(森哲夫)、木塚刑事(藤山律子)、

田代刑事(日高晤郎)、谷山部長刑事(和崎俊哉)、日高主任(葉山良二)

 

(出演者)・・・

野口ふみえ、桜井浩子、青木美香、斉藤真、続圭子、和田一壮、岸井あや子、

花原照子、島田麗子、田村元治、森康子、喜多操、大羽吾朗、木村修、磯辺稲子、

福山雅一、江尻光子、岸映子、秋月啓子、秋山学、松田茂樹、前原美代子、

松本朝夫、平沢公太郎、春江ふかみ、奥野匡、大東梁佶、明石潮、川合伸旺、

島宇志夫

 

 

(あらすじ・予告篇から)

・・・ ※当時のナレーションをそのまま聞き写しています。

 

・・・・(1人目の女の告白が流れる場面)

「嘘言って、この世を生きてるくせに・・・浮気者!

 何人、女を泣かせれば気が済むの!!」

・・・・(2人目の女の告白が流れる場面)

「自分の女を、借金のカタに他人に売り渡すような男に、

女として愛情が持てると思う!?」

・・・・(3人目の女の告白が流れる場面)

「私は20歳(ハタチ)のとき、映画女優になり、

○○に抜擢されて主演映画を撮りました・・・。

 でも、その代償として、私は彼の自由になり、身籠り、捨てられました・・・。」

・・・・(4人目の女の告白が流れる場面)

「○○さん、○○○は○○○○に半年もの間、おもちゃにされました・・・。

 ○○は獣(ケダモノ)です。○○さん、許して! ○○○は死にます・・・。」

・・・・(以下、ナレーション)

次回、特捜隊、「情念の女」、御期待ください。

 

※関連部分を○でボカします。

 

 

(備考)・・・

#525 ポルノイン東京 女人百景 のリメイク作で、設定を文学界から芸能界へと変えている。

・鑑識員(西郷隆)の出演場面は見当たらない。

・下記本文は、辻褄の合わないところ有り(後述)

 

 

(視聴録)・・・開始約17分後半まで

 

所轄署からの要請で、日高班は練馬区大泉の北町にある里見邸に急行、所轄署刑事・牧野(晴海勇三)と合流、捜査に入る。被害者は、里見襄二(松本朝夫)で死因は青酸中毒死。妻・信子(青木美香)によると、本日の午後2時ごろ、吉岡芸能学園園長・吉岡薩夫(川合伸旺)、歌手・三宅雪江(桜井浩子)の車で帰宅したが、中に入ると早々に血を吐いて倒れたという。また、里見は貿易会社を経営、仕事と女道楽で月に2,3回帰ってくる程度だと話す。

 

関根・木塚は学園に向かい、近所の警官(大東梁佶)によると多数の生徒を抱えているとのことだったが、教師(和田一壮)によると実態は2000万の赤字で火の車、里見からの融資を期待しているところだったという。そこで関根が吉岡の女関係について触れてみるが、教師は薄ら笑いをするだけであった。

日高主任・谷山は里見貿易に向かい、専務・古川(奥野匡)と面談。里見はやり手で、社員を引っ張り不況を乗り切り経営してきたという。そして、吉岡への融資は担保が確立していないため古川は消極的だったが、里見と吉岡との間には何か動きが有るようであった。

田代・御木本は吉岡宅に向かうが、ちょうど吉岡夫人(島田麗子)が荷物をまとめ出ていくところであった。話を聞くと、吉岡とは別れ、本人も昨夜自宅には帰らず、詳しくは昵懇の仲であるポルノ女優・杉本伊佐子(続圭子)に聞いてみればと、厳しい顔つきで去っていった。

 

特捜隊本部ではこれらをまとめているところに、鑑識から正式に青酸カリ中毒死であることが報告され(註・後にカプセルで30分で溶解したものと判明)、里見がどこで飲まされたかを追及することになる。そこで、関根・御木本は伊佐子の撮影所で聞きこみ。伊佐子は昨夜吉岡が泊まったことを認めたが、今朝になって雪江とクレーで仲良く朝霞射撃場に向かったことに腹を立てていた。そして、吉岡のいい加減な学園運営、持参のウミヘビエキスのカプセルが何の役にも立たないことを話す。このことから関根は、持参カプセルと朝霞射撃場から里見邸まで30分かかることとが関連あるものと考え、日高主任に報告するのだった・・・。

 

 

その後ストーリーは、朝霞射撃場で関根・御木本と日高主任・谷山が合流、日高主任・関根が支配人代理・井口(斉藤真)に聞きこみます。井口は吉岡・里見・雪江が来訪したこと、吉岡のロッカーに誰か近づいたかどうかは気づかなかったこと、ロッカーの鍵は使用後にフロントで預かるので誰も開けられないと話します。しかし、谷山・御木本が女清掃員(花原照子)に聞きこむと興味深いことがわかります。同僚の、むらやまたけこ(野口ふみえ)と井原(磯辺稲子)とが口論していたのですが、発端は井口と婚約しているという井原が、井口にモーションをかけているのはむらやまだと追及したことであり、その時井原は、むらやまが吉岡のロッカーに近づいた、と口走ったということでした。

 

一方、吉岡芸能学園の入居するビル1階の喫茶店で、木塚は学園生徒2人(喜多操? 江尻光子? 前原美代子? )が、学園閉鎖、吉岡の女癖の悪さ、愛人の雪江に金が流れている噂を聞き出し、雪江のもとに聞きこみに向かうことになります。

その後、主な人物として、成り上がり農家主人(平沢公太郎)、桜保育園の保母・川内マツ子(カワウチ、春江ふかみ)、むらやまのアパート管理人(田村元治)、自殺した学園生徒・おきなかまちこ(未詳)、同じく1年前に自殺した学園生徒・佐久間よしこ(岸映子)、学園事務員(秋月啓子)、よしこの叔母家族の立花夫妻(叔母=岸井あや子、その夫=明石潮)、「ある人物」のアパート管理人(森康子)など、多数登場します。

 

これらの人間関係は、多い割に意外にもスッキリと整理されており、ストーリーは混在することなく展開していき、この点は、リメイクでもあるので前作#525 ポルノイン東京 女人百景

と比較していただければわかると思います。

それでも刑事ドラマとして、目につくところはあるもので。。。

 

 

当作はリメイクとはいえ、小川記正脚本作品、膨大な世界観が含まれる小川記正ワールドであり、オープニング表記で監督・伊賀山正光と出てきたとき「あちゃー」と思ったのが実感です。さらに、これは観終わったときの後付け感想ですが、前作が小川記正と好相性と自分が考える、特捜隊四天王のひとり吉川一義監督作品でありました。それゆえ、リメイク作と知っていたら、これじゃ前作のレベルまでいくのは難しいだろう、と思ったことでしょう。

 

案の定といいますか

・ロッカーの開閉問題が中途半端

・吉岡の借金2000万の債務者が誰だったのか不明瞭

・後半で、なぜ木塚・御木本が一点勝負とばかり、「ある人」に絞り込めたか不明瞭

・文中で継ぎ足した、(註・後にカプセルで30分で溶解したものと判明)の注記は、実は関根・御木本が聞きこみのときに、いきなり関根が呟くもので、順序がおかしいこと

・木塚の喫茶店聞きこみで、今更ながら雪江の存在が明らかになること

などが挙げられます。この点は刑事ドラマとして、#791 女を泣かすな

と同様に、及第点はつけられないと思います。

 

ところが、全体として前作と比較しますと、前作のジェシー(ローズ牧)の登場場面を大幅に削除、そして事件のポイントでもある前川陽子(未詳)、陽子の叔母夫妻(清水一郎、前田敏子?)の箇所を大幅に拡大、下川宗一郎(太刀川寛)のタカられる立場を逆転させるなど、事件の奥深さ・罪深さを視聴者に掲示することに成功。そして、前作の「おどろおどろしさ」とは異なり、「悲劇」として上手く昇華させたものと評価できるのです。

 

これは6年という間隔で、視聴者の認識も変わったのか、文学界から芸能界に舞台を変えたことで、「禁忌」を犯した者への復仇として、(変な意味ではなく)面白く描かれています。前作がおどろおどろしいというのは、全体が「異様な人々」で覆いつくされており、一般(視聴者からいえばサラリーマン)の家庭からいえば、有り得ない人々ばかりの中、三船班が捜査にあたるということで、それは成功を収めています。

当作では、「異様な人々」もそれなりに登場しますが、「ある人物」は正常な感覚であり、「ある事情」により大きく変わっていく「悲劇」としての描写でありました。日高班案件とはいえ、主役を「ある人物」と「その相手」に譲ってしまった点も納得いくものであり、今回は伊賀山正光監督もやるのものだなと脱帽しました。

ちなみに、自分はブログ更新前に再度前作を観たのですが、両作とも似たようで異なる世界観があるので、非常に興味深い。これは、小川記正の両作を対比させた姿勢とともに、吉川一義監督と伊賀山正光監督との違いを見ているようで、もし前作を録画されている方がいましたら再見をお勧めします。

 

上記の事柄は、構成である小川記正の成果ともいえるわけですが、それを演出して上手く映像化したというのは監督の成果であり、カメラワークもいつもと違う感がありました

伊賀山正光監督といえば佐々木武観脚本との組合せが多く、どうしても「前半飛ばしの、後半バタバタ」になるのですが、たまにこうしてクリーンヒットを飛ばします。

考えてみれば、嵐寛寿郎をゲストに#530 懐しのメロディー 殺し屋

を演出したこともあるのですが、これも小川記正脚本で、肩の凝らない佳作に撮りあげました。意外に、小川記正との組み合わせも良いのかもしれません。

 

脇役俳優の範疇に入れるのはもったいないのですが、斉藤真のインパクトも大きい。顔つき・台詞・存在感、どれをとっても何かしら事件の介入を予感させ、#781 純愛の女

でも忘れがたいガソリンスタンドでの登場場面が有りました。

また、脇役女優として特捜隊では著名の花原照子も、ワンポイント出演。いつも老け役のおばさん役が多いのですが、wikiで項目が立てられており(追いかけているファンも多いとも思われます)、当作出演当時は50歳、2011年の84歳まで女優活動されていたようです。

こうしてみると、脇役充実の態勢は、イコール特捜隊番組終了を完全に覚悟しての、制作サイドの「功労」もあるのだとも感じます。

さて当作本放送は、1977年1月26日。いずれ別記事をupしますが、リアルタイムでは1カ月もしないうちに、特捜隊ファンにとって衝撃的な出来事が起こります。。。