※ 特別機動捜査隊 まえがき

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また、(出演者)は、エンディングで、一列~三列で表示された男優・女優に限定しました。

1963年公開の、映画版・特別機動捜査隊全2作とは趣が異なることに注意。

 

☆・・・#761  明暗友情ブルース

 

 

 

(本放送)・・・1976年6月16日

(再放送)・・・2020年4月2日

(脚本)・・・加藤昭夫、鹿谷裕一

(監督)・・・北村秀敏

協力)・・・無し

(協賛)・・・無し

(捜査担当・オープニング表記)・・・矢崎班

田中係長(山田禅二)、鑑識員(田川勝雄)、鑑識員(西郷昭二)、

谷山部長刑事(和崎俊哉)、桂刑事(佐竹一男)、神谷刑事(山口あきら)、

入江刑事(池田駿介)、田坂刑事(倉石功)、矢崎主任(亀石征一郎)

 

(出演者)・・・

大下哲矢、高橋みどり、相川圭子、鈴木和夫、宮沢康、白川みどり、山田光一、

一ノ瀬かをる、水品昌子、浅茅しのぶ、北九州男、石井宏明、上野山功一、

外山高士

 

 

(あらすじ・予告篇から)

・・・ ※当時のナレーションをそのまま聞き写しています。

 

時価数億の麻薬が、トラックごと消えた!

血眼(チマナコ)で、その行方を探す暴力団。

そのカギを握る男、城山(シロヤマ)・・・。

この男こそ、その剛速球をプロに買われ、

スターの座を獲得した男であった。

だが、巨額の契約金は、友情と青春を押し潰した。

かつての英雄も、今は、手負いの血に飢えた狼である。

あの情熱は、どこへ消えた!?

汗まみれのグラウンドで、確かめ合った連帯感はどうした!?

かつて、バッテリーを組んだ田坂刑事は、

そこに人生の恐るべき落とし穴を見るのであった!

次回、特捜隊、「明暗友情ブルース」、御期待ください。

 

 

(備考)・・・

・神谷刑事を演じる山口暁が、山口あきら、へと改名。

・岩本刑事(萩原伸二)が、当作以降も未出演になるかは、現在のところ不明。

・入江刑事(池田駿介)が初登場する回だが、紹介される場面は無く、検証本430頁にある「空手を使う」ようすは見当たらない。

・鑑識員(西郷昭二)の出演場面は見当たらない。

・矢崎班は、#749 女ごころの謎 以来、久々の捜査担当で11回の空白回があった。矢崎班では、今までの#702 消えた一千万円#712 七年目の報酬の、9回の空白回を越えたものである。

・劇中の競艇場は、看板表示から、現在の戸田ボートレース場であるが、主要ロケは池袋駅周辺で行なったものと思われる。

・特捜隊捜査班刑事の親族(3親等以内)として、田坂刑事の妹・洋子(高橋みどり)の登場は、【第3回再放送】以降では、#635 初笑い とら、とら、とら捕物帳 での田中係長夫人(目黒幸子)以来、と記憶する。

(追加 R2.04.05)

以下本文下線部での、聞きこみの際のユミの態度は、前日に鉄次のスナックを訪れていたことからすれば不可解であるが、敢えてそのまま書き出した。

 

 

(視聴録)・・・開始約8分後半まで

 

ある雨の夜、スナックのドアを叩くストリッパー・ユミ(相川圭子)、それを遠巻きに監視する矢崎班の姿があった。やがてドアが開き、マスター・つじ鉄次(鈴木和夫)が中に入れるが、入るなりユミはヒロポンを求める。鉄次はヒロポンを扱っていないことから断わるが、常軌を逸したユミの要求に外に叩き出す。と、またもやドアを叩く音に、一喝しようと開けた鉄次の前には矢崎主任・田坂が立っており、鉄次に出頭を要請するが、逃げ出したため緊急逮捕となる。

というのは、その日の午前中、鉄道橋で50歳前後の男の轢死体が発見され、その靴についた指紋が鉄次のものだったからである。傷み具合から人相判別は不可能だが、死後5.6時間後に轢断されたと推定。田坂は列車通過が午前4時とすると、昨夜10-11時が死亡推定時刻と考える(註・後の解剖結果で、死亡推定時刻は昨夜9-10時で、幅をつけても30分と断定された)。桂・入江から、競艇新聞・舟券20枚・レース研究メモの遺留品を示された矢崎主任は、死体の男=競艇好きの認識を持つことになった。

 

逮捕の翌日、取調室では、矢崎主任・田坂が鉄次を厳しく訊問するが、鉄次は「知らない」「やってない」「これは罠だ」との供述に終始する。そこで矢崎主任は、一昨日の午後9-10時のアリバイの聞き出しに切り替えると、鉄次はストリップに行っていたと話すのだった。

 

そのスタジオでは、振付師(山田貴光)の指導のもと、ナオミ(白川みどり)、ダンサー(梢木実)のほか、仲の良いユミ、ルリ子(一ノ瀬かをる)、朱美(水品昌子)の3人がレッスン中であった。そこに桂・入江が、鉄次の写真を持ってアリバイ確認に訪れる。ユミ、ルリ子、朱美には見覚えがあり、一昨日は午後8時半からフィナーレまで居たこと、ナオミからはフィナーレが午後10時半であったことを教えられる。

特捜隊本部で、この無線報告を受けた矢崎主任は、鉄次が途中で抜け出したかどうかを再確認するよう指示を出すが、アリバイ成立は動かしようもなく谷山も同意する。しかし、田坂だけは、鉄次とユミの男女関係から信用できないと考えるが、谷山のユミのほかに証言者がいることには、反論のしようがなかった。と、そこに、鑑識員が轢死体の復顔写真(上野山功一)をもって現れる。そこで矢崎主任は、遺留品に競艇関連のものがあったことから、田坂・神谷には競艇場での聞き込みを、谷山には公開手配するよう指示するのだった・・・。

 

 

ストーリーはその後、競艇場で聞きこみの最中、田坂が高校で捕手として野球をしていたころ、投手でバッテリーを組み、プロ野球入りした城山勝秋(大下哲矢)と巡り会います。しかし、思い出を語る田坂、無口な城山の対照的な風景に、神谷は城山のジャケットに暴力団のバッチを見出し、下を向きます。それに気づいたのか、城山は2人の元を離れ、競艇場をあとにします。そして街中を歩く城山に、ユミが近寄り、大和田りょうぞう(外山高士)率いるおおとら組の連中が城山を探していると伝え、2人でここから離れます。直後に、おおとら組配下の組員(北九州男、宮沢康)が現われるので、ユミの話は嘘ではないこともわかります。

 

一方、特捜隊本部では桂・入江が戻り、桂からは振付師からも鉄次の目撃証言を得たこと、途中外出の気配も無いことが報告されます。さらに入江からは、鉄次は兄貴分である城山と一緒だったことも報告され、横で聞いていた田坂は驚きます。と、そこに神谷が耳打ち、田坂の妹・洋子(高橋みどり)が面会に来たとのことで、席を外すと、洋子から食事の差入れを受け取ります。気分一新とばかり、田坂は差入れを仲間に振舞いますが、そこに保安二課刑事(山田光一)からの電話を取ります。すると、復顔写真の男は、保安二課が1ヵ月前から覚醒剤密造で捜査中のMO貿易社長・牛田としみちであることが判明。早速、矢崎主任・桂・入江は、保安二課刑事・長谷川(石井宏明)指揮のもと家宅捜索中のMO貿易へ直行しますが、どうやら牛田はおおとら組のルートで、覚醒剤を捌いていたことを長谷川から指摘されます。

 

さらに、牛田の死体発見現場近くで、牛田所有のトラック発見の通報もあり、そちらに向かうことになります。先着していた田坂はトラックの血痕跡を鑑識手配、神谷もトラックを発見通報をした夫人・友乃(浅茅しのぶ)を連れてきたこともあり、矢崎主任は詳細を聞くことになります。すると、友乃はトラックの発見通報というより、一昨日の夜10時ごろ、トラックを止める男2人を目撃したことがわかります。

そして、その後の鑑識結果で、トラックの血痕跡と牛田との血液型が同一であること、荷台に覚醒剤を積んだ形跡もあったことから、矢崎主任は友乃に鉄次の面通しをしてもらうよう、特捜隊本部に友乃を呼ぶところが、開始約16分前半。ここが前半のピークであり、後半は牛田殺害事件の真相は? この事件に、田坂の親友・城山は関係しているのか? これが後半に向けてのテーマで、どんどんと進行していきます。

 

 

当作は、特捜隊四天王の北村秀敏監督が#749 女ごころの謎 以来、矢崎班と歩調を合わせたように、久々に演出した作品です。いつも通り、器用にかつ辻褄が合うように構成するのは変わらないのですが、刑事ドラマの点と、人間ドラマの点では噛み合わない感が見えます。

というのは、刑事ドラマの点では、牛田殺害事件、覚醒剤事件の経緯など器用にまとめており、2つの事件の犯人が同一なのか異なるのか、先読みも含め上手い演出です。

ところが人間ドラマの範疇に入るのでしょうか、その事件の動機というのが場当たり的で、描き切れておらず、盛り上がりが欠けるきらいがあります。特捜隊宿命の「時間の壁」もあるのでしょうが、なぜ牛田が殺されるのか(それをやったら牛田も終わりだよとか)、悪党だったら別のやり方があるのでは(共闘するやり方が普通では)・・・とも考えます。

 

さらに突き詰めれば、せっかく田坂の妹・洋子、を出したのですから、クライマックスをもう少し盛り上げる派手さを入れるべきとか、洋子と「ある人物」との関連をもっと掘り下げるべきとか、終わってみればつい感じてしまうのです。

この物足りなさというか、アンバランスさは、北村秀敏監督の#670 空飛ぶ円盤 (奇しくも矢崎班の作品です)でも感じたことでもあります。もしかして、北村秀敏監督からすると「刑事ドラマ>人間ドラマ」がベースとしてあるため、人間ドラマに関する部分は、ポイントをつい見落とす傾向にあるのかと、考えることもあります。

 

それと、「田坂刑事の学生時代の友情」を挙げるのなら、大下哲矢というより、陰陽演じられる中堅俳優さんを抜擢できなかったかとの思いがあります。年齢的にバランスはどうかの問題はあるのですが、北条清(北條清嗣)や堀勝之祐が演じていたらどうだったかな。。。どうも、大下哲矢だとおとなしめの印象が強いため、「陰」の面が強く出てしまうように考えます。まあ、キャスティングはプロデューサーの権限が大きいので、あれこれ言っても仕方が無いことは承知の上なのですが。。。

 

あと、これは先入観なのですが、序盤で「轢死体」「死後轢断」というフレーズが登場したとき、自分は下山事件を思い出し、脚本が2人だったことから、この事件に関連させた展開になるのではとも思いました。というのは、下山事件では、生前轢断か死後轢断かによって、自殺か他殺か議論があり、事件から70年以上たった現在でも真相は藪の中です。

特捜隊では、現実に起こった事件を脚色したドラマ化も多々あります。なので、自分の早とちりですが、下山事件を反映したストーリーと勝手に思い込んでいたことで、当作の評価が偏っている部分があることは否定できません。この点東映chさんの再放送、2020年4月9日(木)9:00-10:00 の視聴で確認していただければ幸いです。