群馬県草津町・草津白根のアズマシャクナゲおよびハクサンシャクナゲ群生地を訪ねる(2) | 名宝を訪ねる ~日本の宝 『文化財』~

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昨年のことなのですが、6月の中旬に、群馬県草津町にある「草津白根のアズマシャクナゲおよびハクサンシャクナゲ群生地」を訪ねました。

 

ここは日本三名湯の一つ、草津温泉の近所です。日本産名湯の名に違わず、そこかしこに温泉があります。

 

川が温泉になっている場所もあるんですよ。(正確には温泉が川になっている、なのでしょうか。)

 

 

その時はハクサンシャクナゲがほぼ満開で、それはそれは見事な群落を見ることができたことをご紹介しました。

 

しかしここは、もう一つ「アズマシャクナゲ」の群生地でもありました。そのことは前回も書きました。

 

昨年、ハクサンシャクナゲであれだけの見事な群生を見られたので、今年はアズマシャクナゲを見に行こうと5月下旬、再び草津町の群生地を訪ねましたのでご報告します。

 

 

ただ、見事な群落をとても楽しみにして出かけたのですが、結果として惨敗だったことだけ先に述べておきます。

 

 

登山したルートは前回と全く同じです。

 

草津白根のシャクナゲ群生地 登山ルート

 

 

奇しくも、今年も昨年と同じような天気の日で、重い雲に覆われたどんよりとした空模様の日となりました。

 

昨年同様、草津温泉の無料駐車場で登山の準備をして、出発です。

 

登山道入り口

 

入口も昨年同様、巨大なリゾートマンションの脇から登りはじめます。

 

2度目の山登りの今年は気持ちに余裕があるので、コースを昨年のレポートより詳しく紹介します。

 

マンション脇を抜けると、やがて草津町の水道施設が見えてきます。その前にある分岐は左へ進みます。

 

草津町の水道施設

 

分岐の先には「進入禁止」の標識と道をふさぐように掛けられた鎖が。

 

あくまで自動車の侵入防止なので、ここは歩行者なら越えて問題ありません。

 

シャクナゲ群生地への登山道始点

 

歩いていると、いくつかの井戸から湯気が上がっているのが見られます。さすが、温泉地。

 

これらは草津温泉の泉源管理用設備のようです。

 

湯けむりが登る井戸

 

前回は紹介しませんでしたが、砂利道は草津温泉の源泉の一つ、万代鉱跡(旧硫黄鉱山)へと通じる道です。

 

管理用道路なので、一般の方はシャクナゲ群生地入口から先は立入禁止です。

 

シャクナゲ群生地へは下のような分岐点を左へ曲がります

 

万代鉱跡への道との分岐

 

クマよけの鐘が吊り下げられているのが目印。

 

ちゃんと道標もあるので初めての方でもまず迷うことはありません。

 

半分腐り落ちた木橋を渡り…

 

半分、腐り落ちた木橋

 

登りはじめてからおよそ40分ほど経ったころ、昨年、花が終わったアズマシャクナゲの群生地として紹介したところへ到着しました。

 

ところが、今年も花が見られません。

 

「ネットで開花情報を確認しながら来たのに、どうして!?」

 

花が終わったアズマシャクナゲ群落(昨年)

 

その場でもう一度、スマホを取り出しました。

 

頼りにしていた開花情報のページは間違いなく更新が続いていました。しかし、内容が間違っていたのです。

 

花はとっくに終わっていました。

 

「そ、そんな…ガーン

 

咲いているのは、目当てではなかったツツジばかり。なんていうツツジなのか、チェックもしていないので名前がわかりません。

 

アズマシャクナゲ群生地に咲いていたツツジ

 

とにかく、殺生河原まで行ってみることにしました。殺生河原はここより標高が高いので、まだ花が残っているかもしれない。

 

淡い希望を抱きながら、先へ進みます。

 

 

昨年は初めて上ったので、周囲に気を配る余裕もなく先へと進みましたが、今年は2度目なので、山道は慣れたものです。

 

気持ちには余裕があったので、途中の急坂で後ろを振り返ってみました。

 

そうしたらこんな心が洗われるような景色が。

 

草津白根山中腹の森林

 

緑が濃くて、空気が澄んでいます。クマザサの密生とその上の疎林のコントラストがまた絶妙です。

 

去年は気が付かなかったな。余裕は持って見るものだな。

 

この辺りで、麓から1時間ほど登ってきたところです。

 

さらに30分ほど登って、昨年ハクサンシャクナゲが競うように咲き誇っていた殺生河原まで来ました。

 

やはり、ハクサンシャクナゲはまだ早いようです。つぼみは堅いままです。

 

殺生河原で見た、ハクサンシャクナゲのつぼみ

 

アズマシャクナゲもありません。

 

咲いているのは名前もわからない、先ほど見たのと同じツツジのみ。

 

殺生河原のツツジ

 

ツツジには天然記念物のものがあるのでいずれチェックしようと思っているのですが、まだ全然調べてないので名前もわからん!

 

アズマシャクナゲは完全に開花期を逃したなショボーン

 

…などと考えながら、最後の望みをかけて殺生河原の下にある湿地、昨年も訪ねた「武具脱の池(ものぬぐのいけ)」へと来ました。

 

昨年はハクサンシャクナゲが見られた、武具脱の池(昨年)

 

一縷の望みをかけて、周囲を見渡しました。

 

すると、花が終わった樹々の上に少しだけ白い花が見えます。ツツジにしては大きい!違う花だ!

 

これは、シャクナゲだ!

 

武具脱の池にわずかに残っていたシャクナゲの花

 

まだ残っていた!

 

歓喜のあまり、誰も周りで見ていないことを確認しながら、ガッツポーズをとってしまいました。

 

その後も少し探索して、周辺にいくつかの花を見つけました。

 

ツツジの奥に咲くシャクナゲの花

 

カメラのレンズが届くところにも、いくつかの花がありました。

 

アズマシャクナゲは濃紅~淡紅色と聞いていたのですが、白っぽい花が目立ちました。

 

しかしハクサンシャクナゲとはまた違います。

 

アズマシャクナゲ(淡紅色のもの)

 

アズマシャクナゲ(淡紅色のもの)

 

アズマシャクナゲ(淡紅色のもの)

 

アズマシャクナゲ(淡紅色のもの)

 

葉っぱがハクサンシャクナゲより細い、鋭い印象を受けるのでアズマシャクナゲなのは間違いないです。

 

濃紅色の花もありましたが、今回はあまり見かけませんでした。

 

アズマシャクナゲ(濃紅色のもの)

 

アズマシャクナゲ(濃紅色のもの)

 

これで、なんとか花を見ることができました。私の執念が勝ちました。

 

ただ昨年のような、一面の花のじゅうたんのような光景を期待していたので、正直それほど嬉しくもありませんでした。

 

アズマシャクナゲ

 

花期は終わりに近い

 


花が終わったアズマシャクナゲ

 

目的は達成できたので、下山します。殺生河原からはスキーコースを下ります。

 

このコース、右手にはアズマシャクナゲの群生が見られるのですが、花の時期ならここが紅く染まるのかと思ったら時期を逃してしまった悔しさがフツフツと沸き起こります。

 

スキーコースわきのシャクナゲ群生

 

麓まで降りてきました。駐車場へ戻り、自分の車に乗り込みます。

 

「仕方ない、また来年以降にしっかりと調べてからもう一度来よう。」

 

と心に誓って車を発進させました。

 

そんなわけで、草津白根のアズマシャクナゲ開花期は5月中旬、ゴールデンウィーク(GW)後半だとやや早いかもしれませんが、GWが終わった翌週くらいが狙い目のようです。

 

悔しいので、このあと草津の温泉に浸かってきました。

 

 

 

あまりにも物足りなさが残ったので、今回はオマケを紹介します。

 

以前から、草津白根山には「日本国道最高地点(2,176m)」と、その先にある「県境に建つホテル(群馬・長野県境に建つ「渋峠ホテル」)」があることを聞いていました。

 

日本一という場所と、アニメにも登場したという奇妙な位置に建つホテル。興味があったんですよねぇ。草津温泉から車なら1時間ほどなので今回、物足りなさもあって行ってみました。

 

 

草津白根山は火山で、各所で噴火活動が見られることからいくつかのピークがあり、それらを総称して白根山と呼びます。

 

日本にはいくつか”白根山“という山があるので、区別するため「”草津“白根山」といいます。

 

数年前に中規模な噴火があってから火山活動が活発で、いまも「噴火警戒レベル」が1に設定されています。

 

だから今も噴火口の湯釜とその周囲、半径500mの範囲は立入禁止となっています。殺生河原も火山性の二酸化硫黄や硫化水素などの毒ガスが常時発生していて危険なので、立ち止まることは禁止されています。

 

そんな草津白根山を抜けて、国道292号線という国道が通っています。この道は国道マニアには有名で、日本の国道では最も高い地点を抜けているのです。

 

それが「日本国道最高地点」です。

 

「日本国道最高地点」の碑

 

ここまで来るのに九十九折りの坂が延々と続くので、車のエンジンがウンウン呻りっ放しでした。

 

 

 

 

ここから眺める草津白根山は、また絶景です。

 

国道最高地点から眺めた草津白根山

 

火山らしい、荒涼とした風景が広がっています。

 

そこから目と鼻の先、白根山の山塊のはずれにある渋峠に、県境マニア(実際にこう自称する人々がいるんです)にはよく知られた、そしてアニメの舞台にもなったために「聖地」として有名になった”県境のホテル“渋峠ホテルがありました。

 

渋峠ホテル

 

ホテルの真ん中を、群馬県と長野県の県境が横切っているんです。泊まる人は群馬県側か長野県側のいずれかの部屋に泊まることになり、部屋が群馬側でもレストランは長野だったりで群馬と長野を行ったり来たりできると評判(なんだそう)です。

 

アニメでは(あの「体が小っちゃくなった探偵が謎解きをする」アニメです)殺された死体が県境に跨っていたから群馬・長野両県警が出張ってきて混乱する、という話の舞台でした。

 

一度泊まってみたいですね。周囲にはスキー場があるのでスキーシーズンには繁盛するようですが、今はシーズンオフでひっそりとしていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

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草津白根のアズマシャクナゲおよびハクサンシャクナゲ群落 (昭和36年7月 天然記念物、群馬県吾妻郡草津町)

 

江戸時代から湯治場として知られ、日本でも有数な規模の温泉地、草津温泉から長野県の志賀高原に抜ける国道292号線は志賀草津道路ともいい、群馬・長野県境の渋峠で日本の一般国道としては最高所を通過することでも有名です。志賀草津道路の通過する草津白根山は近年、火山活動が活発になったため報道されることもしばしばです。

 

その志賀草津道路が殺生河原と呼ばれる景勝地を通過するあたり、標高1,450~1,600m近傍の高原では左右にアズマシャクナゲの群生が見られます。開花期の5月中には紅色、淡紅色のアズマシャクナゲの花が楽しめます。

 

本来、アズマシャクナゲやハクサンシャクナゲは亜高山の樹林帯において低木相を占める植物です。この辺りは火山の活動で一度植生が破壊され、シャクナゲ類が優勢になった、不安定な植生遷移の一過程を示しているものと考えられています。シャクナゲが大規模に自生している例は珍しく、学術上貴重なことから天然記念物に指定されました。