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今回は千葉県の北部、下総地方にある府馬の大クスと神崎の大クスを訪ねました。
そもそも、クスノキは大木になりやすいらしいんですよ。
過去に訪ねた巨樹にも、クスノキがありました。過去記事はこちら…
クスノキといえば“樟脳”ですね。虫除けや防虫剤として有名です。クスノキから作られるといいます。
下総地方の代表的な巨樹2株は、どちらも“大クス”と名付けられていますが…
実は、府馬の大クスはクスノキではありませんでした。
でも、貴重な巨樹として天然記念物に指定されています。
どれほどの大木なんでしょう?気になりますね。“木”だけに…
そんなわけ、ではありませんが、阿玉台貝塚の近所だったから、まずは府馬の大クスを訪ねました。
阿玉台貝塚の近所ですから、千葉県に特有な地形、前回も紹介したような台地の尾根上にあったんです↓
しばらく県道を走っていきます。この県道は大地の裾に沿ってとおっているので、右へ左へと緩やかにカーブして進みます。やがて県道から分かれ、台地上へ登る町道へ入ります。町道は台地の急な斜面を登っていき、やがて目の前が開けて台地上にたどり着きました。
そこには巨大な樹と小さな祠がありました。それが府馬の大クスでした。
いや、目の前の巨樹の大きさ、太さに圧倒されます。隣にある祠は、まるで縮こまっているようです。
いや、クスノキだと思っていたので大きさにはそれほど驚きませんでした。なんせ、私が見た中でその大きさに一番驚いた木は山口県にあった「川棚のクスの森」ですから。
一本の樹なのに、その大きさから森のように見える、ってんで「クスの森」といわれた巨樹です。
…それより大きいという、鹿児島県の「蒲生の大クス」なんて、どれだけ大きいんでしょうね?いずれは見に行きたい樹ですが、いまのところ見たことないんでとても気になっています。
それでも、府馬の大クスも大きいです。
長い年月の風雪に耐え、苦悶に身をよじったような樹形ですが、どんな苦難も生き延びてきたぞと言わんばかりです。そこに尊敬というか、畏怖の念さえ湧いてきます。
角度を変えて撮影しても、樹形の異様さがわかります。
ただ、この樹は“クスノキ”ではないんだそうです。あれ?クスノキじゃないの?
クスノキに似ているけど、クスノキではない…
そんな樹の種名は「イヌグス(タブノキ)」なんだとか。
確かに葉っぱを見ると、クスノキなら葉の縁がギザギザしていそうなものなのにそれがないし、丸みも強いです。表面に光沢があります。クスノキにはこんな光沢は見られません。
なるほど、クスノキではなく“イヌグス(タブノキ)"なんだ。
それならなおさら、これほどの大木になるのはすごいね!それこそ幾百年という年月が必要だよね。
…と考えていたら、樹齢は1,300年とも1,500年ともいわれているそうです。すごいですね。
近くには主樹から伸びた枝が地面について根付いたという子孫樹が成長していました。それも「子グス」と呼ばれていたそうで。枝が伸びていたのは江戸時代の話だそうです。
こちらの樹も主樹に比べればまだまだですが、なかなかの樹幹を呈しています。
子孫も残して、保存には申し分ない環境ですね。ひと安心です。
これからも末永くその姿を見せてほしいものです。
続いて、神崎の大クスを訪ねました。
先に紹介した横利根閘門から利根川沿いに上流へと向かうと、やがて香取郡神崎町に入ります。町の中心には鬱蒼とした森に包まれる小山がありました。この小山は全山が地元の鎮守である神崎神社の境内にあたります。
神崎の大クスはこの神社のご神木でした。
大クスの樹は社殿の右にその姿を見せていました。
まずは神社に参拝し、大クスへ。
「水戸黄門」で知られた徳川光圀がこの木を見て、「はて、この木はなんじゃ?」となやんだことから「ナンジャモンジャの樹」ともいわれているとか。この伝説もよく聞きますが、「黄門さま、クスノキですよ~。」
実際に近づいてみると、樹高は高いですが樹幹はあまり太くありません。
「ん~っ、思ったほど太くないねぇ。」
天然記念物の木にしては細いな、というのが第一印象でした。
こういった場合、過去に落雷などで主幹が枯れてしまっていることがあります。
ちょっと角度を変えてみたら、その主幹が見えてきました。
やっぱり、太い主幹がありました。
明治40(1907)年、神社が火災に遭い、その時このご神木も被災したそうです。
しかし、今は5本のひこばえが巨木に成長し、主幹の周りを囲っているそうです。
こうして、主幹は枯れてしまいましたが神崎の大クスはその威容を今に伝えていました。
言われてみれば樹高は高いし、繁っている葉っぱも若々しいですね。
主幹は枯れても次世代の木が繁茂しているのを見て、この樹はこれからもこの地で元気に育っていくことだろうと思い、安心してこの地を離れました。
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府馬の大クス(大正15年10月 天然記念物 千葉県香取市府馬)
府馬の大クスは合併して香取市となった旧山田町内に所在します。根元にある祠には宇賀神社が祀られています。指定名称はクスですが、実(じつ)はタブノキであり、地元ではタブノキを“イヌグス”と呼ぶことから誤解されたと見られます。樹高は約16m、根回り約28mもあり、県内ではタブノキは各所で生育指定m巣がこれほどの巨樹は珍しいです。やや離れたところには、指定樹から伸びた枝が地面に着いて根付いたという「子グス」があり、この枝は枯れてしまったのですが、江戸時代に編纂された『下総名所図会』には枝がつながっていた頃の様子が描かれています。
神崎の大クス(大正15年10月 天然記念物 千葉県香取郡神崎町神崎本宿)
神崎の大クスは町内の神崎神社境内にあります。主幹は明治時代に社殿の火災で類焼し、今は上部約7mの位置で切断され、枯れてしまっています。しかし周囲のひこばえが5株、成長して、最大のものは幹の直径が1.2m、樹高も約20mを越えるほどになりました。水戸黄門で知られる徳川光圀が「この木はナンジャ?」と呼んだとされたことから今でも「ナンジャモンジャの木」と呼ばれて親しまれています。