s嬢の秘めやかな日常 -5ページ目

不思議の国のまどろみの森2

なおも焦り続ける私を、帽子屋は宥めるように咎める。

「ウサギはぴんぴんしてて、もう、ここにはいないよ。ここはアイツの庭の様なものだからね。ウカレてるんだ」

「三月でもないのに?」

「なぁに、いつだって奴はウカレてるさ」

「た、確かに…」

妙に納得してしまった。

「じゃ、三月ウサギも先に行っちゃったし…。俺らも行こうか?」

「行くって、何処に?」

いきなりの帽子屋の提案に首を傾げた。

すると、帽子屋は何を言ってるんだとばかりに溜め息をついた。

「お茶会場にだよ。その為にきたんだよ?俺達」

「あ」

そういえば、すっかり忘れてた。

あの時は雪乃を助けようと必死で何を言ったのかもあやふやだ。

まぁ、ここにいるんだから、行くとは言ったんだろうな。

「アリス、忘れてたって顔してるよ」

「え!?嘘!!」

急に指摘され、顔を両手で覆った。

すると、帽子屋がいきなり吹き出した。

「嘘。アリスは可愛いなぁ」

「んな…///ば、馬鹿にしてんの!?」

私は、勢い余って怒鳴ってしまったが、帽子屋は人当たりの良い顔笑っている。

「馬鹿になんてしてないよ」

「…」

私は無言で歩き出した。

「あれ?アリス、一人で何処行くん…」

「付いてこないで!」

帽子屋は何か言おうとしていたが、私は走り出した。



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不思議の国のまどろみの森1

ドサッ!!

「痛っ」「ぐぇっ!?」

扉に飛び込んでから暫く可笑しな空間を浮遊していたと思ったら、おもいっきり、お尻から落ちてしまった。

上を見上げても、扉は見えない。

一体、何処から落ちてきたのか見当もつかない。

「の割には、あんまり衝撃がなかったような…」

「アリスぅ、早くどいてよぉ」

激しい衝撃がなかったと思ったら、三月ウサギが下でクッション代わりになっていた。

「ご、ごめん!さっきのぐぇって君の声だったんだ!?大丈夫?」

「ん~、大丈夫だよぉ」

「ウサギば心配要らないよ。丈夫だからね」

三月ウサギの上からどいて、急いで抱き起こしてやると、帽子屋の呑気な返事が聞こえてきた。

「丈夫って言っても、見事に腹部に膝が入ったんだけど!?内臓とか破損してるんじゃ…」

「アリス、少し落ち着きなよ」




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招待状と不思議なお茶会26

「何言ってんの!?私は大丈夫だから…」

大丈夫だから。

そう言い終わるか終わらない内に、私にグッと後ろから引き寄せる力が加わり、私はそのまま扉とは逆の方向へと倒れ込んでしまった。

それと同時に、扉は雪乃を引き込んで閉じてしまった。

「何でよ。何でなのよ…もぉ、雪乃のバカァ」

私は親友が連れ去られて涙を浮かべた。

私のせいだ。

「私が決めたことから逃げたから…!」

「助けに行く?」

不意に帽子屋が口を挟んだ。

「助けに行ける…の?」

「勿論だよ」

帽子屋はニッと笑って言う。

「アリス、君が望むのならね。…でも、その為には不思議の国に行かなければならないよ。いいのかい?」

「それでもいい。雪乃を助ける為だもん!」

どうせ一度乗りかけた船だもの。

逃げたってしょうがないじゃない!

私はゆっくりと扉に向かって歩いていった。

帽子屋と三月ウサギというヘンテコなメンバーを引き連れて。

「さぁ行こう。アリス」

扉が開き、私達を誘う。



「最後まで付き合ってあげるわよ。このふざけたお茶会に…」





招待状と不思議なお茶会
 END

次章
 不思議の国へ

招待状と不思議なお茶会25

「雪乃!!」

私は急いで叫んだが、遅かった。

蔓は雪乃にしっかりと巻き付いてしまっていた。

「亜莉子!?嫌、何これっ助けて!!」

「あらら、やっぱりバターナイフは駄目だね」

え゛!?バターナイフ?

「なんでバターナイフなのよ!?普通はただのナイフでしょ、こういう場合!」

友達の一大事だっていうのに!

「だって俺、普段お茶会に必要な物以外持ってないし。大体、学校にナイフなんか持ってきちゃ駄目でしょ?常識だよ」

「バターナイフ持ち歩いている奴が常識とか言わないでよ!もういい」

帽子屋に頼るのは無駄だと判断した私は、自分から雪乃を目指して走り出、こういう場合!」

友達の一大事だっていうのに!

「だって俺、普段お茶会に必要な物以外持ってないし。大体、学校にナイフなんか持ってきちゃ駄目でしょ?常識だよ」

「バターナイフ持ち歩いている奴が常識とか言わないでよ!もういい」

帽子屋に頼るのは無駄だと判断した私は、自分から雪乃を目指して走り出した。

雪乃はもう既に、体の半分程、扉の中へ引きずり込まれていた。

それでも構わず、雪乃を引きずり出そうとした。

「雪乃、今助けるからね!」

「亜莉子…もういいから。あんたまで引きずり込まれちゃうよ?」

「そんなの駄目だよ!」
必死に引っ張っていると、雪乃は思いもしなかった方へと叫んだ。

しかも、自分の為じゃなく。

「服部君、弥生君!お願い、亜莉子を助けて!」



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招待状と不思議なお茶会24

「嫌に決まってる!」

私が返事した時にはそこには、帽子屋の姿はなかった。

「あれ?」

急に身体が楽になった。

不思議に思って、見上げると、帽子屋がナイフを持って私と扉の間に立っていた。

「アリスが嫌なら、連れていかさないよ」

帽子屋が私に背を向けたまま言った。

「ん?新たなお客さん」

意味がわからず、帽子屋の目線の先を見る。

そこには、雪乃がいた。

出入口で青ざめたまま座り込んでいる。

多分、私を迎えに来てくれたのだろう。

しかし、事態は最悪なことに、帽子屋に払われた蔓が新たな標的を見つけて雪乃に迫っていた。



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招待状と不思議なお茶会23

私は、即回れ右して逃げ出そうとした。

だが、

「きゃっ!?ちょっと、な、何これ」

それを阻止するかのように、扉の中から薔薇の蔓の様な物が、腕に足に絡み付いてきた。

「薔薇の蔓だよ」

帽子屋が答えてくれたが、そんな事解っている。
問題は、それが何故私に巻き付いて引きずり込もうとしてるのかって事。

実際、気持ち悪い。

「いやぁ!放してー!」

必死に叫んで、助けを求める。

「嫌?」




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招待状と不思議なお茶会22

2人は少し考えて、

「不思議の国だよ」

途方もない事を言い出した。

やっぱり、この人達おかしい。今更だけど…。

「あのー、やっぱり私、アリスじゃないですー」

怖ず怖ずと後退り。

んな訳解らない所行きたくない。

「怖いのかい?」

私は激しく頷く。

「…え~?もう扉が開いちゃったよぉ。後戻りできないよぉ」

気が付くと、目の前にいつの間にか大きな扉が現れていた。



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招待状と不思議なお茶会21

「次に、何故俺が君の思っている事に答えれたのか、という事。これこそ、君がアリスであるという1番の理由になる。」

「1番の理由?」

「そう、理由。解るのは俺だけじゃないんだよ。皆解るんだ、アリスの気持ちがね。だから、俺が君の気持ちを解るって事は、紛れも無く君がアリスって事なんだよ」

帽子屋は少しはにかんだ笑顔を見せた。作り物の笑顔じゃない。

なんだか、初めて見たような気がする。

「という事は、三…みつきも?」

「…直さなくても、三月ウサギでいいよぉ?僕もぉ、解るよ?アリス」

三月ウサギが私を見上げながら言った。

「ようするに、私はアリスで、それは運命で決まっていた。そして、その私が招待状を開けちゃったから、貴方達がここに来た。って事ね」

私が元凶なんだから仕方ない。

それを聞いて、2人はぱっと、表情を明るくした。

「そういう事だよ。やっとわかってくれたね」

「…じゃあ、行こぉ。お茶会に遅れちゃうよぉ」

2人が手を差し延べた。

が、私は一つ気になる事があった。

「あの、気になってたんだけど、お茶会って何処で開かれてるの?」




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招待状と不思議なお茶会20

「オマエはだから黙ってろ」

そう言って、三月ウサギの頭小突く。

帽子屋は物腰緩やかな割に三月ウサギには容赦がないようだ。

「…いったぁ!冗談なのにぃ」

痛がる三月ウサギを尻目に、帽子屋は話を元に戻した。

「まぁ、とにかく、俺にそんな能力はないよ」

「ちょっと…、三月ウ…みつき君大丈夫なの?」

私はというと、すごい音がしたからかなり心配なんだけど。

「…いつもの事だから大丈夫ぅ」

あー…、そっちから返事くるんだ。

「じゃ、気にせずに続けるけど…」

「どうぞ」

三月ウサギに言ったつもりだったのに、帽子屋が答えた。

…今度は、そっちね。

なんで話かけられた方が答えないんだろ。

「まぁ、いいわ」

「何が?」

「ううん、別に。とにかく、そんな力ないんだったらなんで私が思ってる事に普通に答えるのよ?後、何?間違いって」

「アリス、落ち着いて。そんなに一遍には答えられないよ」

帽子屋は私を宥める様に言う。

「まず、第一に君はアリスなんだ。封筒を開けようが開けまいがね。それはもう決まっている、運命だからね」

アリスっていう単語に反論したかったけど、何故か私は黙って聞いていた。



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招待状と不思議なお茶会19

昼休み。

雪乃とお昼ご飯にしようとしたら、例の2人に強制連行された。

そして、今は屋上にいたりする。

「で、何か用ですか?用がないなら帰るから」

そう無愛想に言ってのけた。

「相変わらず冷たいな。折角迎えに来たんだよ?もっと、こう優しく出来ないかなぁ」

密と名乗った帽子屋は、寂しそうな顔をして言うが、なんだかそれすらも嘘っぽい。

「そもそも!なんでイキナリ現れて、私をアリスなんて呼ぶのよ?」

いきり立つ私に、帽子屋はサラっと答えた。

「イキナリじゃないよ」

「は?」

「だから、イキナリじゃない。ちゃんと招待状を送ったよ。そして君が開けてくれたから、俺らは迎えに来れたんだよ」

「招待状?そんなもの受け取った覚えなんか…」
ん?招待状…。えっと、もしかして。

「それって…深紅の?」

血の気が引く音がする。

「そ。深紅の封筒」

やっぱり、勝手に開けた罰が当たったんだ。

「開けなきゃ、アリスって呼ばれる事もなかったって思ってる?それは間違いだよ」

帽子屋がニヤリと笑いながら言った。

「前々から思ってたんだけど、貴方って人の心読めるの?」

「ん?それはないよ」

「帽子屋さんがぁそんな芸当出来る訳ないよねぇ」




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