富士山と八方目 | 身体からの悟りを目指して ~ 少林寺拳法

身体からの悟りを目指して ~ 少林寺拳法

我孫子道院 道院長のブログ

昨日、道場に到着すると、道場の玄関 前の階段から富士山がきれいに見えました



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(こんな感じですが、肉眼ではもっと鮮やかに見えました 手前の水面は手賀沼です それにしても鉄塔が……)


いつもこんなにきれいに見えるわけではなく、くっきり見えるのは年に数回程度です

おそらく前日(9日)に初雪が舞って、すごく冷え込み、空気が澄んだのでこれだけよく見えたのでしょう


ワタシはしばらくその場で眺めてから道場に入り、門下生が来るのを待っていました


そして稽古が始まり、学科の時に

「今日は道場の前から、とてもきれいに富士山が見えたんだけど、道場に入る前にそれに気が付いた人は手を挙げて」

……(挙手をしたのは、たったの2名)

「二人だけ? すくないなぁ。ちょうど見やすい角度で見えるのに、富士山の存在に気が付かないなんて、“八方目”ができていない証拠。今日の基本は、八方目の修練からやろう」

ということで、八方目の修練をみっちりやってもらいました


※「八方目」とは、少林寺拳法ならではの、目の配り方のこと

 近接した状態で状態で、目を動かさずに相手の頭の先から手足の先、さらにはもっと脇まで視野に入れておく


宮本武蔵が五輪書の「兵法の目付といふ事」の項で

「目の付けやうは、大きに広く付くる目也。観見二つの事、観の目つよく、見の目よわく、遠き所を近く見、ちかきところを遠く見る事、兵法の専也」と記している通り、武道・武術の世界では、古から目配り、目くばせ、目利き、目が届く、等々を大変重視してきたわけだが、宮本武蔵もその目付に関しては、「工夫有るべし」「能々吟味これあるべきもの也」と書いてあるだけで、その具体的な鍛錬方法にまでは触れていない


その点、我々は、開祖がわざわざ教範等で「八方目の修練法」を教えてくださっているのだから、これに取り組まない手はないだろう


つい先日も、とある少林寺拳法以外の武道・武術関係者の方から、八方目という考え方とその具体的修練方法が少林寺拳法に伝わっていることを、すごく関心されました


八方目は、入門して一番最初に習うので(級拳士科目表を見ると、六級技術科目の「第一週」の基本諸法の中に「目配り」ときちんと書いてあります)、何となく当たり前というか、ありがたみがない(?)と思っているかもしれませんが、じつに大事な教えなので、決して軽視してはなりません


普段から気に掛けるとともに、やはり定期的にある程度集中して修練しないとだめなのでしょう


期せずして立派な富士山を拝めたことで、いい稽古のヒントを得ることができました


合掌



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これが道場の入口に至る階段(上から下まで全部数えると108段あります)

ここからちゃんと八方目で見ていれば、富士山の雄姿に気が付いたはずなのに……

ちなみに、八方目というと、上下左右そして天地方向の斜め、つまり垂直方向の四方八方への目配りが強調されがちですが、武道・武術家なら、前後左右そして斜めの水平方向への目配りも同じように気を配れることが肝要です


また、単なる視覚情報、視覚意識だけでなく、大所高所に立った高い目線、大局観、長期的視野も身につけなければなりません

上から目線? 大いに結構じゃあないですか(本当に的を射てさえいれば)

意識も目線も高く持ち、“お目が高い”といわれる人を目指しましょう!

(目線が低いから、富士山も見落としてしまったのでは?)



そうそう、「高い」といえば、道場のある「子の神大黒天」の境内には、このような大銀杏がありまして……


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きれいに色づいております

富士山にせよ、黄葉した木々にせよ、美しいものをたくさん見て、美しいものに触れ、美しいものを美しいと感じる美的感受性を育てて磨くことも大事な修行だと思います


なぜなら、物事の善悪・正邪は、法律書やルールブックで判断するのではなく、美醜によって判断するのが、人間本来のあり方だから


開祖が

「少林寺拳法はね、汚くても勝てばいいんじゃないのである。美しいというのがひとつの条件である。強いだけじゃいけない、美しさがほしい。強いけど優しさがほしい」とおっしゃられているのも、おそらくそういう理由だろう


というわけで、道場でも

「汚い」「ずるい」「卑怯」というのは拳士の三大タブーとして教えていて、他人から「汚い」「ずるい」「卑怯」といわれたら、無条件で負け! 言われた方が悪者であるということを、門下生に刷り込んでおります



おまけ



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寒さが厳しくなってきて、クルマのガラスに霜が……


本日の「身体の知能指数」 (PQ=physical quotient) 『105』