日時: 2022年4月2日(土) 15:00より
場所: 東京文化会館
指揮: マレク・ヤノフスキ
演奏: NHK交響楽団

ローエングリン: ヴィンセント・ヴォルフシュタイナー
エルザ: ヨハンニ・フォン・オオストラム
オルトルート: アンナ・マリア・キウリ
テルラムント: エギルス・シリンス
ハインリヒ王: タレク・ナズミ
王の伝令: リヴュー・ホレンダー
ブラバントの貴族: 大槻孝志、髙梨英次郎、後藤春馬、狩野賢一
小姓: 斉藤園子、藤井玲南、郷家暁子、小林紗季子
合唱: 東京オペラシンガーズ


3年振りに東京春祭の”ワーグナー・シリーズ”が実現して、感無量です!!

マレク・ヤノフスキ指揮するオーケストラは、精緻で緻密、よく引き締まり重厚感と緊迫感があります。
また、起伏に富み陰翳のあるドラマチックな演奏で、聴き応えがあり見事です。
御年83歳のヤノフスキによる指揮は、いつもながら快速テンポで推進力はあり爽快ですが、陶酔感は薄め。
普段はあまり演奏されないところも、ノーカットで演奏されています。
バンダは舞台の左右前後、そして舞台裏にあり立体感があります。
コンサートマスターは、白井圭さん。

歌手はやや小粒な感はあるものの、高水準です。

ヨハンニ・フォン・オオストラムのエルザは、清澄な美声で充実した歌唱力・表現力で見事です。
純真で清楚な佇まいですが、芯の強さが感じられます。
顔の表情の変化、身振り手振りで演技力もあります。
今までエルザというキャラクターはあまり好きではなかったのですが(^^;;、今回は共感できる魅力が感じられます。

アンナ・マリア・キウリのオルトルートは、妖艶で深くきれいな声質。
声量もあり、”悪”の凄みを漂わせ、手堅い歌唱です。
身振り手振りによる表現もよい。

第二幕のエルザとオルトルートによる二重唱の音楽がとても好き。
幸せに浸り信頼の大切さを唱える清らかなエルザ、憎悪に満ちたオルトルートの密かな呟き、この交錯の美しい調べに魅了されます。
悪役ながら、オルトルートにはオルトルートの”義”(?)があり、憐憫の情も感じられます。
オルトルートがエルザに”疑念”を起こさせる件は、イアーゴの”毒”さながら。

ヴィンセント・ヴォルフシュタイナーのローエングリンは、伸びやかですがやや潤いに欠ける声質で、全体的に少々硬い印象。
序盤、特に第一幕や「名乗りの歌」など不安定なところもあり、やや物足りないものの、まぁ健闘。
題名役としてのインパクトはやや薄く、楽譜に頼りきって余裕が無さそうですが、決して非力ではないでしょう。(←偉そう!??(^^;;)
第三幕のエルザとの二重唱や「別れの歌」は良い。
メガネのフレームがピンク色なのが印象的なオジ様騎士。(^^ゞ
(過去に聴いたローエングリンは、ルネ・コロ、故ヨハン・ボータ、クラウス・フロリアン・フォークトだからね…比較するのは気の毒かな。)

エギルス・シリンスのテルラムント、今回唯一知っている歌手、敵役としての迫力と名門の出自という格調高さがあり、充実した歌唱。
2018年の春祭でも同役を歌いっていますが、今回の方が敵役感が強く、より良い印象。

タレク・ナズミのハインリヒ王は、深くハリのある低音美声で、まだ若いようですが王としての風格があります。
リヴュー・ホレンダーの王の伝令、手堅い歌唱です。

合唱は、いつもながら充実しています。
新型コロナ対策により、間隔を空けて人数は少なめの様子。
第三幕での「婚礼の合唱」では男声合唱は舞台裏から、
舞台転換の際に舞台に登場して、後半の出陣を控えた「ドイツの国のためにドイツの剣を!」はより一層迫力が感じられます。

舞台背景にスクリーンを使用した映像演出を止め、通常の反響版を設置した純粋な演奏会形式上演です。
青色と白色の照明をメインにして、場面によってオレンジや黄色の照明で変化させて、舞台の雰囲気を表現。
シンプルですが、好印象です。



  

 

  

 

  

(写真は東京春祭公式Twitterより)



来年は、ヤノフスキ指揮による『ニュルンベルクのマイスタージンガー』を上演するとのこと。
コロナ禍で中止となった一昨年・昨年に予定されていた『トリスタンとイゾルデ』と『パルジファル』も、ヤノフスキ指揮で実現することを願っています。


ところで、エレーナ・ツィトコーワ(オルトルート)が変更になったのは、ロシアのウクライナ侵攻の影響なの!??
航空機の影響によるものなのか…???
政治絡みで(独裁者の支持者は別として)無関係に、ロシア人の海外活動に影響があるのは、とても残念なことです。



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この週の火曜日に、日帰り入院で右耳に鼓室形成術を受けました。
術後一週間は外耳道に詰め物をして、違和感・圧迫感があり、右耳は全く聞こえない状態でした。(>o<)(>o<)

主治医の先生からは、音楽会へ行くこと自体の許可をもらっていました。
「あまり楽しめないかもしれないけれど…でも、まぁ左耳があるからね」との言葉付きで。(^^;;
手術日の方が後から決まったのだから、楽しみにしていた春祭ワーグナー・シリーズなのだから、許可が出ているのだから、多少無理してでも行かねばなりません。(^^ゞ

片耳で生音楽を聴くことは、やはり日常生活の中で感じる以上に、違和感が大きいものでした。

・大音量のところでは、片耳だけでは刺激が強過ぎる
・ソロ部分など舞台のどの位置から音がしているのか分からないことがある
・休憩中の舞台裏でのパート練習が、何故か廊下の方から聞こえる気がする

・・・等々

音楽が進む中で少しずつ慣れていったものの、通常以上に気が張り、神経を使う音楽鑑賞となりました。
まぁ、入院・手術など気が滅入る日々を送った後の音楽会、それなりに楽しみ、充分に心の栄養とはなりました。

でも、同時に、万が一このまま回復しなかったならば、私の人生の楽しみが激減する…という恐怖心が湧いてきました。(>o<)(>o<)(>o<)

いやいや、大丈夫、大丈夫、快復するよ!!…と自分に言い聞かせつつ。