駒落ち 二枚落ち 福島順喜著 将棋独稽古について03(三番) | 将棋・序盤のStrategy ~ 矢倉 角換わり 横歩取り 相掛かり 中飛車 四間飛車 三間飛車 向かい飛車 相振り飛車 ~

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オールラウンドプレイヤーを目指す序盤研究ブログです。最近は棋書 感想・レビューのコーナーで、棋書の評価付けもしています。

三番

△6二銀 ▲7六歩 △5四歩 ▲4六歩 △5三銀 ▲4五歩
△4二玉 ▲5六歩 △3二玉 ▲4八銀 △5二金左 ▲4七銀
△7二金 ▲3六歩 △6四歩 ▲3七桂
(下図)


三番も、これまで同様2~4筋の歩を突いていく手法だけど、
一番二番 と違って銀桂の活用を急いでいる。

ちなみに、これまでの図はこれ。

この違いは何なんだろうねー・・・

単に「下手側の作戦はいっぱいあるんだよ」と言いたいのか、あるいは・・・

▲3七桂以下
△7四歩 ▲5八金右 △6三金右 ▲7八金 △6五歩 ▲6八銀
△7三桂 ▲6九玉 △8四歩 ▲2六歩 △8五歩 ▲2五歩
△6四金 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △7五歩 ▲同 歩
△同 金 ▲2六飛 △2三歩 ▲3五歩
(下図)

ここまで進んでみると、
一番二番 との違いは▲5七銀型か▲4七銀型か、という事と、
▲3五歩が遅れているため、△2二銀が入っていない事だ。

ちなみに、上図▲3五歩では▲7六歩と打つ方が手堅いと思う。
△同 金は▲7四歩なので△7四金と引くしかないのだけど、
この交換は下手が得だと思う(実戦心理も込みで)。

三番は、上図から△2二銀と上がる手順は書いておらず、
△9四歩と△8六歩が書かれている。

しかし△9四歩かー・・・(下図)

本文はここで▲9六歩と書かれているけど、▲3四歩が激痛だと思います。
以下△2二銀▲3三歩成△同 銀▲3四歩△2二銀のように進むと、
3筋の拠点が大きすぎて上手戦意喪失ですし、
△6六歩▲3三歩成△同 玉と進むのもひどいですからねぇ・・・

上図以下
▲9六歩 △1四歩 ▲1六歩 △8六歩 ▲同 歩 △2二銀(下図)

▲3四歩がある事を無視して9筋と1筋の歩を突き合っているので、
「▲3四歩は無い事になってるのかな?」と思いきや、
△8六歩の突き捨てを入れた後に△2二銀。

うーん・・・おかしいですよね?▲3四歩を受けてますよ・・・?

ちなみに上図は前回紹介した下の図に似ています。

一番 では、ここから△7五歩▲5五歩と進行したのですが、
△7五歩に▲同 歩△8六歩▲同 歩△7五金と進めば、
上記△2二銀の図とほぼ一緒である事が分かります。

ここから察するに、これまでの手順は、
△7五歩の仕掛けに▲同 歩と取る局面を作るためのものだったと考えます。
そのためには、△2二銀を省略して1手早く仕掛けなくてはいけなかった、と。
(▲3五歩を突かれてしまうと△7五歩に▲5五歩で良しとされていたから)

しかし、△2二銀を省略したために各所に違和感が残されてしまったんでしょうね。

ただ、それとは無関係の、別の違和感が以下の手順。

△2二銀以下
▲3六飛 △6六歩 ▲同 角 △同 金 ▲同 歩(下図)

△6六歩▲同 角と取ったのが狙いの一手で、
「角にて取る事定跡也」と明記されている。

上図からは△6三金と上がられて面倒な気もするが
「上手より角打所なし」「桂のかしらえ歩打手にて勝也」と解説されている。
なるほど、昔はそういう解釈だったのかもしれないな。

しかし、そもそも▲5七銀型だったら・・・?(下図)

▲同 銀と取られて明らかに損です。
▲同 歩でも良いけど、▲同 角とは絶対に指さない。

・・・一番・二番では▲5七銀型だったのに、
三番ではわざわざ▲4七銀型にし、
なおかつ、△2二銀保留などの違和感を残しながらも
上手に△6六歩と突かせている。・・・

という訳で、私の結論なんですが、
三番は▲6六同角を成立させるためのヤラセ手順
という事で良いと思います。

そうやって手順を見返してみれば、
全ての違和感に納得がいくんですよ。

3筋の歩を伸ばすのが早いと、
△2二銀と上がらないのが目立つので、
銀桂の活用を急いでカムフラージュ。
この時、どさくさに紛れて▲4七銀型も作っちゃってます。

続いて下図。

この手では、私は▲7六歩と打つ手が良いと書きましたが、
△7四金と引かせると△6六歩が消滅し、
▲6六同角の強手を紹介し損ねてしまいます。

・・・福島順喜さん、あなた▲7六歩を知っていましたよね?(笑)


で、

更に謎なのが、▲3五歩に△8六歩の変化です。
以下▲同 歩△8五歩で下図。

よくある継ぎ歩攻めですが、▲同 歩だとどうする予定なんだろう?
上手に一歩あれば△8六歩と垂らしますけどね。

・・・まぁそれは良いとして、
ここから将棋独稽古の定跡は▲4四歩!?(下図)

これは・・・意味が分かりません(苦笑)
4筋は上手の堅いところですし、
歩を渡したら8筋からの攻めが面倒になりますし・・・

しかもこの後、△同 銀に▲3四歩!!?(下図)

やっぱ▲3四歩に気付いてるじゃねーか。

こうなると▲4四歩△同 銀を入れてあるのが凄く違和感ありますよね。
単に▲3四歩と突いた方が厳しいに決まってますから。

これねー、言い方悪いかもしれないけど、
△2二銀と上がっていないマイナスを、
▲4四歩△同 銀を入れる事でごまかしてるように見えるんです。

▲4四歩△同 銀を入れているので、
上図からは△同 歩と取る手が当然有力ですが、
そこは丸っきりスルーして△2二銀が本手順となっています。以下

▲8五歩 △8六歩 ▲8四歩 △7六金 ▲7七銀 △8七歩成
▲7六銀 △8八と ▲同 金(下図)

にて「指し良し」だそうです。

まぁ・・・ここまで無茶苦茶な手順を書いてでも、
「△8六歩~△7六金とされても▲7七銀とぶつけて、角金交換は下手良し」
っていう事が伝えたかったんだと思うんですよ。

そう考えれば、謎の▲4四歩も、
△2二銀と上がっていないマイナスをごまかしつつ、
△8六歩と垂らす一歩を上手に与える、
一石二鳥の好手(?)になりますからね。

でも、これを本手順として据えちゃうのは、やっぱり違うんじゃないかなー?
この際ハッキリ書いちゃうけど、▲4四歩は悪手ですからね・・・

著者の福島順喜さんは、当時としては珍しくアマチュアで七段まで上り詰めた人物。
いくら当時の段位だからとは言え、この辺りの善悪くらいは分かっていたはず。

角金交換を怖がるな、という教訓は分かるんですが、
もう少し表現方法があったような、という気はしますよね。
まぁ、良書に恵まれた現代の視点ではありますが。

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