駒落ち 二枚落ち 福島順喜著 将棋独稽古について01(一番) | 将棋・序盤のStrategy ~ 矢倉 角換わり 横歩取り 相掛かり 中飛車 四間飛車 三間飛車 向かい飛車 相振り飛車 ~

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オールラウンドプレイヤーを目指す序盤研究ブログです。最近は棋書 感想・レビューのコーナーで、棋書の評価付けもしています。

敗者の弁

予定では、「将棊図彙考鑑を考える02(実戦編)」を書くはずだった。

はずだった、というより、かなりの量を書き上げたのだが、
定跡も完成されておらず、誰だか分からない棋譜を並べ続ける作業が、
想像以上に苦行過ぎて、とうとうギブアップした、という表現の方が正しい・・・

一応、収録されていたトップクラスと思われる棋譜は並べたし、
在野の棋士の棋譜もいくつか並べた。
当時としてはアイディアに富んでいたとも思っている。

しかし、将棊図彙考鑑に収録されている定跡は、
形ばかりを追っていて、意味付けがほとんど書いておらず、
定跡と棋譜を照らし合わせて考えてみても、
思想まで読み取るのは重労働だった。

将棊図彙考鑑までの定跡書は、仕掛けまで書いてある事すら少なく、
中途半端に駒組だけ教えられても、根底にある思想が読み取りにくい。
それで解説もほとんど無いとなれば、「重労働」と書いた意味も分かると思う。

それこそ、当時の棋譜を全て並べるくらいの気合が無い限り、
その時代の根底にある思想を理解する事は出来ないと悟った時、
ギブアップという言葉が頭をよぎった。
そこまでの将棋愛は私にはありませんでした。

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定跡書として、現代的な意味での面白さを感じるのは、
将棋独稽古(しょうぎひとりげいこ:將棊獨稽古)からだと思う。

将棋独稽古の画期的な点は、
仕掛けてから形勢がハッキリするまで手順が書いてある事。
そして「~にて、どちらが良し」と明言している事である。

「~にて、どちらが良し」と書いてあると、本当にホッとする(笑)
手順を見れば、どちらが良いか判断は出来るが、
明言してもらわないと、当時の判断と一致している自信が無いのだ。

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一番

手合割:二枚落ち

△6二銀 ▲7六歩 △5四歩 ▲4六歩 △5三銀 ▲4五歩

▲4五歩、いよいよ見参!という感じ。
これまでの定跡書では掲載が無かった。

上図以下
△4二玉 ▲3六歩 △3二玉 ▲3五歩 △2二銀 ▲2六歩
△5二金左 ▲2五歩
(下図)

▲2五歩まで進めるのは、現在では珍しい指し方である。

珍しいと言えば、上手の陣形も珍しい。
現在では△6三玉型がほとんどだから。
下手の攻め駒が2~4筋に集中してくる事を考えれば、
△3二玉型より△6三玉型の方が優っている。

また、現在△3二玉型を指すのであれば、金は5二より4二が多いだろう。
現在は、上手でも玉の安全度を意識するから。
ただし、△5二金型にも意味があり、後ほど明らかになる。
定跡草創期独特のバランス感覚が働いているようだ。

△7二金 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △2三歩 ▲2六飛
△1四歩 ▲1六歩 △9四歩 ▲9六歩 △7四歩 ▲4八銀
△6四歩 ▲5六歩 △8四歩 ▲5七銀 △6三金右 ▲3七桂
△7三桂 ▲5八金右 △8五歩 ▲7八金 △6五歩 ▲6九玉
△6四金 ▲6八銀上
(下図)


下手の囲いはカニ囲いで、これは現在も受け継がれている。
上部に備えるだけなら、カニ囲いは強固な構えだ。
(とは言え、工夫の余地は大いにあるとは思う)

上図からは△7五歩△6三金上が解説されている。

△7五歩以下▲5五歩(下図)

上図からは△7六歩と取る手しか解説されていない。
これは不思議な事で、△5五同歩も十分考えられるところ。
対しては、▲7五歩と取るくらいか(下図)

さて、以下どうなるか・・・

△7五同金には▲7二歩・▲5五角・▲2四歩があり、
上手が支え切る事は困難である。

ただし、△6三金上が面倒な応接で、
下手が攻めきれるか・・・(下図)


▲5五歩という仕掛け自体、上手の一番堅い所を攻めているから、
上手に中央を厚くされてしまう意味もあり、効率は良くない。
よって現在の定跡に比べ、より正確な手順が求められる。

上図からは▲4六銀と力を溜めるのが良さそうだ。
以下△6六歩と突かれる手が紛らわしいが、
▲同 歩△7五金▲6七銀で、下手が良い(下図)

▲6七銀は基本に忠実な一手で、下手とはかくあるべし、と思う。

次に▲7六歩と打てれば磐石。
上手が△7六歩と打つ手には▲5二歩△6二銀▲7二歩と進めて、
次の▲7一歩成~▲5一歩成が受けにくい(△4二玉には▲2四歩)。

▲5五歩以下
△7六歩 ▲同 飛 △7五歩 ▲3六飛 △5五歩 ▲3四歩
△同 歩 ▲7四歩
(下図)


△7六歩と取ってしまっては、
▲同 飛△7五歩▲3六飛が幸便過ぎる。
下手は一歩手持ちにしながら飛車の位置を整えており、
上手は何もしないよりひどい。

上図まで進んでは、十字飛車を含みに手が繋がる格好だ。

将棋独稽古には、
上図以下△6三金上と頑張る手が解説されているが、
▲7三歩成 △同 金 ▲4六銀 △5四銀 ▲4七桂 △6三金寄
▲5五銀 △同 銀 ▲同 桂 △5三金 ▲4三桂成 △同 金
▲4四歩 △5三金 ▲4五桂 △5二金 ▲4三銀 △同 金
▲同歩成 △同 玉 ▲2二角成
(下図)

で、下手が良い。

▲6八銀上以下
△6三金上
(下図)


△7五歩と仕掛けては、
後に▲7二歩や▲7四歩が生じて拙かった。

よって、上図△6三金上が本筋であり、
次章(二番)にも続く手である。

この手には、じっと▲3六飛と寄る。
以下△7五歩 ▲5五歩(下図)


上図から、
次章(二番)は△8六歩と△5五同歩を解説しているが、
本章では△7六歩と取る手のみ解説している(下図)


上でも書いたけれど、△7六歩と取ってしまうと、
▲同 飛と取られて上手に得が無い。
7筋の歩が切れて困るのは、上手の方だ。

上図以下
▲同 飛 △7五歩 ▲3六飛 △5五歩 ▲7二歩 △6二銀
▲3四歩 △同 歩 ▲4六銀 △5四金上 ▲7一歩成 △同 銀
▲7四歩
(下図)


という訳で、▲7二歩▲7四歩と、
7筋で歩の手筋を気持ち良く食らってしまった。
上図は上手を持ってどうしようもない。

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