人類の物語 Unstoppable Us ヒトはこうして地球の支配者になった | 空想俳人日記

人類の物語 Unstoppable Us ヒトはこうして地球の支配者になった

 あの偉大な名著『サピエンス全史』を著わしたユヴァル・ノア・ハラリ氏の、小学生から読める人類史だ。ボクは、『漫画サピエンス全史 人類の誕生編』と『漫画サピエンス全史 文明の正体編 』で理解してるだけだけどね。「物語」は、歴史でもあるが、もひとつ、ホモ・サピエンスの特徴、想像力で「虚構」、つまり「フィクション」を創り上げる。その「物語」でもある。
 ホモ・サピエンスの特徴、一言で言えば、『一人の手』だ。

♪ひとりの小さな手
 何もできないけど
 それでも みんなの手と手をあわせれば
 何かできる 何かできる♪

 これは、いいことばかりじゃない。例えば、一人では何もできないくせに、寄ってたかってイジメることはできる、ことも。
《私たち人類はライオンほど強くないし、イルカほどうまく泳げないし、空を飛べる翼だってもっていない! それなのに、いったいどうやって、この惑星を支配できるようになったんだろう?》
 それは、みんなで協力し合って、ライオンより強い武器を作り、イルカより速い船を作り、飛行機やロケットで飛ぶこともできる。
 しかしだ、相変わらず、一人一人は、ライオンよりも弱いし、イルカより泳げないし、空も飛べない。
 何故に、動物の一種だった人間は、そうじゃなくなった? 沢山の人類がいたのに、ホモ・サピエンスだけになった。それは、協力のおかげだ。人類一人一人で言えば、ネアンデルタール人のが強くて賢かったと言われる。しかし、ネアンデルタール人をはじめ、たくさんいた人類はホモ・サピエンスに追い出され、葬られた。
 この遺伝子が、現代のボクたちにも続いているとすれば、企業や国や宗教が、他を受け付けず許さない、そういうのも頷ける。

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人類の物語 Unstoppable Us ヒトはこうして地球の支配者になった03 posted by (C)shisyun

【もくじ】
はじめに そもそも、人類って何?
第1章 人類は動物だ
第2章 サピエンスのスーパーパワー
第3章 私たちの祖先の暮らし
第4章 動物たちはどこへ行った?

 ここで描かれてるのは、農業革命以前のホモ・サピエンスの歴史だ。なので、『ホモ・サピエンス全史』の途中までだ。地球上のあらゆる生物と同じだった人類が、あらゆる生物を支配し地球を牛耳るホモ・サピエンスの歴史の、多くの別なる人類を駆逐し、地球上の重要な動物たちを絶滅させたホモ・サピエンスで終わる。
 ここには、後の農業革命によるホモ・サピエンスの定住やら土地の拡大が帝国当為領土拡大、そして、何を信じればいいかで生まれた宗教、当初はアニミズムといって、全ての生き物に精霊が宿る、万物八百万代の神だったことが、一神教崇拝、これが現代まで、争いを生んでいるのだが、そこまでは描かれていない。
 小学生には難しいかもしれない、でも、巻末に書かれてる、引用したい。
《この本では、私たちの祖先がどのように世界でいちばん強い動物になったのか、ネアンデルタール人やデニソワ人や、そのほかのいくつかの種類の人類がいなくなるなか、どのようにして世界じゅうに広がっていったのか、世界のたくさんの動物たちをどのようにして絶滅に追いやったのか説明してきた。》
 でも、この説明からすれば、ホモ・サピエンスは、ネアンデルタール人やデニソワ人を駆逐するように、今も、残ったホモ・サピエンス同士がユダヤとキリストとマホメッドで、争ってるではないか。この本は、そこまで言及していない。

 ただ、この本は、
「第1章 人類は動物だ」で、ボクたちは、もともと、他の動物たちとは何も違いがないことを語りながら……。

人類の物語 Unstoppable Us ヒトはこうして地球の支配者になった04

「第2章 サピエンスのスーパーパワー」で、他の人類を駆逐し、地球上のあらゆる生物の頂点に立つ物語が展開する。物語とは、人類の歴史の話ということだけでなく、ホモ・サピエンスは物語を紡ぐのだ、ということ。これは、『サピエンス全史』における虚構でありフィクションである。フィクションから生まれた現実、これを小学生に理解させられるかなあ。
 それを理解してくれたとして、話は進む。石器時代の採集人類が美しい。確かに、ボクたちホモ・サピエンスは、虚構を現実化して、信頼と契約のもとに、今日までの社会国家を築いてきた。でも、それも単に物語の虚構とすれば、ネアンデルタール人やデニソワ人が日々の中で、ホモ・サピエンスを愛したとすれば……。
 事実、DNA鑑定で、ボクたちホモ・サピエンスの遺伝子の中に、ネアンデルタール人の遺伝子がある。
 ちなみに、ここでマクドナルドやグーグルなどの会社の話が出てくるけど、その「物語」性は、国家にも置き換えることができる。

人類の物語 Unstoppable Us ヒトはこうして地球の支配者になった05

「第3章 私たちの祖先の暮らし」で、それが語られている。
 ここで、宗教は、当時、「精霊」という言葉で語られている。美しいし、これが本来の信仰ではないか、思う。信じられるのは、尊厳な人の神だけ、この単一崇拝の考え方が、ユダヤ、キリスト、イスラムでの争いを生んでいる。しかも、この3宗教のもとは、同じ神なのだ。なのに、エルサレムで、イスラムとイスラエルが仲良くできないのか。勿論、領土を両者に認めた二枚舌のイギリスが悪いのだが、ホモ・サピエンスのDNAが、かつてネアンデルタール人やデニソワ人を駆逐したように、今も残ってて、お互い、イエスだマホメッドだ、言ってる喧嘩でしかない。いやいや、喧嘩でも世界情勢では大変だ。プーチンの「ウクライナももとはロシア正教」などというプーチンも、ロシア正教の元はギリシャ正教であり、正教は「自分が一番正しい」というだけのことで、カソリックやプロテスタントよりも、遅れてるよね。

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「第4章 動物たちはどこへ行った?」
 この章で、やっとホモ・サピエンスの原罪をズバッと語ってる。
 オーストラリアでの先住動物を壊滅さえ、アメリカ大陸でも先住動物を壊滅させている。
 そして、現代のシロナガスクジラに焦点を当てている。いや、それはそれで、間違いないけど、ボクは、農業革命以降の家畜の問題の方が大事じゃないか、思う。
 ただ、彼は、ここで、小学生向けの筆を握っているわけで、彼らに、「未来は変えられる」が言いたいのだろう。農業革命による家畜(動物がラインに乗って流れていく)は、もうどうしようもないかもしれない。
 でも、やっぱ、ちょっと物足りない。彼が凄いと思うのは、平気で、当時のホモ・サピエンスの遺伝子が、今の宗教間での中東の争いや、その他の民族紛争をも、引きずっている、そういう観点でボクは観てるから、この本は、余計に物足らないのだ。
 ただ、もし小学生に読んでもらえれば、そう、小学校の教材にこの本を使う先生が出てくれば、それは素晴らしいことだと思う。

人類の物語 Unstoppable Us ヒトはこうして地球の支配者になった07

 この本の最後に
《私たちの祖先はまだ自動車も、飛行機も、宇宙船も作ることはできなかった。」まだ文字を書く方法も知らなかった。まだ農場も町ももってなかった。コムギの育て方も、パンの作り方さえ知らなかった。では、こうしたことのすべてを、どのようにして学んだのだろう?/ それはまた、まったく別の物語だ。》
 と書かれているように、ここには産業革命も登場しない。農業っ久米井もまだ登場しない。『サピエンス全史』のほんの走りだ。
 この本とほぼ同時に、ボクは、『まんがでわかる サピエンス全史の読み方』も読んだ。このマンガも、小学生に読んで欲しいなあ。国家が推奨する画一的教育に偏らないためにも。


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