安部公房生誕100年記念 『笑月流Abe-ism』再録 | 空想俳人日記

安部公房生誕100年記念 『笑月流Abe-ism』再録

 かつてHPに「笑月流公房倶楽部」というサイトを立ち上げていて、今は閉鎖してるんですが、安部公房生誕100年を記念して、その中の『安部公房のポスタリゼーション』を、ここに再録します。以前UPした「生誕100年記念『安部ッ句「棒」考』再録」「生誕100年記念『安部公房作品体系図』再録」「生誕100年記念『安部公房のポスタリゼーション』再録」「生誕100年記念『安部公房と私』再録」「生誕100年記念『私は安部公房スタジオ会員だった』再録」「生誕100年記念『オマージュ「棒のエチュード」』再録」「生誕100年記念『笑月流一千一句拾遺集』再録」の第8弾。


笑月流Abe-ism

もし、安部公房が今も生きていたなら・・・、
ただ、昔のような彼の作品のよき理解者がいないけど、
でも、作品は読まれなくても考え方だけは伝えたい、
ほら、そんなのいかんでしょうが?
でも、こういうやり方もあるかなあと思って、
ただ、伝わらないことの方が多いかもしれない。
もし、誤解されたらどうしましょう。



【分別人間回収】
かつてゴミはゴミの時代があった。
今や、分別ゴミ回収といって、
燃えるゴミ、燃えないゴミ、リサイクルできるゴミなどに分けるけど。
ゴミのような人間は、
いつになったら、燃える人間、燃えない人間、リサイクルできる人間に
分けられるようになるのだろう。


【都市再生企業】
都市の機能が動脈硬化を起こしている。
人間の動脈硬化を医療で解決するように、
都市の動脈硬化の再生はどこがするのであろうか。
ただ、人間の動脈硬化と同じように、
都市の動脈硬化も再生するためには、
スリムにしなければいけないのだろう。
なのに、あいかわらず、都市を考える人々は、
スリムどころか、どんどん肥大化させようとする。


【国家治安維持法】
国を安定させるには治安が大事である。
でも、治安部隊をたくさんつくるためには
治安する対象がたくさん必要である。
国を治安するべき人を増やしているのは、
その国の人々ではない人々の行動が重要なのであり、
多国籍軍の襲来が必須なのか、
そこには国際社会が形成されることのお題目に、
異国の人々の働きが必要なのである。


【顔面蒼白】
顔色は色艶があるほうがいい。
でも、白い方がアングロサクソン系には歓ばれる。
だから、顔はいつも白く化粧するべきなのかもしれない。
でも、余りにも白くすることが善と成される行為が充満すれば、
黄色や黒色は悪とならざるをえない。
それこそ、顔面蒼白である。


【緑を増やそう運動】
人を排除しても緑を大切にする思想。
いらない人間をカットした費用で植物を育てる運動。
その運動のおかげで、人間が植物になろうとしている人々がいる。
白色や黒色や黄色にたいし、緑色の人類が増えている。


【心は砂の中に】
仙人掌にも心があると言う。
砂という、人が生きるには相反する場所で、
人々が大いなる心を育てているという。
砂を集合でしか捉えられないこれまでの人種とは異なる、
一粒一粒の砂に心を感じられる人間の正体であるという。


【ヒットパレード】
ヒットしたモノやコトのオンパレード。
例えば、オープンカーなどにヒットメーカーが乗って行列をする、
その沿道でパレードに向かって悲鳴をあげて応援をする人々。
応援がなければパレードは成り立たない。
そして、パレードを心から楽しむ人は
オープンカーに乗る人が自分ではないことを知っている。


【時代は変わる】
時代はいつも嘘つきである。
嘘をつくから、本当か? と懐疑を持ち出す。
分からないから、仮説を作る。
嘘だと思える未来を仮説にするから、
今日の真理を未来が塗り替えてくれる。
だから、時代は変わる。


【ノアの難破船】
ノアは、生命を続けるべき生命体を選んで
方舟に乗せた。
選ばれた人と選ばれた動物たち。
選ばれたのは、さらに難破するために。
試行錯誤の難破船は、
水中に生きられない地上生命体を乗せた。
溺れるものは藁をも掴む思いで
水中生物になる。


【人間失格】
バベルの塔のてっぺんを目指して、
ピラミッドの頂点に立つ人たちは、
いかんせん、三角形の底辺であることよりも、
三角形の頂点であることしか求められなかった。
その頂点は、どんなに高くても低くても、
一点でしかなく、
さらにいかんせん、
底辺の広さも得られなかった。


【民主主義】
共に生きることは失敗し、
自由に生きることは成功した。
それは民の主張であると皆が賛同した。
賛同したからそうなったのだろうか、
いな、誰もが、そうでありたいという幻想を求めて、
成功することを生きる糧にして
必死にがんばっているから。 そして、必死である必要性が幻想であることも分かっているのに。


【壁になりたい】
出来るのなら、
世の中の真ん中を思い切り駆け抜けるような
風になりたいと思う。
でも、いつも風のように疾駆できるわけじゃなく、
壁にもたれて、安らぎたい。
それは怠け癖ではなく、
壁になりきって、その部屋にいる人々を眺め回したいということ。
でも、そんな消極的なことを、誰が言い切れるだろうか。
壁になることは、風になるよりも、
確固としていなければならない。


【変身】
みんな変わるのならば、今よりもプラスでありたい。
プラスとは、今をゼロとすれば、マイナスではない方向。
能動的なプラスは、今よりもプラス、行動的。
「へんし~ん」と言って変わる姿は、
正義の味方、かっこいい、魅力的、高い評価!
そんな変身よりもザムザになること、棒になること、デンドロカカリヤになること、
その変身の方がいかに人間的であるか、
そして、そこをゼロとした方のが、
人間らしく生きられることを知るべきだと思う。


【異常性的人間】
私は女である。僕は男である。
また、同じ性でありたいと思うよりも、
異性でありたいと思うこと。
雌雄同体の完結性。
それがいつまで得られない限り、
雌雄どちらかの単一機能しかない不完全人間、
不完全な異常性的人間であることには間違いない。
だから偏執狂的に異性を求め、
たえず欲求不満であるのだ。
異性と同様、緑を求めるのは、
呼吸をしながらも光合成が出来ないからだ。


【球体依存症】
丸いことが好きだよね。
地球も丸い。人間関係も丸くありたい。
でも、なんだかんだいいながら、喧嘩もよくする。
人間は、生命の摂理、弱肉強食から脱却は出来ない。
それを狭い人間社会に置き換えている長い歴史があるのよね。
でも、丸くありたい。平和でありたい。
簡単だよね。丸いなんて、理想であって、現実は難しい。
一番容易い、丸くあること。
それは、多角形の究極。
たくさんの角がある角形、それが究極の円だよね。
たくさんの角があることをNoではなく、Yesとしよう。

 以上、2003‎年‎9‎月


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