生理(月経)は女性にとって重要なことです。その生理の周期的変化を理解すると、健康管理や自己理解に役立ちます。
この記事では、生理の基本的な情報やそのメカニズムについてお伝えします。
始めに、子宮について
女性は、おへそから指3本分下のところに子宮という、鶏の卵くらいの大きさの、将来、子供を育てる場所をもっています。さらに赤ちゃんの種の半分にあたる卵子という、卵のようなものが入っている2~3cmの大きさの卵巣というものを、子宮の左右に1つずつ持っています。卵子は産まれた時には卵巣に既に準備されており、個人により数は決まっています。
生理(月経)の基本知識
生理(月経)とは…
①子供をそだてるための準備
②健康を維持するための機能
③不要な組織を排出するためのもの
①子供をそだてるための準備
女性の子宮は、赤ちゃんが育つ場所です。女性の身体は毎月、卵子を育て、子宮の内側を厚くして赤ちゃんをそだてる準備をしています。卵子と精子が出会わなかった場合、その準備をリセットするために、厚くなった子宮の内側(内膜)を身体の外に出すために出血がおこり、それを「生理(月経)」と言います。
②健康を維持するための機能
月経はホルモンのバランスを保つためにも重要で、月経周期を通して、身体が正常に働いているかを知る目安になります。
③不要な組織を排出するためのもの
卵子が受精せず、妊娠が成立しなかった場合に、身体は厚くなった子宮内膜を身体の外へ出す必要があります。これが月経という出血として現れます。
また別の視点でみると、月経はデトックスになります。月経で出血する事で、新しい血液を作る必要性ができ、新陳代謝を促すからです。更に月経中は下痢になりやすく、不要な糖分や脂肪分を排出します。
月経周期(生理周期)とは…
月経には月経周期と言われる単位があります。月経の始まった日から、次の月経が始まる前の日までのことをいい、1人1人違います。通常28日周期で起こりますが、個人差があり約25~38日の幅があります。そのうち月経はだいたい5~7日続きます。
この周期の中で、身体は二つの性ホルモン(卵胞ホルモン、黄体ホルモン)の作用により卵子を育てたり、子宮の内側を厚くします。
月経周期には4つのサイクルがあり、「①月経(出血)→②卵子がそだつ→③卵巣から卵子が放出される→④受精しなければ再び月経」という赤ちゃんを育てるための準備をし、健康を保つための自然なプロセスです。
月経の各期
①月経期(1日目~約5日目):月経(出血)
- 身体的変化:月経が始まる時期で、子宮内膜がはがれ落ちて、出血します。子宮が収縮するため腹痛や腰痛、不快感を感じる女性が多くいます。卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)の量が低下して、気分が不安定になる事もあります。
- 感情的変化:イライラしたり、疲労感を感じることが多いです。痛みの軽減と共に、徐々に気分も改善していくケースが多いです。
②卵胞期(約6日目~14日目):卵子がそだつ
- 身体的変化:月経が終了すると、卵巣からのエストロゲン分泌が増加し、卵胞がそだち始め、成熟します。子宮の内側(子宮内膜)が再生し、厚くなっていきます。この時期は体温が通常よりも低めで、身体は活動的になることが多いです。
- 感情的変化:エネルギーが増し、気分が明るくなる人が多いです。社交的になり、活動的になる傾向があります。
③排卵期(約14日目):卵巣から卵子が放出される
- 身体的変化:卵子が卵巣から出ることを排卵といい、排卵が起こると、卵胞が破れて成熟卵が放出されます。この際、一時的に体温があがります。また、エストロゲンのピークにより、子宮内膜はさらに厚くなります。
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感情的変化:この時期は自身が高まり、性的欲求が増すことがあります。これは受精のチャンスを増やす、生き物の生存本能といえるかもしれません。また、思考がクリアになったり、集中力があがると感じる女性もいます。
④黄体期(約15日目~28日目):受精しなければ再び月経
- 身体的変化:卵胞が破れた後、黄体が形成され、プロゲステロンが分泌されます。子宮内膜は受精卵を受け入れる準備をします。体温は高めに維持され、妊娠しなかった場合は、プロゲステロンが減り始め、次の月経の準備が始まります。
- 感情的変化:月経前症候群(PMS)の症状(イライラ、頭痛、疲労感など)が現れることがあります。この時期は感情の変化が激しくなることがあります。 対策として呼吸法などを取り入れると、心が落ち着きやすくなります。
一般的な症状:
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腹痛や腰痛:子宮内膜が剥がれ落ちる際に、子宮を収縮させるプロスタグランジンというホルモンが過剰に分泌されることと、子宮自体が収縮することで起こる痛みです。
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気分の変化:ホルモンの影響で、イライラや疲労感を感じることがあります。
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頭痛:ホルモンバランスの変化により、血管が収縮・拡張されることでおこります。
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むくみ:プロゲステロンは体内の水分保持を促進するため、むくみを起こすことがあります。
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胸のはり:生理前にエストロゲンとプロゲステロンが増加して、乳腺が刺激されて胸が張ることがあります。またプロゲステロンの影響で体内の水分保持が促進され、胸の張りを感じることがありま胸の張りを感じることがあります。
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吐き気:ホルモンバランスの変化と生理痛、食欲の変化により起こります。
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冷え:月経周期に伴い、プロゲステロンが増えると、体温が一時的に上昇する事があります。その後、月経がはじまるとプロゲステロンが減り、体温が下がりやすくなるために起こります。また月経前や月経中はエストロゲン量が変化し、血管が収縮しやすくなるため、血行不良が起こり、冷えを感じやすくなります。
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便秘:月経前にプロゲステロンが増え、腸の動きが鈍くなることがあり、これによって便秘が引き起こされます。また月経前や月経中は食の好みが変わり、偏食になる場合もある為、食物繊維が不足して便秘になることもあります。
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下痢:月経中にプロスタグランジンが増え、腸の動きが促進され、腸が刺激されるために、下痢を起こすことがあります。月経前後に食の好みが変わり、甘いものや脂っこいものを摂ると腸が敏感になり、下痢を起こすことがあります。
- 月経前症候群(PMS):月経前の1週間から10日間にわたって現れる、身体的、情緒的、心理的な症状の総称です。その症状は月経開始とともに軽減または消失することが特徴です。医学的には次の条件を満たす場合を言います。
- 時期(月経開始の約1~2週間前に症状が現れる)
- 症状の種類(頭痛、腹痛、浮腫みなどの身体的症状、不安、抑うつ、イライラなどの情緒的症状が含まれる)
- 日常生活への影響(症状が日常生活や社会的活動に影響を及ぼす程、重症である)
月経に関係する症状の対策:
食事の見直し…
- バランスのとれた食事:果物、野菜、良質なタンパク質を意識して摂りましょう。
- オメガー3脂肪酸:炎症を抑え、ホルモンバランスの調整をしてくれます。サーモン、マグロ、さば、亜麻仁油、くるみなどに多く含まれています。
- カフェインや塩分:過剰なカフェインや塩分は痛みやむくみを悪化させる可能性がある為、控えましょう。
- ビタミンB群:エネルギー代謝を促進したり、ストレスを軽減してくれます。玄米、全粒粉パン、豚肉、卵黄、チーズなどに多く含まれています。
- マグネシウム:生理痛や浮腫みの改善と気分を安定させる効果が期待できます。ほうれん草や豆腐、納豆などに多く含まれています。
- 鉄分:月経による貧血の予防やエネルギーの生成を助けてくれます。赤身の肉、イワシ、あさり、ほうれん草などに多く含まれています。
- ビタミンE:抗酸化作用があり、ホルモンバランスを整える効果があります。アーモンド、オリーブオイル、ほうれん草、アスパラガスなどに多く含まれています。
- 食物繊維:消化改善、便秘解消に効果があります。玄米、オートミール、黒豆、リンゴ、バナナ、ブロッコリー、キャベツ、ニンジンなどに多く含まれています。
- カルシウム:筋肉(子宮)の収縮を助けたり、ストレス軽減効果があります。牛乳、ヨーグルト、ブロッコリーなどに多く含まれています。
- アルコール:睡眠の質を下げてしまうため、控えましょう。
水分補給…
- 十分な水分補給:適切な水分補給は便秘解消だけでなく、むくみや生理痛を軽減することができます。温かいハーブティーがおすすめです。
- 冷たいもの・甘いもの:生理痛の痛みやむくみを悪化する可能性があるので、月経期間中は控えましょう。
運動習慣…
- 定期的にウォーキングやストレッチ、ヨガなどの軽い運動を行うと、血行が促進され、痛みの軽減や消化機能の改善につながります。
ストレスの管理…
- リラクゼーション法:ストレスはホルモンバランスにも影響を及ぼすため、深呼吸や瞑想、アロマテラピーなどでストレスの軽減をはかりましょう。
睡眠…
- 十分な睡眠:規則正しい生活リズムを心掛け、十分な睡眠を確保しましょう。良質な睡眠は身体の回復を助けます。
温熱療法…
- 身体を温める:ホッカイロや電子レンジで温めるタイプのホットパックを利用して、腹部を温めると血行がよくなり、生理痛がやわらぎます。また、温かい飲み物をとるのも良いでしょう。月経期間は特に、温かい湯舟に浸かるようにすると、血流の改善の他に、ストレス軽減効果も期待できます。
薬…
- 鎮痛剤:用法用量をしっかり守って使用して下さい。鎮痛剤は安易に長期間使い続けると、不利益な状態を招くことがあります。生理痛に隠れて他の病気を見逃してしまったりする事があります。
3.医療機関を受診する場合
これまでの対策を試しても生理痛や月経前症候群(PMS)が酷い場合、大事な試験や会議、旅行など、どうしてもやむを得ない場合には、医療機関を受診することをおすすめします。
受診の際は、月経周期、どんな症状がいつ頃からでるのか、どのような対処方法を望んでいるのか(一時的な服薬、長期的な治療、現状の把握など)、試験日や旅行の日程が既に決まっている場合には、出来るだけ早く受診することをおすすめします。早めの受診は治療や対処方法の選択肢をひろげてくれます。
4.健康相談の重要性
個別相談の利点
過去の病歴、服用中の薬、生活習慣を踏まえたうえで、一人一人にあったライフスタイルや体質に沿った解決策をみつけることができます。また、医療機関を受診する際に、どんな準備をしておくとよいのか、医師への質問の仕方など、自分にあった治療法を選択するためのアドバイスを得られます。