ベネズエラ大統領選に不正はなかったのか、中南米に忍び寄る中国とロシアの影 | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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  南米のベネズエラでは、7月28日に大統領選(任期6年)が行われたが、選挙管理委員会は現職で反米左翼のニコラス・マドゥロ大統領(61歳)が当選したと発表した。これに対して、野党は選挙に不正があったと非難し、野党支持者を中心に街頭での抗議活動が展開されている。

 選管の発表によると、集計率80%の段階で、マドゥロが51.2%、野党候補のエドムンド・ゴンザレス(74歳)が44.2%であった。国民的人気のある野党指導者のマリア・コリナ・マチャド議員は、マドゥロ政権によって公職から追放され、最高裁もそれを追認した。そこで、既に立候補を登録済みだった泡沫の元外交官のゴンザレスを野党統一候補としたのである。

 調査会社ORCコンスルトレスの調査(7月5〜13日)では、ゴンザレスが59.6%、マドゥロが12.5%で、さらにデルフォスが7月17日に発表した世論調査では、ゴンザレスが59.10%、マドゥロが24.60%であった。また、アメリカのエジソン・リサーチの出口調査では、ゴンザレス65%・マドゥロ31%、地元の調査会社メガナリシスによる出口調査では、ゴンザレス65%・マドゥロ14%であった。

 そのため、選挙に不正があったという観測が強まっている。マドゥロ政権は、国際的な選挙監視団の受け入れを拒否している。

 選挙結果について、アメリカと中南米諸国が加盟する「米州機構(0AS)」は認められないとしている。野党候補勝利というOASの断定には、左派政権のブラジルやコロンビアやメキシコは批判的であるが、開票結果を公開して透明性を確保すべきだと主張している。

 これに対して、ロシアや中国はマドゥロ大統領の勝利を祝福している。

 アメリカの裏庭である中南米で、メキシコでは2018年に、アルゼンチンでは2019年10月に、チリでは2021年11〜12月の大統領選で、コロンビアでは5〜6月の大統領選で、ペルーでは、2021年4〜6月に大統領選で、ボリビアでは2020年10月の大統領選で、ホンジュラスでは、2021年11月の大統領選で左派が勝っている。ブラジルでも、2022年10月の大統領選で、左派で元大統領のルイス・イナシオ・ルラ・ダシルバが、右派で現職のジャイル・ボルソナロに競り勝った。

 中南米では、ブラジルのような左翼政権が次々と生まれ、アメリカの影響力が低下してきていた。中南米ではGDP上位6カ国全てが左派政権となったのである。以上は穏健な中道左派であるが、キューバ、ニカラグア、ベネズエラは反米色の強い左派政権であり、ロシアや中国が強い影響力を行使している。

 ところが、アルゼンチンでは、2023年11月の大統領選で、下院議員で右派のハビエル・ミレイが、与党連合の中道左派セルヒオ・マサ経済相に勝利した。先述したように、中南米ではGDP上位6カ国全てが左派政権であったが、このアルゼンチンの政権交代で1カ国減ったのである。

 アルゼンチンで右派の親米・反中国の政権が誕生したことは、中国にとってはマイナスである。前の政権は、習近平が主導する「一帯一路」にも参加していたが、ミレイは「共産主義者とは取引しない」という。また、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの「BRICS」は8月に、参加国の拡大を目指し、アルゼンチン、エジプト、エチオピア、イラン、サウジアラビア、UAEの6カ国が新規参加することを決めた。しかし、ミレイは、これに参加しないと明言したのである。

 中南米をめぐって、西側民主主義陣営と中国やロシアのような権威主義国家群との間の熾烈な勢力争いが今後も続いていく。