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 フランス国民議会(定数577)選挙、6月30日に行われた第1回投票では、極右の国民連合(RN)とそれに連携する勢力が33.2%で首位、左翼連合の新人民戦線(NFP)が28.0%、マクロンの与党連合が20.8%で3位であった。

 そこで、7月7日の決選投票ではRNが第1党となると予測されたが、実際は、1位が左翼連合で182(+33)議席、2位が与党連合で168(−82)議席、3位がRNで143(+55)議席となり、世論調査も大きく外れた。

 その結果、どの会派も首相を出すだけの議席数(過半数は289議席)を持っておらず、統治不能な「宙づり国会」になってしまったのである。

 今回の国民議会の選挙の結果生まれたのは、保革共存ではなく、左翼、中道、極右の3つの勢力が拮抗する状況である。この3政治勢力は不倶戴天の敵どうしであり、手を組むことはできない。つまり、多数派の形成は不可能なのである。

 移民排斥を主張するなど、極右のRNは「自由、平等、博愛」というフランス共和国の理念に反するとして、左翼連合も中道右派の与党連合も拒否する。

 また、左翼連合は、「不服従のフランス(LFI)」、社会党、共産党、環境政党から成るが、最大勢力を持ち、ジャン=リュック・メランションに率いられるLFIは、これまでマクロン政権を厳しく批判してきた。特に年金受給年齢の引き上げなどの財政健全化に反対してきたので、マクロン大統領は、彼らと組むことはない。

 そこで、マクロンは新首相の任命に苦労することになり、パリ五輪を理由に政治休戦し、2ヶ月間もの間人選に苦慮し、首相候補として20人以上の名前が出た。そうして、やっと9月5日にミシェル・バルニエを首相に任命したのである。それまでは、7月16日に辞表を提出したアタル首相が暫定首相として職務を行ってきた。

 バルニエは、第5共和制史上最高齢の首相で、73歳である。バルニエは、旧ドゴール派で保守の共和党に属する。共和党は、先の国民議会選挙で、第4位の47議席を獲得している。

 バルニエは、シラク大統領時代にジャンピエール・ラファラン内閣で外相(2004年3月31日〜2005年3月31日)、サルコジ大統領のときにはフランソワ・フィヨン内閣で農業・漁業内閣(2007年7月19日〜2009年7月23日)を勤めた。

 2016年6月23日、イギリスは国民投票でEUからの離脱を決定したが、バルニエは、Brexitをめぐる交渉に関してEU側の首席交渉官に就任した。また、2021年1月には、フォン・デア・ライエンEU委員長の特別顧問になり、イギリスとの貿易協力協定の成立に尽力した。

マクロンは、このような経験や人脈の豊富なバルニエに国民議会をまとめることを期待したのである。

 しかし、第一党となった左派連合は猛反発し、街頭に出て抗議活動を展開している。左派連合が国会に内閣不信任案を提出することはほぼ確実であるが、国会は解散してから1年間は解散できない。新首相にとっては苦しい舵取りとなろう。 

 フランスの政治混乱が、ヨーロッパのみならず、世界に大きな影響を与えることが懸念される。ドイツでも、先の地方選挙で移民排斥を唱える極右が躍進し、ショルツ政権は苦しい立場に追いやられている。EUの中核であるフランスとドイツの今後の政治状況の展開を注視したい。

 

 

 

 

 ヨーロッパをはじめ世界中で反ユダヤ主義の勢いが増している。昨年10月7日にハマスが越境攻撃で多数のイスラエル市民を殺傷したり人質にとったりしたため、イスラエルがガザに侵攻し、反撃した。その結果、すでにガザでは4万人を越える死者が出ている。これが、反イスラエル感情を拡大し、ユダヤ人攻撃につながっている。

 7月24日朝、南フランスのモンペリエ近郊のシナゴーグ(ユダヤ教会堂)で2台の車などが放火され、ガスボンベが積載されていた1台が爆発した。現場に急行した警察官が負傷したが、大事には至らなかった。シナゴーグには5人がいたが、全員無事だった。

 容疑者は、パレスチナを支援する33歳のアルジェリア人で、モンペリエから50㎞離れたニームで身柄を拘束された。

 アタル首相(当時)は、反ユダヤ主義によるものだとして、糾弾した。フランスは、ヨーロッパで最大の50万人のユダヤ人コミュニティを包含する国であるが、昨年のガザでの戦闘開始以来、反ユダヤ主義的な事件が相次いでいる。ダルマナン内相は、国内のシナゴーグやユダヤ人学校などのユダヤ人関連施設の警備強化を指示した。

 ドイツ西部のゾーリンゲンは刃物の産地として有名であるが、市の創立650周年を祝う祭典「多様性フェスティバル」が開催されている中、8月23日夜、男が刃物で来場者を襲い、3人が死亡し、8人が負傷した。犯人は自首したが、26歳のシリア人で、IS(イスラム国)が「ISの戦士が実行した」とする犯行声明を出した。パレスチナなどあらゆる場所にいるイスラム教のために、キリスト教徒に報復したという。

 この男は、2022年12月にドイツに来て難民申請し、滞在が認められていた。事件後に、ドイツでは政府の難民対策への批判が強まっており、今後は難民の受け入れを厳格化する方針になりそうである。 

 ハマスの最高指導者イスマイル・ハニヤが、7月31日にテヘランで暗殺されたため、イランはイスラエルに報復することを宣言した。しかし、紛争のエスカレーションは望んでおらず、ハマスの要求が満たされる形で停戦が実現すれば、報復は差し控えるという方針も明らかにした。

 ところが、8月25日、レバノン南部を拠点とするシーア派組織ヒズボラがイスラエル北部の軍事施設11カ所を320発以上のロケット弾で攻撃した。ヒズボラの攻撃を事前に察知したイスラエル軍は、ヒズボラが攻撃を開始する前に、ヒズボラの軍事拠点を空爆している。

 9月18日、レバノンではポケベルなどの通信機器に爆弾が仕込まれており、それが爆発して多数の死傷が出た。ヒズボラは、イスラエルが実行したと言う。

 ガザでの戦闘が長引けば長引くほど、世界中で反ユダヤ主義が拡大する。アメリカは大統領選挙一色であるが、ガザでの戦争を終わらせる努力を強化すべきである。

 

  秋の大統領選挙に向かって、アメリカの政治が熱気を帯びている。8月19日から4日間、イリノイ州のシカゴで民主党の党大会が開かれたが、健康不安が懸念されていたバイデン大統領が選挙戦からの撤退を決め、副大統領のカマラ・ハリスが後を継いだことで、大会は大いに盛り上がった。

 ハリスは、共和党の大統領候補であるトランプよりも若く、検事出身の女性で、インド・アフリカ系である。彼女は、ミネソタ州知事のティム・ウォルズを副大統領候補にした。

 7月13日にトランプがペンシルベニア州のバトラーで銃撃されたが、この暗殺未遂事件で共和党は結束し、トランプ支持率も上がった。しかし、7月21日にバイデンが大統領選からの撤退を表明し、ハリスを後継に指名したことで、次第に民主党の支持率も回復していった。

 そして、8月に入ると、世論調査の支持率でハリスがトランプを上回るようになった。高齢のバイデン候補の下で、離反していった民主党支持者が戻ってきたことが支持率の回復につながった。そして、女性、非白人という、トランプと対照的な特色も、多様性を重視する有権者のハリス支持を拡大させた。

 問題は、今の熱狂的な支持が11月5日の投票日まで続くかどうかということである。

 マラ・ハリスには問題点もある。バイデン政権の副大統領であるが、特筆すべき実績はない。その点では、1期4年間大統領職を経験したトランプに劣る。

 また、バイデン政権の失策の責任を副大統領として負わされることになる。たたとえば、ガザでの戦闘がまだ続いているが、イスラエルに軍事支援を続けながら停戦交渉をまとめられないこと、その間に多くの無辜のパレスチナ人が犠牲になっていることなどがそうである。

 もう一つの例は物価高である。財政の過剰な出動は「大きな政府」を意味する。ハリスは中低所得者に配慮し、富裕層から低所得者層への富の配分を図る。

 また、法人税率を21%から28%へ引き上げる。しかし、それは企業の活動を制約し、世界におけるアメリカ企業の競争力を失わせる。

 以上のような政策に、トランプは猛反発している。その基本は「小さな政府」であり、政府の介入をできるだけ減らし、規制を解除して企業の自由な活動を促進する、法人税率も15〜20%に下げる。また、アメリカ第一主義で、全ての輸入品に10%の関税を課して、それをアメリカ経済支援策の財源にするという。

 経済財政政策は全く逆方向である。それに加えて、ハリスとトランプ、民主党と共和党では、多くの分野で政策の方向が大きく異なっている。

 トランプは、自分が大統領になったら、即座にウクライナでもガザでも戦争を終わらせると言う。

 移民問題については、民主党が合法的移民を拡大することを是とするのに対して、トランプは国境に壁を建設し、移民の制限を図る。

 以上のように、二つの党の政策は対極的な面が多い。したがって、政権交代になると、アメリカの政策が大きく変わり、世界中が戸惑うことになる。

 アメリカは二つに分断されている。

 2021年1月6日、バイデンがトランプに勝利した前年の大統領選挙で不正があったとして、トランプ支持者が国会議事堂を襲撃した。このような事件が再び起こってはならない。

 今回の大統領選挙は、アメリカの再統合を目指すものでなくてはならない。