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  9月10日、ユタ州のバレー大学でイベントに参加していた31歳の保守政治活動家、チャーリー・カークが銃撃され、死亡した。容疑者は、22歳のタイラー・ロビンソンで、逮捕され、検察に訴追された。この事件に対して、トランプ政権は、異例の対応を展開しており、アメリカの分断が深まっている。

 チャーリー・カークは、1993年10月14日にイリノイ州シカゴ郊外で生まれた。高校のときから、学内外で反リベラルの立場からの政治的言動を行った。ハーパー・カレッジに進学し、中退した後、ベネディクティン大学に進み、ここでも政治活動を展開した。そして、2012年に、草の根の学生組織「ターニングポイントUSA(TPUSA)」を設立した。この組織の目的は、「小さな政府」、自由主義経済などの理念を広めることである。

 カークは、トランプ大統領を熱烈に支持し、MAGA(アメリカを再び偉大に)運動を推進し、今回の大統領選では若い世代をトランプ支持に変えるのに大きな貢献をした。

 カークの政治的主張は、反リベラルで、LGBTに反対、人工妊娠中絶に反対、銃規制に反対であり、反移民など「アメリカ第一主義」である。

 さらに、JDバンス副大統領との関係も注目に値する。バンスは、9・11(同時多発テロ)24周年追悼式をキャンセルし、副大統領専用機で自らカークの遺体をアリゾナ州フェニックスの自宅に運んだ。

 以上のような背景があるにせよ、この事件に対するトランプ政権の対応は異常である。

 公人でもない被害者の遺体の搬送に、副大統領が副大統領機を使うこと自体が常識外のことで、普通の民主主義国では許されないことである。

 カークの死を悼んで、公的機関に半旗を掲げる命令を下したことも非常識である。

 さらに、この事件をめぐる発言で、停職や解雇が相次いでいる。SNS などで、不適切な発言を行ったとして、公務員のみならず民間の人々も停職や解雇の処分を受けている。シークレットサービス(大統領警護官)、パイロット、教員、医療従事者などである。バンスは、「カークの暗殺を称賛する者たち、そして、そのようなテロリストの共感者に給料を支払っている者たち」を強く批判した。

 テレビ局のABCは、「ジミー・キンメル・ライブ」の司会者のコメディアン、ジミー・キンメルは、カーク銃撃事件について不適切な発言をしたとして、番組が無期限に打ち切られた。

 また、トランプは、「銃撃犯人は死刑だ」と述べたが、量刑を決めるのは裁判所であり、三権分立というアメリカの制度を理解しない暴言である。さらに、トランプはカークに大統領自由勲章を授与するというが、この授与の基準も根拠が曖昧である。

 9月15日には、トランプは、「彼は左派だ。左派には多くの問題がある。左派は保護されているが、保護されるべきでない」と述べた。トランプ側近のミラー次席補佐官は、左派の解体が必要だと強調した。極右の間では、「カーク批判者摘発運動」が起こっている。

 もし、銃撃事件の被害者が民主党の政治活動家だったら、トランプ政権は全く異なる対応をしていたであろう。そこにあるのは党派性であり、分断されたアメリカである。民主主義の基本であるルールの順守も法の支配もない世界である。

 この亀裂は、トランプ政権下でますます広がり、修復される可能性は見えない。その行き着く先は内戦である。国民の統合を図るどころか、トランプは国民の分裂を加速化させている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 フランスでは、国民議会で信任投票が否決され、9月9日に退陣したフランソワ・バイル首相の後任に、マクロン大統領はセバスチャン・ルコルニュ国防大臣(39歳)を指名した。2期目のマクロン政権では、実に5人目の首相である。なぜ、このような状況になったのか。石破首相が退陣した日本の政治と共通した課題がある。

 2022年6月の国民議会選挙で、マクロンを支持する与党連合は大敗し、過半数を失った。左派と極右が勢力を拡大した。現職大統領の与党が国民議会で過半数割れとなったのは、1997年以来のことである。

 2024年7月の国民議会(定数577)選挙では、1位が左翼連合で182(+33)議席、2位が与党連合で168(−82)議席、3位が極右の国民戦線(RN)で143(+55)議席となった。

 その結果、3つの勢力のいずれも過半数を獲得できず、「宙づり国会」となってしまった。

 

 フランスは大統領制であるが、アメリカの大統領制とは異なり、第5共和制は、日本やイギリスのように首相がいる議院内閣制の要素も取り入れた。首相の任命権は大統領が持つが、首相は議会多数派から出ることになる。

 もし大統領が議会多数派の決定とは異なる政治家を首相に任命すれば、国会で不信任されるので、大統領は議会多数派から首相を選択えざるをえない。

 1986年3月〜1988年5月のミッテラン大統領(社会党)・シラク首相(保守の共和国連合)、1993年3月〜1997年6月のミッテラン大統領・バラデュール首相(共和国連合)・ジュペ首相(共和国連合)、1997年6月〜2002年5月のシラク大統領・ジョスパン首相(社会党)という組み合わせである。これを、保革共存(コアビタシオン)と呼んだ。

 

 昨年の国民議会の選挙の結果生まれたのは、保革共存ではなく、左翼、中道、極右の3つの勢力が拮抗する状況である。この3政治勢力は不倶戴天の敵どうしであり、手を組むことはできない。つまり、多数派の形成は不可能なのである。

 そこで、マクロンは新首相の任命に苦労することになり、やっと9月5日にミシェル・バルニエを首相に任命したのである。

 しかし、12月4日の国民議会で、最大勢力である左翼連合が提出した内閣不信任案に、極右のRNも賛成したため、331票の賛成で可決され、バルニエ内閣は、第5共和制で最短の3ヶ月弱で退陣した。

 マクロンは、12月13日、後任に、与党連合の1角を占める中道政党「民主運動」のフランソワ・バイル党首を指名した。73歳のベテラン政治家である。

 バルニエ内閣は短命で終わり、バイル内閣も議会運営に失敗した。

ルコルニュ新首相は、中道右派の共和党の出身であるが、2017年の大統領選後にマクロンの政党に移籍した。ルコルニュ首相は、10月中旬までに予算案を議会に提出せねばならないが、野党との協議は難航が予想される。

 9月10日には、フランス全土で反政府デモが行われた。年金改革や緊縮政策に反対するためである。

 このような政治状況を反映して、欧州債券市場ではフランス国債が売られ、長期金利がイタリア国債を超える状況となっている。

 ポピュリズムが跋扈する世界で、日本もフランスも、少数与党という不安定な状態が続く。民主主義はどこに向かうのか。民主主義が欠陥の多い制度であること、また昨今のSNSの流行がそれをさらに悪化させていることを認識した上で、民主主義再生の道を模索したい。

 

  9月3日、「抗日戦争勝利80年」を記念して、中国は大規模な軍事パレードを敢行した。習近平主席は、プーチン大統領、金正恩総書記ら、20ヵ国以上の首脳を招待した。しかし、西側主要国の首脳は参加しなかった。また、8月31日から2日間、天津で上海協力機構(SCO)首脳会議が開かれた。中国は、新しい国際秩序の形成に意欲的である。

 アメリカの覇権に対して、ロシアも中国も、それに対抗する組織作りを行っている。

 ロシアは、2015年1月1日に、ユーラシア経済連合(EEU、EAEU)という地域経済協同体を発足させた。ベラルーシ、カザフスタン、ロシア、アルメニア、キルギスが加盟国である。EUに対抗する経済協力体樹立を狙ったプーチンの構想だが、ウクライナはEAEUにはそっぽを向き、EUに接近した。ウクライナを何としてもEAEUに加盟させたかったプーチンを裏切ったことが、ロシアのウクライナ侵攻の背景の1つである。

 そして、注目に値するのが、先日、中国で首脳会議が開かれた上海協力機構(SCO)である。これは、中国、ロシア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタン、インド、パキスタン、イランの10カ国で構成される安全保障、経済、文化の協力システムである。

 天津での首脳会議で、習近平は、「平等で秩序ある世界の多極化」を提唱した。アメリカ第一主義を掲げ、内向きになっているトランプ政権とは対極的に、グローバルサウスを重視する姿勢を示した。

 そして、トランプ政権の関税攻勢に対抗して、自由貿易体制の維持をうたった。さらに、インドのモディ首相と首脳会談を行い、関係改善を印象づけた。ロシア産石油を購入しているとして、トランプはインドに50%の関税を課しており、皮肉なことに、それが両国を結びつけた。

インドは、日米豪と 「日米豪印戦略対話、Quad(クアッド)」を結んでいる。習近平としては、これに楔を打ちたいところである。しかし、モディは、抗日戦争勝利80年の軍事パレード式典には参加しなかった。日本を敵にする会合には出ないという考えからである。インドの外交もまたしたたかである。

 その中国の野望を打ち砕くために、アメリカをはじめ西側諸国が注目しているのがインドである。

 国際政治の中で政治的にもインドの重みは増している。

 20カ国から成るG20は1999年に始まったが、G7にロシア、そして当時新興国と呼ばれたアルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、中国、インド、インドネシア、メキシコ、韓国、サウジアラビア、南アフリカ、トルコを加えた集団である。C20の中で、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの5カ国を、国の頭文字をとってBRICSと呼ぶが、これらの国々は、2000年以降に大きな経済発展を遂げている。

この両者の間で曖昧な態度を取っている発展途上国や新興国をグローバルサウスと呼ぶようになった。それは、ロシアのウクライナ侵略は批判しても、ロシアに厳しい制裁を科したりすることに反対する国々であり、その典型的な国がインドである。

 インドは、国益にかなえば、どの国とも協力する。ロシアであれ、アメリカであれ、利用できる国はどこでも利用するプラグマティストである。したたかな外交を繰り広げるインドは、今後、ますます国政政治の中で重要な役割を果たしていく。そのインドとの良好な関係の維持は、日本の国益に繋がる。