政権交代と選挙制度 | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 6月30日に投票が行われたフランスの国民議会選挙では、極右の国民連合(RN)が第一党になった。オランダでは、極右で第一党の自由党(PVV)が主導する連立政権が7月2日に発足した。7月4日に総選挙が実施されたイギリスでは、14年間政権の座にあった保守党が大惨敗を喫し、労働党に政権が移った。

 政治学の教科書的な話をすると、イギリスが採用している小選挙区制は、1選挙区から1人のみ当選する。選挙区も小さいので、選挙費用もあまりかからない。 

 若い頃、イギリスで候補者に同行して選挙活動を取材したことがあるが、戸別訪問が主で、選挙費用について尋ねると、カネはあまりかからないが、歩き回るので靴がボロボロになり、何足も必要になると答えてくれたのを記憶している。

 小選挙区制は、一票差でも当選するので、民意の変化が劇的に反映されて、政権交代が起きやすい。しかし、たとえば、5000票と4999票という選挙結果になったときには、4999票は死票となってしまう。つまり、当選する1位の候補者以外の候補に投じられた票は、すべて死票になってしまう。

 これは、得票は4割でも、議席は7割を確保できるような制度であり、死票は多いが、政権交代の可能性は増す。

 対極にあるのが比例代表制で、死票はなくなるが、小党分立の傾向が強まり、政治が不安定になりがちである。多数の政党間で連立政権となることが多く、総選挙が終わってから政権が発足するのに数ヶ月かかる例もある。オランダやベルギーがその典型例である。

 この組閣に時間がかかる連立政権を生むような完全比例代表制に比べて、今回のイギリスの総選挙は、小選挙区制が政権交代にもたらす単純かつ劇的な効果を見せつけたのである。

 同じような劇的な効果は、2009年8月30日の日本の総選挙でも起こっている。民主党が115議席から308議席に躍進し、単独過半数を得た。自民党は300議席から119議席に激減し、野党に転落した。得票率で見ると、民主党は42.41%、自民党は26.73%であり、死票の多さが際立っている。

 私は、当時は麻生内閣の閣僚であったが、野党となって政権の座から追われてしまい、厚労大臣として手がけた多くの改革を完遂できなくなったことを悔やんだものである。

 日本では、1994年に、細川内閣下で公職選挙法が改正され、従来の中選挙区制から小選挙区比例代表並立制(拘束名簿式比例代表制)に仕組みが変わった。そして、この制度は、1996年以降の衆院選で実施されてきている。

 2009年夏に発足した民主党の鳩山由紀夫政権下で、自民党的な政官業の癒着や、政策の一貫性の欠如などは是正されなかった。皮肉に言えば、民主党政権は、政権交代・二大政党制が国民のためにならないことを実証してしまった。

 そして、小選挙区制は政権交代を実現させたかもしれないが、様々な問題を生み出したこともまた事実である。

小選挙区制が今の日本政界の閉塞感を生み出している一因であると言えよう。それを打ち破るには、小選挙区制を廃止し、新たな選挙制度に変えることを考えてもよい。

 いくつかの方法があるが、第一は定数4前後の中選挙区制に戻すこと、第二はフランスのような二回投票制にすること、第三はドイツのような小選挙区・比例代表併用制に変えることである。