フィンランドのNATO加盟、プーチン大統領は戦術核で対抗するのか? | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 4月4日、フィンランドがNATOに加盟した。ロシア包囲網が拡大している。

 3月25日、ロシア国営テレビのインタビューで、プーチン大統領は隣国のベラルーシに戦術核を配備すると述べた。

 ウクライナは、NATOから兵器を供与されて反転攻勢に出ており、ロシア軍は苦戦している。プーチンは、西側が戦車に加えて戦闘機まで供与し始めたことに危機感を抱き、核兵器の使用を仄めかすことによって、牽制しているのである。

 実は、1991年にソ連邦が崩壊した後、大きな問題となったのが核兵器の管理である。

 ソ連邦を構成していたベラルーシ、ウクライナ、カザフスタンには核兵器が配置されていた。この3カ国が独立して、そのまま核兵器を保有し続ければ、核兵器保有国が3カ国増えることになる。

 ソ連邦から独立する際に、この3共和国がNPTに加盟し、核兵器を放棄する(具体的にはロシアに引き渡す)こととしたのである。1994年12月5日に、ハンガリーの首都ブダペストで開かれたOSCE(欧州安全保障協力機構)会議において、核放棄の見返りとして、ロシア、アメリカ、イギリスは、この3カ国の安全を保障することを約束し、署名したのである。これが、ブダペスト覚書である。

 ベラルーシが核兵器を保有するのではなく、ロシアの核兵器を置くだけなのでNPTに違反しないと、ロシアは言う。そして、プーチンは、アメリカも同盟国に核兵器を配備していることを指摘し、ロシアは同じ事を実行するだけだと強調した。実際に、ベルギー、ドイツ、イタリア、オランダ、トルコの基地に、航空機に搭載可能なアメリカの戦術核爆弾「B61」約150発が配備されている。これを「ニュークリア・シェアリング」という。

 ベラルーシは、昨年2月に憲法を改正して、自国に核兵器を配備できるようにした。また、ロシアはベラルーシ領土に核兵器搭載可能な爆撃機10機と短距離弾道ミサイル「イスカンデル」を配備済みで、4月3日から訓練を開始する。また、戦術核兵器の保管施設を7月1日までに完成させるという。

 2020年6月2日に公表したロシア政府の「核抑止に関するロシア連邦国家政策の基本原則」によると、核兵器を使用する可能性として以下の4つのケースが記されている。

(1)ロシア連邦及び(又は)その同盟国の領域を攻撃する弾道ミサイルの発射に関して信頼の置ける情報を得たとき。(2) ロシア連邦及び(又は)その同盟国の領域に対して敵が核兵器又はその他の大量破壊兵器を使用したとき。(3) 機能不全に陥ると核戦力の報復活動に障害をもたらす死活的に重要なロシア連邦の政府施設又は軍事施設に対して敵が干渉を行ったとき。(4) 通常兵器を用いたロシア連邦への侵略によって国家の存立が危機に瀕したとき。

 たとえば、2014年にロシアが併合したクリミアをウクライナが奪還する攻撃を開始したら、それは(4)のケースとなる。ロシアの核戦略からすれば、戦術核の使用は排除できないのである。

 戦争が長引けば、そのリスクは増す。NATOが武器供与を続けるかぎり、ゼレンスキー大統領は戦い続ける。ロシアもまた戦争を辞めないであろう。

 西側の盟主、アメリカはどのような戦争終結のシナリオを描いているのであろうか。