中露首脳会談開催・・中国はパックス・シニカを狙う                         | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 ウクライナ戦争は長期化しそうである。

 3月17日、国際刑事裁判所(ICC)は、ウクライナの子どもを拉致したとして、プーチン大統領とマリア・リボワベロワ子供権利担当大統領全権代表に、戦争犯罪容疑で逮捕状を出した。

 20年前の3月20日、米軍を中心とする有志連合は、イラクに侵攻し、わずか3週間でサダム・フセイン政権を打倒した。攻撃の理由は大量破壊兵器の保持であったが、実際には存在せず、また国連における決議もなされなかった。過去20年間で20万人の民間人が犠牲になっている。

 プーチンを逮捕するのなら、当時の米大統領ブッシュも逮捕すべきではないかという反論も間違いではない。それだけICCの今回の判断が政治的だということである。

 2014年3月18日にロシアはクリミアを併合したが、その9年目の記念日にプーチンは、クリミア半島のセバストポリを電撃訪問した。それは、奪取したクリミアを死守するという意思表示である。ゼレンスキー大統領は、クリミアを奪還するまで戦い続けると明言しているが、その姿勢に対する牽制球である。

 翌日には、プーチンは東部ドネツク州のマリウポリに足を伸ばした。昨年の5月以降、ロシア軍が支配しており、プーチンは自ら車のハンドルを握って市内を巡回する映像を公開した。これも、ロシア領であることを誇示するパフォーマンスである。

 アメリカを中心とする西側諸国は、ウクライナへの武器支援を継続していく方針である。戦車の供与は既に決定しているが、ポーランドは自国が保有するMIG29戦闘機20機全てを、またスロバキアは、13機を供与する。この旧ソ連製の戦闘機だと、ウクライナ空軍のパイロットも操縦に習熟しており、追加訓練の必要がないからである。

 ウクライナと国境を接する両国にとっては、「明日は我が身」なのである。

 3月20〜22日、習近平主席がロシアを訪問し、中露首脳会談が行われた。3月21日には、岸田首相がウクライナを電撃訪問した。

 しかし、世界が注目したのは中露首脳会談のほうで、ウクライナ情勢をめぐっては、両首脳は、西側による一方的な対露経済制裁に反対し、両国のパートナーシップの推進に努力することを確認した。今回の首脳会談では、中国からは具体的な和平案が示されなかった。

 中国は経済的のみならず、軍事的にも何らかの対露支援を行っている可能性はあるし、今後支援を拡大するかもしれない。それは、習近平の見据える先がアメリカとの覇権競争であり、軍事的にはアメリカと肩を並べる核大国であるロシアを自らの陣営にとどめることは利益になるからである。中国一国で西側に対抗するのは至難の業であり、アメリカによる一極構造を壊して、多極構造を模索する点では、ロシアの利害と一致する。

 戦争は長期化の様相を呈している。ロシアが負けようが勝とうが、中国の国際的地位の向上は疑いない。地域的にも、アメリカが外交で失敗を繰り返す中東やアフリカなどで、ますます中国はそのプレゼンスを増すであろう。

 下手をすると、パックス・アメリカーナ(アメリカの平和)はパックス・シニカ(中国の平和)に取って代わられるかもしれない。