クリミア大橋爆破へのロシアの報復 | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 10月8日早朝に、クリミア半島とロシア本土を結ぶクリミア大橋で爆発事故が起こったが、ウクライナによるテロ行為だとして、ロシアは、ウクライナ全土にミサイル攻撃を行っている。

 戦争はエスカレートし、停戦の見通しは全く立たなくなった。ゼレンスキー大統領は、クリミアを奪還するまでは、戦争を続ける覚悟のようである。また、プーチン大統領も自己の威信をかけて反撃に出ている。

 西欧諸国では、長引く戦争のために、光熱費や小麦粉の値段が高騰し、国民の不満は高まっている。 

 実は、そのような西欧諸国の「ウクライナ疲れ」こそ、プーチンの期待するところである。西側の人々の不満は、寒くなればなるほど、暖房費用の高騰ということを背景に高まっていく。そして、対露経済制裁への反対も強まっていく。

 これこそが、寒い冬にプーチンが期待するところである。ロシアには、豊富なエネルギー資源があるし、ロシア人は極寒に耐えることができる。第二次世界大戦の独ソ戦では、ドイツ製の兵器は零下20℃にもなると稼働しなくなったが、ロシア製の戦車などの兵器は動いていたのである。兵隊の冬装備も、ロシアのほうがドイツよりも優れていた。ナポレオンもヒトラーも、ロシアの冬将軍に負けたのである。

 プーチンが期待するのは、同じような冬将軍であり、ヒトラーに勝ったスターリンの戦略である。プーチンは、徴兵拒否や前線離脱に厳罰を以て臨む方針を明確にしたが、そのお手本がスターリンです。

 スターリンは、1941年6月に独ソ戦が始まる、兵士が前線から後退したり、脱走したりするのを阻止するために「特務部」を設置し、戦闘から離脱する将兵を逮捕し、処刑した。この特務部は、開戦から10月10日までの3カ月半に、2万6千人の将兵を逮捕し、1万名以上を射殺した。

1942年夏にドイツ軍がスターリングラードを攻撃すると、スターリンは「国防人民委員指令227号」を発し、「一歩たりとも退くな」と命令し、戦闘陣地から退却した部隊の司令官を逮捕し、処罰するように指示した。

 問題は、このスターリンのような「恐怖による支配」が今のような時代に通用するかということである。国外に脱出しようとする大量のロシア人の姿が、フィンランドやジョージアなどの国境地帯で撮影され、報道されている。スターリン時代と違って、今はSNSの時代であり、政府によるプロパガンダにも限界がある。

 しかし、同時に問題なのは、我々が接しているマスコミの報道は、ウクライナやアメリカの視点から提供された材料のみである点である。その意味で、ロシアの愛国主義の力を軽視すると判断を誤ってしまう。

 今後何が起こるかは誰も予想できないが、プーチン政権がすぐにでも崩壊するような主張には私は与しない。残念ながら、戦争は長期化し、さらに核兵器使用の危険性が高まるだろう。