憲法とLGBT | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 今や時代は大きく変わり、LGBTの権利を擁護することは世界の潮流となっており、同性婚を認めている国も28の国・地域に上っている。

 札幌地裁は、3月17日、同性同士の法律婚を認めないのは憲法違反であるという判決を下した。これは、北海道の同性カップル3組が国を相手取って慰謝料各300万円の損害賠償を求めた訴訟である。損害賠償は棄却したが、違憲判決は日本初である。

 違憲というのは、憲法第14条1項の「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」という規定に反するということである。

 具体的には、「同性愛者に対し婚姻の法的効果の一部ですら受ける手段を提供しないのは、合理的根拠を欠く差別的取り扱い」だとして、憲法第14条に違反すると判決を下したのである。

 また、幸福追求権を定めた第13条については、「包括的な人権規定」であり、その「解釈のみで同性婚の具体的制度を直接導き出すことは困難」として、違憲ということにはならないとした。 

 それでは、「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない」と定めた憲法第24条との関係については、判決は、24条は「異性婚について定めたもので、同性婚に関して定めたものではない」とし、「民法などの規定が同性婚を認めていないことが、憲法24条に違反すると解することはできない」としている。

 明治憲法下では、民法は家制度を定め、家長に戸主権を認め、夫権が強く妻は無能力とされた。

 第二次大戦後にGHQの占領下で、現行憲法が制定されたが、家制度を否定し、男女平等を協調するもにとなった。そのため、24条に「両性の合意のみに」の文言が入れられたのである。そして、憲法に適合するように民法も改正されたのである。

 しかし、当時の世界では同性愛は治療の対象とすべき疾患であるとされたため、現行憲法制定時に同性婚を想定できなかったのは当然である。

 現実には、同性カップルは、遺産相続、税の配偶者控除、医療費控除の合算などは認められていない。また、パートナーが入院する際の同意書のサインや面会も認められないなど、日常生活においても不利益な扱いを受けているケースが多い。

 これは、婚姻制度についての「国会の裁量権の範囲を超え、合理的な根拠を欠いた差別」だとして、判決は14条の「法の下の平等」論を援用したのである。

 2015年には、東京の渋谷区と世田谷区が「パートナーシップ制度」を導入し、法的効力はないものの同性婚を婚姻に準ずるものとして取り扱うことを決めた。今では、この制度は70以上の自治体で採用されている。

 2021年にオリンピック・パラリンピックを開催するのは東京である。日本における同性愛者を含む性差別問題が世界の注目を集めている。同性婚に異性婚と同様な法的位置づけを与えるには、最終的には憲法第24条の改正が必要となる。その上で、民法などを改正する必要がある。

 憲法改正まで行かなくても、法改正によって差別を少しでも解消することは可能である。