感染症危機管理の3原則:コロナ対策の失敗 | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 東日本大震災、原発事故から10年が経つが、危機管理の教訓が伝承されていない。1年にも及ぶ新型コロナウイルス対策の失敗がそうだ。

 私は、厚労大臣として2009年の新型インフルエンザ感染流行に対応したが、今回の政府や自治体のコロナ対応は、感染症危機管理の原則から乖離している。

 危機管理の原則の第一は、情報公開である。感染症が流行するときには、流言飛語の恐れがある。それに対抗するには正確な情報を細大漏らさず国民に伝えることである。

感染症対策の大原則は「検査と隔離」である。しかし、PCR検査の数は公表されないまま、感染者数のみが知らされる。マスコミもそのことを問題にしない。

 コロナ患者用の病床がどうなっているかという情報も不十分である。情報公開という点では、東京都の対応は酷すぎる。小池都知事は、口では情報公開を唱えながら、実際に行ってきたのは情報の隠蔽である。

 しかも、重症者の基準が国と異なるため、その病床使用率が比較するに足らないものとなっていたのである。それを是正したのはごく最近のことであり、1年に渡りこの状況が放置されてきた。

 政策は科学的データに基づいて立案されるべきであり、国と対立することで注目を浴びたいという不純な政治的動機で動かされてはならない。

 第二に必要なのは、対策立案の元となる情報や提案を複数のチームに提示させることである。

 今回のコロナ対策を見ていると、尾身チームのみで、チームBが不在である。自分の属する組織が、人事と予算の面で政府に厚遇されるためには、御用学者に撤するしかなくなってしまう。それが、政策を歪ませたことは否めない。

 それは、PCR検査を一貫してサボってきたことに典型的に現れている。欧米に比べて日本は感染者数も死者数も少ないと誇るが、東アジアでは劣等生である。中国、台湾、韓国、ベトナムなど、いずれも日本より優れた成果を上げている。

 第三に、感染症対策の要諦は一人のリーダーに権限を集中させることにある。それは厚労大臣である。感染症法の体系がそうなっているし、いずれの国も厚労大臣(保健大臣)が先頭に立って対策を指揮している。ところが、日本だけは、厚労大臣に加えて、西村大臣、さらには河野大臣が加わって、3人にも担当者が増えている。安倍内閣に続く、菅内閣の失態である。一番困るのは、厚労官僚であり、現場の医療従事者である。まさに「船頭多くして船山に上る」を絵に描いたような姿である。

 10年前の福島原発事故では、情報発信元が一元化せず、首相、官房長官、原子力安全・保安院、東京電力などがバラバラに説明していたし、各人の説明に食い違いが見られた。コロナ対策で3人も担当大臣がいて、同じ間違いを犯さない保証はあるのだろうか。

 指揮命令系統は、首相→厚労大臣→厚労官僚の一本でよい。他の省庁を動員する必要があるときには、トップの首相が命令すれば済む話である。

 変異株の感染が拡大している。IOCも日本も東京五輪は何が何でも開催するという方針であるが、コロナの感染状態によってはどうなるか分からない。鍵を握るワクチン接種も順調に進む保証はない。

 今後も予想される自然災害、パンデミックに上手く対応するためにも、この1年間のコロナ対策失敗の検証と反省がなければならない。