東京都など首都圏の緊急事態宣言が解除21日で解除される。そして、25日には聖火リレーが始まる。
しかし、変異株の感染拡大もあって、このまま感染者数が減少すると考えるのは楽観的にすぎる。
10年目の3・11がやって来た。東京五輪は、この「震災からの復興五輪」のはずであった。しかし、今や、「人類がコロナに打ち勝った証」へと位置づけが変わってしまっている。
ただ、本当に人類はコロナに打ち勝ったのか。幸い、ワクチンの開発が順調に進み、世界中で接種が始まっている。
日本では医療関係者に優先的接種が始まったばかりであり、高齢者への接種が開始されるのは4月末である。ワクチンの供給が間に合わず、今や世界で争奪戦が繰り広げられている。
EUと日本は今年中に集団免疫を獲得するのは無理だと言われている。バイデン政権になって大車輪で接種を進めているアメリカは、早ければ今年の夏にも集団免疫状況になるという。
無観客か否かは別として、7月に予定通りに東京五輪を開催するためには、以下の4条件を満たす必要がある。
第一は、コロナ感染が世界的に下火になり、「抑制できている」という状況になることである。「ワクチン接種の開始=感染の抑制」ではない。時間差があり、アメリカ、イタリア、ドイツ、フランス、ブラジルなどでは感染が横ばいだったり、また拡大したりしている。とくに感染力の強い変異株は要注意である。
第二は、ワクチンの接種が順調に進むことである。開催国の日本は、先進国の中でも接種の開始が最も遅れた国の一つである。海外から多数のアスリート、五輪関係者、観客が来日するときに、高齢者ですら接種が完了していない事態が許されるのかどうか。
第三は、国民世論の動向である。「中止」と「再延期」が約8割を占め、予定通り「開催」は2割にも満たない。国民の支援があってこその五輪の成功である。
第四は、国際社会の反応である。日本と同じように開催論は少ない。アメリカでは東京五輪には人々は無関心で、中国が人権侵害をしているという理由で2022年北京冬季五輪への参加ボイコット論の議論が先行している。ヨーロッパでは、ワクチン接種が順調に進まず、感染者もあまり減らない状況であり、東京五輪を開催するなど論外だという意見が強い。
最悪の事態は、無理に東京五輪を開催して、大会参加者から感染者が出ることである。そうなった場合に、五輪そのものがぶち壊しになる。
五輪準備に全力をあげるとともに、中止のシナリオもまた用意しておかねばならないのではあるまいか。