東京五輪の皮算用 | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 橋本新会長選出で、森「女性蔑視」発言は一件落着したが、今回の人事は菅首相の意向が強く影響した「官邸人事」であり、結果的に森院政が確立した。

 大会組織委員会は、森氏を会長として2014年1月24日に発足した。私は、半月後の2月11日に東京都知事に就任した。2016年6月に都知事を辞任するまでの間、私は森会長と二人三脚で東京オリンピック・パラリンピックの準備を進めた。

 五輪は政治とカネに翻弄される。2013年9月7日、ブエノスアイレスで開催されたIOC総会で、東京が2020年の開催地に決まった。五輪には巨額のカネが動き、経済効果も大きいためか、誘致合戦の過程で不祥事も起こっている。たとえば、誘致について発言権のあるIOC委員に賄賂が渡されるといったようなスキャンダルである。フランスの検察当局は、竹田JOC前会長を贈賄容疑で捜査の対象としている。

 2020五輪東京招致決定後、猪瀬直樹知事が、医療法人徳洲会グループから5千万円の資金提供を受けていた問題で、12月18日に都知事を辞職した。

 この辞任劇の背後には、東京五輪組織委の会長ポストを巡る権力闘争があったと言われている。猪瀬知事の意向と、森元総理を担ごうとする人たちとの水面下の争いがあり、前者が後者に刺されたと言うのである。 

 東京五輪の準備にかかる費用は、総額約3兆円に上る。周辺の費用まで計上すると、もっと多くなるかもしれない。しかし、日銀の試算によれば、経済効果が33兆円になるという。つまり、11倍になって戻ってくるのであり、この数字を都知事の私も使って、3兆円の支出を擁護したのである。

 これだけの一大イベントになると、多くの利権が絡むのは当然である。利権には、どす黒い権力闘争が伴う。元総理の森氏の調整力が不可欠な場面が出てくるのは当然である。

 経費負担については、主催都市である東京都と国との対立が生じるのは当然である。たとえば、新国立競技場建設問題である。国立であるから、国が経費を出すのは当然のはずだが、私が都知事になったときには、建設費1500億円(その後、経費はもっと膨れ上がったが)の3分の1の500億円を東京都が支払うことにされていた。

 しかし、それを明記した公式文書も何もない。当時の下村文科大臣と交渉したが埒が明かない。そこで、私は新国立競技場建設に伴う数多くの問題点を指摘した。その結果、世論の動向を気にする安倍首相は、2500億円という巨額の経費のかかる当初のザハ・ハディド案が撤回したのである。2015年7月17日のことである。

 一部の報道によれば、東京都が3分の1の建設費を出すことは、猪瀬都知事と下村文科大臣の間の密約だったという。私は、国側と協議をして、最終的に都の負担を4分の1にすることで、この問題を決着させた。

 今年は、選挙の年である。4月25日に国会補選、7月4日に都議会選挙が行われ、秋までには衆議院の選挙がある。これら選挙での勝利と東京五輪成功が対になっている。五輪は、いつも政治に翻弄される。