緊急事態宣言から半年:新型コロナウイルスの感染拡大をもたらした小池都知事の横文字パフォーマンス  | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 4月7日の緊急試合宣言から半年が経つ。安倍首相は、2月26日には大規模イベント自粛を要請し、27日には全国一律の学校休校要請を出した。3月11日には、WHOがパンデミックを宣言した。

 3月23日になって、安倍首相は東京五輪を延期することを容認した。小池都知事は、そのことを伝える首相発言の2時間後に急遽記者会見を開き、コロナ感染拡大への危機感を煽り、「ロックダウン(都市封鎖)」という強力な措置を執らざるをえない」とか「今後3週間がオーバーシュート(患者の爆発的急増)への分かれ道」とか言う言葉を並びたてた。まさに、いつもの横文字を使って耳目を引くパフォーマンスだ。

 その翌日、24日には、IOCのバッハ会長と安倍首相が電話会談し、東京五輪の延期が決まった。すかさず翌日の25日夜、小池都知事は緊急に記者会見を開き、一日の感染者増が41人になったとして、慌てて外出自粛などの措置を発表した。しかし、41人の内訳を見ると、病院でのクラスター感染者や海外からの帰国者を除いて、感染源の分からない患者は10〜13人で、過度に騒ぎ立てることはなかったのである。

 さらに言えば、自粛要請をするのなら、爆発的感染を警告した19日の政府の専門家会議の後にすべきであって、1週間も遅れてしまっている。しかも、オーバーシュート、ロックダウンと横文字を使い、危機感を煽ってしまった。東京は、ローマやマドリードやパリとは違うのである。

 この会見の影響で、東京のスーパーでは買い占め騒ぎが起こり、パニック状態になってしまった。大衆の心理を計算しない無謀な会見だったのである。週末に「不要不急な外出をするな」と言うのなら、同時に「生活必需品の買い物は必要で、不要不急ではない」と釘を刺すべきでだった。

 政府が無策なのに、都知事はしっかりと政策を打ち出しており、優れたリーダーシップを持っていると言わんばかりの演出であった。実は、政府は緊急事態宣言を発令する準備を進めていたのである。

 日本では、欧米のようなロックダウンは法的に定められておらず、実現不可能である。しかし、小池都知事のロックダウン発言で、緊急事態宣言がそれだと国民は誤解してしまった。テレビでは、連日のようにイタリアやスペインやフランスのロックダウンされた都市の状況が報じられ、警察官が厳しく取り締まっている様子が伝えられました。日本もそれと同様な事態になると、国民が誤解したのは当然である。

 小池都知事の横文字マニアが招いたとんでもない誤解なのであるが、都内のスーパーでは商品が棚から消えてしまった。何とも罪作りなパフォーマンスだ。この騒動のあおりを食らって、政府は、当初3月末に予定していた緊急事態宣言を4月7日まで待つことになってしまったのである。

 さらには、宣言による休業要請をできるだけ少ない数の業界に制限したい政府に対して、小池都知事は居酒屋や理容店なども対象にする案を主張し、感染防止のジャンヌ・ダルクといったイメージを作ろうとした。そして、国との間で猛烈な綱引き合戦を演じたが、全ては、自分の人気と支持率をアップするためであった。