アビガンを巡る2つの文書 | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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  岡江久美子さんが、新型コロナウイルスの感染で4月23日に亡くなった。日本中に衝撃が走り、コロナの怖さを再認識させた。PCR検査をもっと大量に、そして迅速に行っていれば、このような悲劇も避けられたかもしれない。

  また、初期段階で抗ウイルス薬のアビガンを投与していれば、治療できたのではないかとも考えている。石田純一さんも新型肺炎になり、危険な状況だったが、アビガンの投与で改善してている。

  最近のニューヨーク州の重症患者の研究では、人工呼吸器をつけた患者の88.1%は死亡している。人工呼吸器装着前に、アビガンを投与する必要があるのである。厚労省は、3月中旬にはそのことを認識し、アビガンの早期投与の条件について日本感染症学会の方針を批判している。

  これが第一の文書である。3月17日、厚労省は都道府県、保健所設置市、特別区に対して事務連絡し、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第1版」の作成を知らせている。その第4章が「抗ウイルス薬」である。

  そこには、まずコロナに対する「特異的な治療法はない」と断った上で、もし抗ウイルス活性を有する「薬があっっとしても、治療効果を得るにはより早期に投与されることが求められる」と記してある。

 そして、国内で入手できる薬剤の適応外使用として、ファビピラビルを挙げているが、その商品名がアビガンである。もともとアビガンはインフルエンザ治療薬として承認されており、それを新型肺炎にも使おうというのである。

 そして、日本感染症学会が、アビガン使用について、「呼吸不全の出現(通常は第7病日以降)を必要条件としているため、早期投与とならない可能性が高い」と批判している。

 第二の文書は、批判された日本感染症学会が4月20日に出した「新型コロナウイルスWebシンポ アビガンは重症者6割、軽中程度で9割改善」というサマリーである。

 具体的には、「軽症では投与開始7日後に70%、14日後に90%が改善が認められた。中等症では投与開始7日後では66%、14日後で85%だった。重症でも投与開始7日後に41%、14日後には61%が改善した。ただし、重症例では『悪化』が投与開始7日後で34%、14日後では33%だったとしている。」

 このデータを見れば、アビガンを使用するのに躊躇する医者はほとんどいないのではないか。

 もちろん催奇形性などの副作用があり、妊婦などには使えないが、重症化すると死亡する可能性の高い高齢者などには早期投与してもよいのではないか。早期に目的外使用を認めるべきである。

 日本の薬や医療機器の承認が海外に比べて遅いので、私は厚労大臣のとき、担当する機関であるPMDA(医療品医療機器総合機構)の改革を試みた。トップを厚労官僚の天下りから外部人材に変えたのである。承認まで平均4年もかかっていた期間をかなり短縮するのに成功したが、まだ道半ばである。この点もまた、改革すべき問題である。