「集団免疫(herd immunity)」論は間違っていない | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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「集団免疫」とは、ある集団の構成員の6〜7割が感染し、免疫を獲得すれば、彼らが残りの3〜4割を守ってくれるために、感染が終息するという考え方である。この考え方は正しい。

 感染症は、病原体であるウイルスや細菌が外部から体内に入るために罹るが、この病原体を攻撃するために体内に抗体ができる。このメカニズムが免疫である。

 ワクチンを接種するのは、あらかじめ病原体に対する免疫(抵抗力)を作り出すためである。単純化して言えば、自ら軽く感染して、先に免疫を作るのである。

 実際に感染して治った人は、免疫ができているので、同じ病原体に襲われても抵抗できる。集団免疫とは、そのような人が集団の多数になることを意味する。大多数がワクチンの予防接種をすれば、ある意味で集団免疫を獲得することになる。

 今回の新型コロナウイルスの場合、日本では、欧米に比べて感染拡大のスピードが緩やかなのは、国民の努力もあるが、様々な幸運が繋がったと見てもよい。

 国内初の感染者が出たのは1月15日で、武漢を訪ねて帰国した30代の中国人男性であった。その後、28日に奈良の60代の日本人の感染が判明したが、武漢からの中国人観光客を乗せたバスの運転手であった。人から人への感染が確認にされたわけである。

 そして、2月中旬、感染源不明の患者出現し、また屋形船での感染も判明した。このように、少しずつ段階的に蔓延し、国民が警戒を強化した。これは、爆発的に感染拡大した他国よりも幸運な経過だったが、いつまでこの状態が続くか分からない。

 もう一つの仮説は、日本人がすでに集団免疫を獲得しているのではないかというものである。中国の旧正月、春節の前後から湖北省をはじめ中国全土から多数の観光客が訪日しており、各地で日本人と接触している。

 このため、多数の日本人が感染したことが想定される。しかし、軽い風邪の症状程度だったり、無症状だったりしたために気にもとめずに、免疫ができてしまったという説である。

 この説の真偽は分からないが、そう思いたくなるほど、これまでの日本の感染拡大の状況は、今爆発的に感染が拡大している欧米や既に終息に向かっている中国や韓国とも異なる。

 しかし、東京では爆発的感染拡大の寸前だということで、3月25日、小池都知事は外出自粛などの要請を出した。その措置には、集団免疫論の考え方は反映されていない。

 ワクチンや特効薬が開発されないかぎり、緩やかに感染を拡大させて集団免疫を獲得するという戦略も間違いではない。無症状の感染者が多いので、感染防止が難しいからである。とにかくPCR検査は迅速化・充実が必要だ。

 欧米では、感染したまま気づかずに抗体のできた人を探すための抗体検査を進めることが検討されているが、賛成である。