感染症の危機管理:新型インフルエンザ対応の教訓(4)官邸にごまをする役人が危機管理を失敗させる | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 新型インフルエンザのときに、危機管理の障害となったのは、首相官邸であり、専門家であるはずの医系技官たちであった。前者は、序列にのみこだわり、首相→官房長官→厚生労働大臣という序列を金科玉条のものと考え、危機管理の本質を守ることを二の次に置いた。これが役人根性である。

 年金記録問題、C型肝炎訴訟、原爆症認定訴訟など、官邸の役人に何度邪魔されたことか。「総理よりも格下の厚生労働大臣が目立つようなことは阻止する」というのが、官邸の役人の行動原則なのである。だから、緊急を要しようがどうであろうが、まず総理に一言喋らせることから始める。

 たとえ、漢字が正確に読めなくても、軽口を叩く癖があろうが、お構いなしである。国民の命よりも、首相の見栄えを優先する。これは危機管理として最悪である。

 首相や大臣の仕事ぶりを採点するのは国民である。国民は馬鹿ではない。国民の厳しい評価に耐えられるように努力するのが政治家の務めでであって、有権者は役人が考えるような序列至上主義で判断するようなことはしない。

 国務大臣は、国民の命を守るためには自らの責任で決断をする。首相や官房長官が、問題になっている案件について興味もなく、問題解決能力もないときに、どうするのかを考えるのが国務大臣の仕事である。

 首相に媚びへつらった役人たちは、政権交代があろうが、平気でポストを維持し続けている。危機管理という美名の下に。そして、その悪弊は、民主党政権の鳩山由紀夫内閣になってから、是正されるどころか、ますます病膏肓に入っていった。国民のために仕事をするのではなく、首相に取り入ることによって自分たちの地位を保全しようという役人の口車に乗ってはならないのである。

 政府は、4月28日、水際阻止作戦として、流行地域のメキシコ、アメリカ、カナダからの航空便を成田、中部、関西、福岡の4空港に、また旅客船を横浜、神戸、関門の3港湾に集中させた。

 飛行機は、着陸後に検疫官が機内に入って乗客の健康状態をチェックする機内検疫を開始した。とにかく人手不足で、防衛大臣に依頼して、防衛医官などに応援も要請した。乗客も機内で長時間待機させられるなど、様々な不都合も生じたが、はじめての経験であり、検疫官をはじめ現場のスタッフは全力で対応したことは間違いない。

 完全な水際阻止は不可能であるが、この措置は、国内の医療体制を整備するまでの間、時間稼ぎをしてウイルスの侵入を少しでも遅らせることが狙いであった。