新型肺炎、日本でも患者発生・・危機管理の要諦 | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 1月16日、中国の湖北省武漢で流行している新型肺炎に、神奈川に住む中国籍の30代の男性が感染していることが判明した。武漢に滞在中に、患者と接触したという。水際での阻止に失敗したわけであり、今後、万全の対応が必要である。

 私が厚生労働大臣のときの2009年に、世界で新型インフルエンザが流行し、まさに不眠不休で対応に当たったが、そのときの体験が十分に活かされることを望みたい。

 実は、あの大流行の6ヶ月前に、北京で日中韓の三カ国で保健分野の担当大臣会議を開き、新型インフルエンザへの対応、国際協力について協議していたのである。わずか一泊の強行軍で空港と会議場になったホテルとを往復する旅であったが、実は、その会議の前後に、三カ国の役人たちがシミュレーションを行い、万全の準備を重ねたのである。

 その結果、この三国では、新型インフルエンザの被害者は少なかった。まさに「備えあれば憂いなし」である。今回も、是非とも、このような国際協力を厚生労働省が中心になって進めてもらいたいものである。

 私が大臣のときには、国内でも様々な準備を行ってきたが、いかんせん初体験であり、いろんな問題も起こり、試行錯誤の連続であった。しかし、日本の感染者死亡率は世界最低レベルであり、WHOは、日本の対応を高く評価した。 

 また、マスコミも国民も一丸となって協力したため、うがい手洗いの励行、イベントの延期などがスムーズに進んだ。危機に臨んで、日本人が冷静沈着、また礼節を重んじる極めて民度の高い国民であることを実感した。メディアも適切な情報を流してくれた。

 私は、危機管理の要諦は、(1)情報公開、(2)現場第一主義であると確信し、新型インフルエンザのときも、その原則にしたがって行動した。情報公開については、深夜は1時まで、早朝は6時以降、いつでも重要情報があるときには、大臣自ら記者会見し、直接国民に呼びかけた。情報は、地位が上にある者が伝えるほうが信憑性を増す。課長より局長、局長より大臣である。

 また、現場第一主義については、大阪や神戸の現場で野戦病院の中のように奮闘していた医師たちの意見を最優先にした。霞が関では、何も分からないからである。その霞が関の役人が作ったルールよりも、日々患者の治療に当たっている医療スタッフのほうが正確な情報を持っている。

 私は、大臣の責任において、首相官邸と対立しても、霞が関ルールを曲げても、現場第一主義を貫いた。それは、今でも間違っていなかったと思っている。首相官邸の専門家会議のメンバーは、教授以上の肩書きが必要というが、私直属の専門家会議は、助教授であれ助手であれ、実力中心でメンバーを集めた。権威主義と実力主義とでは、成果が上がったのはどちらのほうか、言を俟たない。

 中国にも情報公開、現場第一主義という原則を貫くことを求めたいが、日本もパンデミックを想定した準備を怠らないようにしたいと思う。11年前の新型インフルエンザ流行時の教訓は、内外で活用されるべきだと確信している。