ゴーン追放は「陰謀・クーデター」と私が思う理由 | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 1月8日のゴーン被告の記者会見は、賛否両論を世界に巻き起こしている。逃亡劇の詳細は語らなかったし、日産幹部と日本政府による「陰謀」の証拠も出さなかった。

 1940年6月にパリが陥落し、ヒトラーに占領される。占領下、ペタン元帥がヴィシー政権の首相になって間接統治を始めるが、ルノー社はこの政権に協力する。連合軍がナチスを撃退し、ドゴール将軍が帰還し政権に就くと、「対独協力」のかどでルノーは国営化されてしまう。

 戦後は「ルノー公団」として再出発し、フランス政府がルノーの経営に深く関わることになる。今でも、フランス政府がルノーの筆頭株主であり、15%の株を保持している。

 マクロン大統領は、前大統領である社会党のオランド政権の下で、経済産業デジタル大臣を勤めた。オランド政権は、2014年に株式を長期に保有する株主の議決権を2倍にすることのできる「フロランジュ法」を制定したが、これを活用してルノーへの政府の支配権を拡大しようとしたのが、マクロン大臣であった。

 2015年、マクロン大臣は、政府の議決権が翌年4月には28%くらいになるように画策した上で、ルノーと日産を経営統合させようとしたのである。そうなると、フランス政府の支配権が強まるので、日産を代表してこれに抵抗したのがゴーン会長であった。このゴーン会長の抵抗が功を奏し、またオランド大統領の調停もあって、2015年末にはフランス政府が日産の経営に介入しないことで合意に達したのである。

 マクロン大臣はまた、ゴーン会長の巨額の役員報酬に対して厳しく批判したが、ゴーン会長の仇敵であるこの銀行出身の若いエリート大臣が、2017年5月の大統領選で当選する。ゴーン会長としても、ルノー退任も覚悟せねばならない事態となった。

 しかし、翌年2月の人事ではゴーン会長の続投が決まったが、それはゴーン会長がマクロン大統領の要求を飲んだからではないか。マクロン大統領は、予てからルノー、日産、三菱自動車の三社の経営統合を進めることを主張しており、ゴーン会長は、続投するために、その主張の少なくとも一部は容れたのではなかろうか。

 そうなると、日産はフランス政府の傘下に入ってしまうことになり、これは日産プロパーの日本人幹部にとっては愉快な話ではない。そこで、ゴーン会長の不正を内部告発することによって、一種のクーデターを行い、ゴーン追放となったのではなかろうか。

 私が知りたいのは、日本政府は今回の件にどこまで関与しているのか、またこのような「クーデター」の動きを事前に察知していたのかということである。本当に何も知らなかったのなら、政府としての体をなさない。

 日本人関係者が、「クーデター」という推測を認めるはずはない。先のベイルートでの会見では、ゴーン被告は、日産幹部の名前は出したが、日本政府高官の名前を明らかにしなかった。「陰謀」の真相を知りたいものである。

 

*ヒトラー占領下のパリについては、拙著『ヒトラーの正体』参照https://amzn.to/2lQ2GVq