米中は第三次世界大戦を回避できるか:英独の覇権競争、第一次、第二次世界大戦の教訓 | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 80年前の1939年9月1日、ヒトラーのドイツ軍がポーランドに侵攻し、第二次世界大戦が勃発した。この戦争も、そして1914年の第一次世界大戦も、イギリスの覇権にドイツが挑戦した戦いであった。

 1980年代に国際政治学の分野で「世界システム論」が一世を風靡したが、それは、近世以降、ほぼ100年の周期で世界の覇権国が交代するという考え方で、大雑把に言えば、16世紀はポルトガル、17世紀はオランダ、18世紀と19世紀はイギリス、20世紀はアメリカが世界を支配したという。

 覇権国に対しては必ず挑戦国があり、ほぼ30年にわたる戦争で決着をつける。20世紀にドイツがイギリスに挑み、敗れた結果、イギリスに代わってアメリカが覇権国になったのである。1914年に始まった第一次大戦から1945年に終わった第二次大戦まで、約30年である。

 この理論を今の世界に適用するとどうなるか。

 中国の経済発展はめざましく、今やGDPでは日本を抜き、アメリカに次ぐ世界第二位に躍り出ている。軍事の面でも、中国は空母を建造するなど、着々と軍拡を進めている。習近平政権は、「一帯一路」政策を展開し、世界中に拠点を築こうとしている。

 最先端の通信技術は、世界のグローバルパワーとして、経済的にも軍事的にも不可欠な道具である。次世代の通信技術5Gについても、中国の技術は格段に進歩しており、アメリカが危機感を持っても不思議ではない。

 そこで、21世紀は中国の世紀になるのではないかという予想も成立するのである。

 米中間の摩擦は、世界の覇権をめぐる争いであり、一位のアメリカを中国が追い抜くことができるのかどうかが問題である。当然のことながら、アメリカはそういう事態を避けようと様々な手を繰り出しているのである。それが、現在の貿易摩擦として現れている。

 つまり、1945年に始まったアメリカ主導の国際システム(パックス・アメリカーナ)が、100年後の2045年には中国の天下(パックス・シニカ)に変わるのではないかということである。習近平主席は、中華人民共和国建国から100年後の2049年には中国を世界一にするという目標を掲げており、それが実現すれば世界システム論の預言通りだということになる。

 それでは、理論通りに、今日展開されている米中貿易「戦争」が30年続けば、中国がアメリカを追い抜くという事態になるのであろうか。核兵器の恐怖の均衡が戦争を回避させているが、第三次世界大戦が起こらないという保証はない。

 資本主義経済が発展するには、自由な民主主義という政治制度が必要だというのが、先進民主主義国の「常識」であった。中国も経済が発展するにつれて「開かれた社会」になると予測していたが、中国はますます専制的になっている。香港の現状を見ると、悲観的にならざるをえない。