我が友、ボリス・ジョンソンの暴走 | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 イギリスのジョンソン首相は、議会を9月9日の週にいったん閉会し、10月14日に新たな会期を始めることにした。10月31日がEU離脱の期限だが、会期を短縮して議会の抵抗を抑え込もうとしている。

 これに対して、与野党から民主主義を破壊するものという抗議の声が上がっている。議会のウェブサイトでも反対請願の署名が数時間で100万人を超えた。議会は王権に対する民主主義の砦だったのであり、英国民の反対は理解できる。   

 ボリスの強硬措置が功を奏するかどうかは不明であり、「合意なき離脱」になる可能性が高まっている。

 守党員が党首選でジョンソンを選択した理由は、党勢の回復をこの人気者にかけたからである。5月23日〜26日に行われた欧州議会選挙では、トップが新党のEU離脱党で31.6%、2位は自民党で20.3%、3位は労働党で14.1%、4位が緑の党で12.1%を獲得したが、政権与党の保守党は9.1%で5位という惨状であった。

 しかし、7月25〜26日に行われたYouGovの世論調査によれば、政党支持率で、保守党31(+6)%、労働党21(+2)%、自民党20(-3)%、EU離脱党13(-4)%となり、早速「ボリス効果」が現れたのである。

 ジョンソン首相は、EU離脱強硬派を主要閣僚に据える組閣をした。「合意なき離脱」も辞さない姿勢のラーブ前EU離脱担当相を外相に、離脱強硬派の一人のパテル元国際開発相を内相に起用し、財務相には、EU残留から「合意なき離脱」へ方向転換したジャビド内相を任命した。またバークレイEU離脱担当相は留任させた。

 8月25日の議会質疑で、新首相は、「イギリスを団結させ、再活性化させるために、10月31日にBREXITを実現する」と明言した。そして、アイルランド国境をめぐるバックストップを拒否したが、これに対してEUのバルニエ主席交渉官は、「バックストップの除外は受け入れられない」と反論している。バックストップとは、激変緩和のために北アイルランドがEU単一市場ルールに従うことを定める措置である。EUは、イギリスとの再交渉を拒否している。

 しかし、バックストップを含むメイ首相の協定案は下院で三度も否決されており、この案を繰り返し提案しても、今の下院の構成が変わらないかぎり、実現する可能性はない。そこで、今回の議会会期短縮という強硬措置に出たのである。

 10月末のBREXIT期限まで、あと2ヶ月、その間にイギリスとEUとで妥協が成立し、合意の上で円満に離脱する可能性は少ない。妥協するとすれば、離脱期限の延期しかあるまい。もし、そうなれば、下院を解散し、総選挙を行って、何らかの打開策を講じることが可能になるかもしれない。

 「合意なき離脱」の場合、イギリスのみならず、世界経済に大混乱がもたらされることになる。この選択肢を排除するために、EU残留支持議員たちはジョンソン首相とどう戦うのか。

 議会制民主主義の祖国で、イギリスの政治家たちは「可能性の技術」である政治を再生させることができるのだろうか。