金正恩は、文在寅の「南北融和の幻想」を嗤っている | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 金正恩は、トランプが容認しているとして、短距離ミサイルの発射を続けている。文在寅など相手にしないという態度である。「核の保持」と「米国しか相手にしない」というのが北朝鮮の基本的政策である。金正恩は、文在寅を利用しているだけである。

 なぜ文在寅は、北朝鮮との融和路線に走るのか。二つの理由がある。

 第一は、第二次大戦後、日本も韓国も外交安保政策が保革を分ける基準になるという特殊事情である。

 日本では、日米安保に賛成が保守、反対が革新とされてきたし、今でも基本的には変わっていない。欧米の民主主義国においては、安保外交政策で与野党は基本的に一致し、経済・社会保障などの内政で対立することが多い。

 韓国もまた、日本と同じである。韓国では、北朝鮮と厳しく対峙するのが保守、融和政策をとるのが革新とされている。文在寅はむろん後者である。文在寅は、金大中、盧武鉉の系列である革新(左翼)陣営に属しており、金泳三、李明博、朴槿恵らの保守(右翼)陣営と対立する。

 1998年2月に大統領に就任した金大中は、北朝鮮の金剛山の観光事業を支援し、2000年6月には金正日と平壌で初の南北首脳会談を開催した。2003年2月に大統領となった盧武鉉は、金大中の太陽政策を引き継ぎ、翌年12月には開城工業団地で生産が開始された。

 こうして経済援助を手にした北朝鮮は核開発を進め、2006年10月には初の核実験に成功している。そして、2007年10月には、盧武鉉もまた平壌で南北首脳会談を行った。

 その後、李明博、朴槿恵と保守政権が続き、北朝鮮に対抗する姿勢をとってきたが、昨年5月に文在寅の革新政権が生まれ、革新のDNAが南北融和路線へと方向転換させたのである。

 因みに、旧宗主国である日本を常に批判するという点では、韓国の保革は一定している。

 第二の理由は、分断国家特有のもので、日本には無縁な民族主義の問題である。第二次大戦後、ドイツやベトナムも米ソ両陣営に分かれ、その後、前者は自由主義陣営によって、後者は共産主義陣営によって統一された。

 朝鮮半島については、すぐに統一できる環境にはないし、米中露も現状維持を望んでいる。しかし、「朝鮮民族の統一」というスローガンは朝鮮半島の住民の心の琴線に触れるものがある。それを背に、金正恩が「統一」を旗印に平昌五輪を政治利用したのである。

 一朝有事の際に、邦人救出のために自衛隊が韓国に出向くのを韓国人は嫌う。文在寅政権下で、南北融和路線によって民族主義が高まれば、自由な民主主義という価値観を日米両国と共有していることすら忘れ去られてしまう。

 とくに、元「徴用工」問題、輸出管理の厳格化などで、今の日韓関係は最悪の状態だ。GSOMIA(日韓軍事情報包括保護協定)まで破棄しようという意見が韓国で強まっている。高笑いしているのは金正恩である。