米中貿易摩擦の背後にある覇権争い  | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 米中貿易摩擦の今後の展開が不透明になっている。お互いに譲り合わないのは、これからの世界の覇者を目指して対立しているからである。

 中国の経済発展はめざましく、今やGDPでは日本を抜き、アメリカに次ぐ世界第二位に躍り出ている。軍事の面でも、中国は空母を建造するなど、着々と軍拡を進めている。習近平政権は、「一帯一路」政策を展開し、世界中に拠点を築こうとしている。

 最先端の通信技術は、世界のグローバルパワーとして、経済的にも軍事的にも不可欠な道具である。次世代の通信技術5Gについても、中国の技術は格段に進歩しており、アメリカが危機感を持っても不思議ではない。

 米中間の摩擦は、世界の覇権をめぐる争いであり、中国がアメリカを追い抜くことができるのかどうかが問題である。アメリカはそういう事態を避けようとしており、それが現在の貿易摩擦に繋がっている。

 1980年代に国際政治学の分野で「世界システム論」が一世を風靡したが、その理論は今でも参考になる。この理論は、近世以降、ほぼ100年の周期で世界の覇権国が交代するという考え方で、大雑把に言えば、16世紀はポルトガル、17世紀はオランダ、18世紀と19世紀はイギリス、20世紀はアメリカが世界を支配したという。そこで、21世紀は中国の世紀になるのではないかという予想も成立するのである。

 つまり、1945年に始まったアメリカ主導の国際システム(パックス・アメリカーナ)が、100年後の2045年には中国の天下(パックス・シニカ)に変わるのではないかということである。習近平主席は、中華人民共和国建国から100年後の2049年には中国を世界一にするという目標を掲げており、それが実現すれば世界システム論の預言通りだということになる。

 国力の構成要素は、経済力や軍事力のみではない。通貨(金融)もまた重要であり、今はドルが世界の基軸通貨であるが、人民元がその地位に就けるかどうか。実際には決済手段としての人民元のシェアは次第に拡大していっており、それもまた荒唐無稽な夢ではなかろう。

 さらには、文化・価値観の問題もある。資本主義経済が発展するには、自由な民主主義という政治制度が必要だというのが、先進民主主義国の「常識」であった。中国も経済が発展するにつれて「開かれた社会」になると予測していたが、中国はますます専制的になっている。これをどう解釈するか。