米中の貿易摩擦が激化している。また、トランプ政権は、イランに対する圧力を強化している。核戦略という観点からは、トランプ政権はオバマ政権とは全く異なる政策を打ち出している。
現状認識として、世界はデタントから大国間の競争の時代に移っているという認識がある。対応策として、抑止力である戦略核ではなく、「使える核」として小型の戦術核を位置づけ、通常兵器による攻撃に対しても使用する可能性を広げるとしている。
これを潜水艦から発射できる形(SLBM)で開発するとともに、オバマ政権が廃止した海上艦船配備型の核巡航ミサイル(SLCM)の再開発も計画する。核の先制不使用方針も撤回された。
また、ヨーロッパや中東におけるロシアの勢力拡大への対応も課題となっている。クリミア併合のような軍事行動に対して、バルト三国や北欧諸国は、第二次大戦、そしてその後の冷戦時代の苦い経験を思い出しており、スウェーデンでは徴兵制が復活され、中立国にもかかわらずNATOとの同盟も検討されている。
戦後の米ソ冷戦時代のようなイデオロギー対立ではなく、かつての帝国主義時代のような列強(大国)の勢力争いという様子になってきている。ロシアの脅威を周辺のヨーロッパ諸国はひしひしと感じているのである。
まさに帝国主義時代の再来のような感じだが、世界システム論の観点から近代史を振り返ってみよう。
(1)1517〜1608年:大航海時代、世界の覇権国はポルトガル、それに挑戦したのがスペイン、この2強にオランダとイギリスが対決し、オランダが次期の覇権国となる。
(2)1609~1713年:オランダの天下にフランスが挑戦し、それにイギリスが対決する。そして、イギリスが次期の覇権を握る。
(3)1714~1815年:パックス・ブリタニカの時代。これにフランスが挑戦する。しかし、ナポレオンも敗れ、イギリスの支配が続く。
(4)1816~1945年:イギリスの覇権が続く。パックス・ブリタニカⅡ。ドイツが挑戦し、英米が迎え撃つ。その結果、アメリカが次期覇権国となる。
(5)1946年~:パックス・アメリカーナの時代であり、トランプ大統領はこれを永続させようとしている。
世界の覇権のサイクルは、約100年であるので、今のパックス・アメリカーナは2045年頃に終わる(もう一期続けば、パックス・アメリカーナⅡとなる)。2049年は中華人民共和国建国100周年であり、習近平はその時点で世界一になることを目指しているが、それが現実のものとなる可能性はある。一帯一路構想もそのためである。
軍事的観点からは、アメリカと中露との対立の時代である。アメリカがインドとの連携を強化していることは意味のあることであり、米印vs中露という図式になるかもしれない。