今の世界は、アメリカが主導しているという意味で、パックス・アメリカーナと呼ばれる。しかし、そのアメリカの覇権に挑戦する国がいる。まずは中国であり、次いでロシアである。「新しい冷戦」が始まったと言ってもよい。
中国とロシアが「現状変更勢力」として台頭している。
中国は、アジア太平洋への海洋進出、領土構築などの動きを強めており、世界全体を視野に置いた「一帯一路」政策を進めている。米中貿易摩擦が激化しているが、トランプ政権は、アメリカの覇権を脅かす存在は中国であると明確に認識している。
近世以降の世界の覇権国は、ポルトガル・スペイン→オランダ→イギリス→アメリカと推移してきた。今後もしアメリカが覇権国から転落するとすれば、次に世界を支配するのは中国になるという予想である。
もともと、明の時代までの中国は世界一の大国であり、習近平国家主席も、建国100年目の2049年までにその過去の栄光を取り戻そうとしている。「一帯一路」構想もその一環である。
そして、ロシアは、クリミア半島の併合を断行するなど、戦後の国際社会のルールを無視する行動に出ている。
トランプ大統領は、クリントン、オバマといった民主党政権が中国を自由な体制に取り込もうとして失敗したのみならず、国際ルールを守らない経済活動、領土的野心を満たすための海外における軍事活動など、傍若無人な振る舞いを許してしまったと厳しく批判している。
その中国の台頭に対して、アメリカは、日本、オーストラリア、インドとの同盟関係を強化する方針を鮮明にした。しかし、同時に「応分の負担」を求める姿勢を打ち出しており、軍事的にも「アメリカ第一主義」が貫かれている。
世界システムの未来は、どうやら太平洋を挟んだ米中両国の覇権争いで決着しそうである。パックス・アメリカーナからパックス・シニカへ移行するのか、それとも米中で棲み分けるパックス・サイノ-アメリカーナへとなるのか。
そのときに、日本とヨーロッパの位置づけはどうなるのだろうか。