外国人労働者の導入拡大:「国家百年の大計」を欠く弥縫策でよいのか | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 私は、20代でヨーロッパに留学し、外国人労働者が、劣悪な労働条件の下で人種差別を受けながら働いている状況をつぶさに観察した。帰国後も、外国人労働者問題の研究を続け、イギリス、フランス、ドイツ、スウェーデンなどに現地調査に出かけたこともある。

 今日の我が国の状況を見ていると、1950~60年代のヨーロッパと同様なのではないかと思う。実は、今や日本は、独、米、英に続く世界第四位の移民大国なのである。

 欧州では、外国人労働者は子どもを産み、第二世代、第三世代が成人していくようになる。彼らは、たとえばドイツ人かトルコ人か、アイデンティティ危機を抱え込むことになる。つまり、親から子、子から孫へと時代が移ると、彼らをどのようにドイツ社会に統合するのかが問題となる。

 とりわけ、キリスト教とイスラム教の相違が様々な諸問題を生み、子どもや孫たちは、二つの文化の狭間にあって、アイデンティティ・クライシスに悩んでいる。とくに孫の世代、三世が最も悩むことになる。

 他の欧州先進国も同様であり、私は、日本はこの轍を踏むべきではないと思う。

1990年、南米などの日系人に特別枠を設けて大量に労働力として導入したが、不況になるとお役目御免で帰国を促した。また、1993年には外国人技能実習生制度を入れた。これらは目先の人手不足に対応するための弥縫策である。今回の新しい在留資格も全く同じ発想である。

  外国人に頼る前に、日本には活用されていない人材がいる。女性と高齢者である。女性については、結婚して子育てが終わっても、社会復帰しないケースが多い。医師、看護師、保育士、美容師などがそうで、このような有資格者で働いていない労働力は200万人以上いると想定されている。

 同様なことは高齢者についても言える。平均寿命が、男性80歳、女性90歳という時代である。長年培ってきた技能を発揮できる場は多いと思う。これこそ、まさに即戦力である。

 さらに、外国人よりもロボット、AI、IoTのほうが長期的にはコストがかからない。

 十分な審議を欠いた今回の入管法改正は、将来に禍根を残す。