フランスという国 | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 ゴーン逮捕劇の背景にあるのは、フランスという国の特殊性である。実は、フランスは「社会主義の国」と言ってもよく、それが、日産の内部告発という今回の「クーデター」の背景となっている。

 私は、日本とフランスとアメリカを自分の体験も含めてよく比較するが、日仏は伝統文化の国であるのみならず、「お上が強く、官尊民卑」、「大きな政府」で社会保障も充実している点でよく似ている。

 アメリカは新興国で、民間の活力を尊重する国で、「小さな政府」であり、公的な健康保険なども整備されていない。私には、アメリカはフランスよりも遙かに異質な国に見える。

 ルノーは、ナチス占領下にドイツに協力したかどで、第二次大戦後、ドゴール将軍によって国有化され、ルノー公団となった。しかし、国営企業となっても業績は上がっていき、フランス人はそれを誇りに思っている。

 これがフランス人の認識であり、ルノー公団は1990年には株式会社になるが、フランス政府が筆頭株主であり続けている。フランス国鉄(SNCF)も日本のようには民営化されていない。

 また、エールフランスもKLMオランダ航空と経営統合して持株会社を作ったが、かつては国営企業であったし、今でもフランス政府が支配権を握っている。その他、多くの企業でフランス政府が主要株主であり、まさに社会主義的な国だということがよく分かる。

 また、労働組合が強いことも、日本と違う社会主義的な面である。マクロン政権の前は、社会党のオランド政権であり、何よりも雇用の安定を優先させた。

 マクロン大統領が、フランス人の雇用を確保するため、日産とルノーの経営統合を実現させ、完全にフランス政府の傘下に置くことを狙ったとしても不思議ではない。こういう動きに対して、危機感を持った日産の幹部たちが、役員報酬過少記載、会社資金の私的流用などの不正を理由に追放クーデターを敢行したのであろう。

 さらに付け加えれば、ゴーン会長の高額報酬については、マクロン大統領は大臣時代から批判的であった。まさに、アメリカと違う「社会主義の国」フランスである。役員報酬の過少記載は、フランス政府からの批判をかわすための方策でもあった。

 マクロン大統領は、いま、燃料税の引き上げに不満の大衆による反政府デモで苦境に立たされている。巨額の報酬を得るゴーンを批判したマクロンが、皮肉なことに金持ち優遇との批判を受けている。燃料税引き上げは撤回したものの、今週末も大規模なデモが行われた。格差の拡大は、「社会主義国」フランスにはふさわしくない。