舛添要一のヒトラー入門(15):§1.ヒトラーとの出会い②海外留学へ・・❿ | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 なぜヒトラーのような怪物が、20世紀に、しかも当時最も民主的と言われたワイマール共和国で政権をとったのか、これが私の最大の疑問であった。

 その疑問を解くために、フランス側から第一次世界大戦後のヨーロッパ情勢の研究を始めたのである。外務省や国民議会には、当時の面白い資料がたくさん保存してあり、終日読みふけったものである。

 第一次世界大戦で、フランスはドイツとの戦争で最終的には勝ったものの、それはアメリカが自分の側に参戦してくれたおかげであった。実際にフランスはドイツとの戦いに手こずったのであり、普仏戦争では負け、今回も容易な戦ではなかった。

 国会では、第一次大戦について苦戦の原因を探る委員会が、戦後立ち上げられ、様々な観点から議論が行われた。国会議員たちは、思いつきも含めて、自由に意見を出し合ったが、以下のようなことも真剣に論じられたのである。

 第一は、ドイツの集団主義とフランスの個人主義である。

 ドイツ人は、ヒトラー政権下、ニュルンベルク党大会のような大衆動員では、軍隊も市民も一丸となって行進やマスゲームを演出する。今では、北朝鮮でよく見る光景である。

 集団として訓練され、統率のとれたドイツ軍が強力な軍隊として、フランス軍を悩ましたのである。

 これに対して、フランス人は徹底した個人主義の国であり、軍隊に必要な集団行動の最も苦手な人間である。これでは、軍の統率などドイツに及ばないのは当然であり、個人主義の克服が必要だとの見解が示された。

 次に、食事についてである。私は、若い頃、研究のためドイツでもフランスでも生活したが、食生活は大きく違っている。

 フランスは、ゆっくりと食事を楽しむ。ランチでも2時間くらいかけるし、夕食ともなると3~4時間はざらである。とにかく、食前酒、前菜から始まって、魚介類に白ワイン、肉類に赤ワイン、そしてデザートとシャンペン、最後にコーヒーと食後酒と来る。時間がかかるのは当たり前である。

 このガストロノミー(食道楽)は、お金もかかるし、時間もかかる。

 これに対して、ドイツでは、パンとソーセージにビールで食事を済ますので、食事代も安くてすむし、時間もかからない。食事にカネをかけない分、軍事費に回す予算が増えるし、時間をかけない分、他の活動(生産、軍事)に勤しむ時間が増える。

 以上が、フランスに対するドイツの軍事的優位を説明するために議論された内容の一部である。

<1936年、ナチス統治下でのベルリン・オリンピック>