20世紀文明論(17):生活革命③少子化・・・❺ | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 「若者と犯罪」という課題については、東京工業大学名誉教授で犯罪精神医学専門の景山任佐氏に多くの示唆を頂いてきたが、氏の研究を参考にして考えてみたい。

 拙著『戦後日本の幻影<オウム真理教>』の中で、なぜ優秀な若者がカルトに走って行ったかを説明したが、その際に使った幾つかのキーワードを書き出してみよう。

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「オウムを生みだした戦後教育」、「平和ボケ日本が生みだしたイジメ」、「父親不在下のよい子たち」、「偏差値エリートたちの悲劇」、「コンピューター世代の犯罪」、「SFアニメからハルマゲドンへ」、「超能力の誘惑とメディアの責任」、「暴走するヴァーチャル・リアリティ」、「暴走した多重人格のエリートたち」、「オウムは日本社会よりすごい学歴社会だ」「眠れる蛇の卵たち」 

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 凶悪犯罪に走った少年たちは、分裂症をはじめとして、心の病が進行していたと思われる。しかし、その病理の背景には、社会的な要因もあることを忘れてはならない。戦後の日本は、とんでもない若者を生みだしたのかもしれない。

「新人類」は生まれたときからテレビがあった世代、「新新人類」はパソコンに囲まれて育った世代である。しかし、両者とも、いくつかの点で「旧人類」と異なっていた。今は、ネットの時代になっており、子どもの頃からそれを生活の一部としてきた者は、「新新新人類」と呼んでもよいのではあるまいか。

 20世紀論としては、「新」・「新新」人類に焦点を当てるが、「旧人類」との違いは、攻撃性が減退し、内向した点である。少年による凶悪犯が増えると、若者の攻撃性が強化されたような印象を持ちがちであるが、実は逆なのである。

 攻撃性を測る指標は自殺率と他殺率である。人間の攻撃性が他人に向けられたときの極限の形態が殺人であり、逆に自分自身に向けられたときの極端が自殺である。

 戦後日本では、他殺率は着実に減り続けている。自殺率は、戦後1960年頃までは増えたが、その後は減り、また1985年頃まで増えていく。そして世紀末にはまた増加したが、21世紀になってからは減少し続けている。