ネットの時代(2):トランプ大統領のツイッター | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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  ツイッターは短い文章でしか書けないので、単純化し、結論を強調するような煽動的な内容になりがちである。トランプ大統領の過激なツイートは世界中を混乱させているが、実は、大統領就任前からそれを実行している。

  たとえば、2017年1月6日、自分のツイッターで、以下のように、メキシコに工場を作ろうとするトヨタを批判した。

 Toyota Motor said will build a new plant in Baja, Mexico, to build Corolla cars for U.S. NO WAY!   Build plant in U.S. or pay big border tax.

 和訳すれば、「トヨタ自動車は、メキシコのバハにアメリカ向けのカローラ生産工場を建設すると言った。とんでもない!アメリカに建設しないなら、多額の国境税(関税)を払え」となる。

こんな短文で、重要な通商政策を決められたのではかなわないが、このツイッターが出たとたんに、トヨタをはじめ日本の自動車メーカーの株価が下落してしまった。ちなみに、トランプから同じように批判を受けたフォードはメキシコでの新工場建設計画を撤回している。

 アメリカ大統領の発信するメッセージであるから、世界中が注目するのは当然であるが、このような短い、簡略化された文章で政策表明がなされるのは大いに問題がある。

 私も、政治家としてブログやツイッターを活用してきた。とくに、都知事として都市外交を展開する上で、姉妹友好都市との連係プレイなどを世界中にリアルタイムで画像とともに伝えるのに、このツールは有効であった。ただ、その反響が大きい(たとえばリツィートの数がうなぎ上りに増える)のは、個人や組織を批判したり、攻撃したりしたときで、逆に良いニュースやおめでたいい知らせを流しても、ほとんど反応がなかった。

 この点は、とくに日本人に顕著であり、外国人は、良いニュースに対してはすなおに「おめでとう」とか「嬉しい」とかコメントで反応することが多い。日本人は、「いじめ指向」というか、「袋叩き症候群」というか、誰かを褒めるよりは、皆で血祭りにあげるほうを好むようである。

 トランプのツィッターが注目されるには、過激な言葉で敵に対して批判するからである。しかし、大統領のような政治家であれ市井の人であれ、ツイッターがその使用者に強いる極度な単純化、二者択一的な問題提起は、デマゴギーへの序曲となりうる。その危険性に人々は気づいているのであろうか。

 私もまた、政治家として、そのような危険性をはらむメッセージを発信しなかったという自信はない。極力論理的であろうと努めたが、所詮は140字以内の文章では限界がある。白か黒か、結論はどうか、悪いのは誰か、とにかく単純なメッセージが求められるし、そのような情報は直ちにリツィートされ、増幅されていく。

 地震などの災害時には、流言飛語が人々をパニックに陥れる。関東大震災の際に、朝鮮人による凶悪犯罪などの噂が広まり、朝鮮人などが殺傷される事態となったことはよく知られている。今日では、ネットが同様の流言飛語を拡散させる危険性がある。単純化、過激化がツィッター文化だとするならば、それがはらむ問題をしっかりと認識すべきであろう。