国際政治学講義(61 ):(5)世界システム論①理論的構造・・・❻ | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

 19世紀後半から第一次大戦に至るヨーロッパ列強の軍事費の推移を見てみると、ドイツの軍拡ぶりが目立つ。英・独の軍事費(単位100万ドル)を比較してみよう。1870年(116・54)、1880年(126・102)、1890年(157・144)、1900年(253)・205)、1910年(340・307)、1914年(384・554)と、第一次大戦が勃発した1914年には、ドイツがイギリスを軍事費で凌駕する。

 特に、陸軍の分野では、ドイツは20世紀に入るとロシアと並ぶ軍事大国となり、第一次大戦勃発時には、ヨーロッパ最大の陸軍力を誇るようになる。また、ドイツは海軍力の拡張にも精を出すが、さすがに海軍出費では七つの海を支配するイギリスには遠く及ばなかった。

 海軍費は、1914年でも、イギリス2億3700万ドルに対して、ドイツは1億1200万ドルと、約半分にすぎない。因みに、この年のロシアの陸軍費は3億2400万ドル、海軍費は1億1800万ドルであり、ドイツとロシアの海軍費を合計してもイギリスには及ばない。

 人口増加率でも、ドイツはロシアを除くヨーロッパ列強よりも高い。1870年・1914年の人口を記してみると、オーストリア・ハンガリー(3600万・5200万)、フランス(3600万・3900万)、ドイツ(4000万・6500万)、イギリス(3100万・4500万)、イタリア(2700万・3700万)、ロシア(8200万・1億7100万人)である。

 第一次世界大戦前には、ドイツはロシアを除く近隣列強に比べて、1500万人〜3000万人も人口が多い状態になっていたのである。このブログの「国際政治学講義」の第1回目で説明したように、人口は国力の第1の要素である。私は、「ある国が世界の中で列強(パワー)と称されるためには、最低5000万人の人口が必要である」と考えている。

 第一次大戦前、ドイツと対照的なのがフランスである。フランスの人口はほとんど横ばいで、20世紀になってからは3900万人にとどまっている。フランスは、普仏戦争でプロイセンに敗れ、また第一次世界大戦ではアメリカの参加でかろうじてドイツに敗北を喫せずに済んだ。

 そのため、第一次世界大戦が終わってから、フランスでは将来どうすればドイツの脅威から自国の安全を守ることができるのかが真剣に討議された、そのときにドイツに比べてフランスの弱点として幾つかの問題が指摘された。

 その第1は人口が少ないことであった。その他に問題になったのは、ドイツが工業国であるのに対してフランスが農業国であること、ドイツ人が集団主義的で規律正しいのに対してフランス人が個人主義でまとまりにくいことなどであった。