国際政治学講義㊻:(4)20世紀の意味 ③ナショナリズム・・❽ | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 ナショナリズムを克服する一つのヒントは、国境を越える企業の活動である。そして、人間の経済活動は、地球温暖化という国境を越える問題を生み出した。20世紀に人類はそのことに気づき、対策を講じるために国際協力を開始した。

 1972年に、ローマクラブは『成長の限界』という報告書を発表し、資源の枯渇、環境破壊などで、経済成長には限界があることを指摘し、世界的に大きな反響を呼んだ。

 20世紀末の1997年12月、京都で地球温暖化防止のための国際会議「気候変動枠組み条約第3回締約国会議(COP3)」が開かれ、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量について各国別の削減率を定めた。京都議定書である。

 その後、締約国会議は続き、地球温暖化対策を推進してきたが、2015年11月~12月にはパリで第21回会議(COP21)が開かれ、でパリ協定の締結に至った。

 中国でPM25が大きな問題となり、その影響は日本にも及んだが、この大気汚染をはじめ環境問題は国境を越える問題である。締約国会議会議における最大の問題は、ナショナリズム、つまり各国のエゴをいかに抑えるかということである。

 20世紀は人類の文明生活を一気に進めたが、それは電気のおかげであり、発電のために大気中の二酸化炭素が増えることになった。国を豊かにするために経済活動を活発に行えば、温室効果ガスの排出を増やすことになる。各国が、経済成長のみならず、地球温暖化を念頭に置いて行動することが求められている。

 ところが、アメリカで政権交代が起こり、トランプ大統領はパリ協定からの離脱を決めた。トランプ政権の「アメリカ第一主義」は、ナショナリズムの克服という観点から問題である。

 まず、TPPから離脱し、保護貿易を進めているが、これは世界経済を縮小させ、繁栄を阻害するものである。中国、EU 、カナダ、メキシコなど保護関税の対象産品を生産する国々は、報復関税で応じている。

 さらに、パリ協定からの離脱は、地球環境保全という観点から人類の生存にとって好ましくない影響を与える。中間選挙を念頭に置いたトランプ流のナショナリズムは百害あって一利なしである。

 幸いなことに、アメリカ国内でもトランプ批判の声は高まっており、幾つかの州やニューヨークなどの大都市は、パリ協定を遵守する政策を継続している。実りないナショナリズムへの対抗勢力が米国内に存在することは、連邦主義のメリットであり、アメリカの民主主義の勝利である。