国際政治学講義㊺:(4)20世紀の意味 ③ナショナリズム・・❼ | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 ロシアで行われているサッカーW杯、連日の熱戦に世界中が沸いている。選手も国を背負って戦っており、まさにナショナリズム全盛である。ただ、スポーツでナショナリズムを戦わせるほうが、戦争よりも遙かに好ましい。

 W杯でも、コロンビア、メキシコ、コスタリカ、ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、ペルーが中南米から出場しており、ヨーロッパと並んでサッカーの強い地域である。中南米は、日本から見て地球の裏側にあり、地理的に最も遠い地域である。それだけに、この地域について日本ではあまり報道されることもなく、日本人の関心も薄い。

 そこで、スポーツの国際試合の機会に、せめて対戦相手(今回はコロンビア)の国情くらいは知っておきたいものである。今年は、ベネズエラ(5月)、コロンビア(6月)、メキシコ(7月)、ブラジル(10月)と大統領選が続き、来年はアルゼンチンである。

 トランプ政権の「アメリカ第一主義」というナショナリズムは、この地域の国々のナショナリズムを誘発している。

 たとえば、7月1日に大統領選挙が行われるメキシコでは、トランプ大統領は、不法移民対策として「メキシコとの国境に壁を作る」と攻撃的な政策を展開し、米墨関係が悪化している。国民の反米感情に訴えて有利に選挙戦を進めているのが、新興左派政党「国家再生運動(Morena)」の元メキシコ市長ロペスオブラドール氏である。

 ロペスオブラドール氏は、現政権の汚職体質を批判し、国民受けするポピュリズム体質があるとともに、チャベス氏に似た社会主義思想の持ち主である。実は、20世紀に死滅したはずの社会主義が中南米では、21世紀の今日でも生き残っているのである。ベネズエラである。

 ベネズエラでは、5月20日に大統領選が行われ、現職のマドゥロ大統領が再選されたが、年率1万3千%というハイパーインフレに悩み、生活物資も不足し、国民の生活は苦しく、経済は破綻している。

 これは1999年に政権に就いたチャベス大統領の「21世紀の社会主義」という実験が失敗したからである。反米路線のため、アメリカは制裁を課しており、経済状況は極めて悪い。マドゥロ大統領はチャベス路線の継承者であるが、「21世紀の社会主義」はベネズエラの国際的孤立を招いている。中南米で「社会主義の神話」が覆される日はいつになるのだろうか。