国際政治学講義㊷:(4)20世紀の意味 ③ナショナリズム・・❹ | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 企業が国民国家の枠を超えて活動する今日、ナショナリズムを振りかざすことは世界の繁栄には寄与しない。その意味でも21世紀にはナショナリズムをいかにして克服するかが課題となる。

 一方ではEUのように、国家を超えて地域統合を果たそうとする果敢な試みがなされていることは、人類にとって大きな進歩である。そのEUでも、イギリスが離脱したり、反移民を掲げるポピュリスト政党が台頭したりしており、残念ながら遠心力が強まっている。しかし、そのような問題点をかかえながらも、通貨までも統一し、主権国家を超えて戦争のない地域統合を目指す動きは評価してよい。

 他方では、スペインのカタルーニャのように、一国の国内で分離独立を求める動きもある。これもまた、地域統合にとっては遠心力を増す要因である。

 第一次世界大戦を契機に、1917年にはロシア革命が起こり、体制としての社会主義が成立した。そこで、20世紀を「社会主義の世紀」と称したのである。

 19世紀に成立した国民国家を基盤とするナショナリズムもまた、第一次世界大戦を機に変容していった。1919年にはベルサイユ講和会議が開かれるが、アメリカのウッドロウ・ウイルソン大統領が戦争中に発表した14カ条の提案を中心に会議が行われた。14カ条の中には、秘密外交の廃止、海洋の自由、軍縮といった項目と共に、民族自決(self-determination)という原則も含まれていた。

 これは、「どの民族も政治や社会制度を自由に決める権利を有する」という思想であるが、これがその後の20世紀に大きな意味を持っていくことになる。そもそも、第一次世界大戦自体、サラエボでセルビア人の青年がオーストリアの皇太子夫妻を暗殺したことを発火点にして始まったのである。サラエボで、セルビアのナショナリズムが爆発したのである。

 第一次世界大戦後、民族自決主義に基づいて、多くの国民国家が誕生した。フィンランド、エストニア、ラトビア、リトアニア、ポーランド、チェコスロバキア、ハンガリー、セルビア、クロアチア、スロベニアなどである。

 ナショナリズムが嵩じると、エスノセントリズム(ethnocentrism、自民族中心主義)となる危険性があり、それがヘイトスピーチなどとなって発現し、民族紛争の原因にもなっている。今なお、世界で紛争が続く一つの原因でもある。