国際政治学講義㊵:(4)20世紀の意味 ③ナショナリズム・・❷ | 舛添要一オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 近代以降、国民国家は領土や資源をめぐって、激しい争いを演じてきた。それは、広大な領土や豊富な資源が、パワーの源泉だったからである。帝国主義の時代とは、先進国が世界中で資源を得るために領土の拡張競争を行った時代である。

 しかし、第二次大戦後はアジア・アフリカ諸国が独立し、帝国主義の時代はありえなくなった。米ソの核の均衡によって大国間の戦争は阻止され、国際競争は領土ではなく、富の獲得競争、つまり経済発展へと移っていった。

 しかも、国際政治におけるアクターは、主権国家にとどまらず、国際機関、NGO、多国籍企業などに拡大し、とりわけ国境を越えた多国籍企業の活動が重要性を増していった。

 これがボーダーレス・エコノミーと呼ばれる状況であり、企業は少しでも有利な条件を求めて主権国家の枠を超えて動いていく。たとえば、法人税率などを国際比較した上で、操業先を決める。ヒト、モノ、カネ、情報は国境を越えて移動する。

 トランプ大統領は「アメリカ第一主義」を掲げ、保護貿易主義を強化している。鉄鋼に25%、アルミに10%の関税を課すなど、様々な保護措置を実施しており、これに対しては各国も対抗措置として報復関税で応じている。自由貿易主義を守り、世界を繁栄させるためには、このような政策は好ましくない。

 トランプの次の手は、自動車関税であるが、日本車といっても生産地は必ずしも日本ではない。アメリカ、メキシコ、タイなどのアジア諸国、ヨーロッパ諸国と世界各地で完成品となっており、アメリカ製の日本車は「Made in USA」である。これもまた、ボーダーレス・エコノミーの一側面である。

 コンピューター、インターネットなどの情報関連技術の飛躍的発展は、国境のない経済を実現させるのに大きく寄与している。金融市場も24時間体制で動いており、経済のグローバル化がますます進んでいる。

このグローバル化は、「勝ち組」と「負け組」を鮮明な形で分離することにつながり、それが世界的な格差の拡大を生んでいる。

 企業が国際競争に晒されるとき、技術革新によって競争力を強化できない場合、固定費用、とりわけ人件費の削減で対応せざるをえなくなる。安価な労働力として、移民や非正規労働者が雇用されることになり、それが様々な社会問題を生んでいる。安倍政権が重要政策として取り組んでいる「働き方改革」も、経済のグローバル化への対応のひとつである。